14日、ブラジルW杯アジア最終予選第5戦がオマーン・マスカットのスルタン・カブース・スタジアムで行われ、日本代表(FIFAランク24位)がオマーン代表(同86位)と対戦した。序盤、日本は押し込まれたものの、落ち着いてボールを回してリズムをつかむ。すると前半20分、MF清武弘嗣(ニュルンベルク)のゴールで先制する。後半に入って追いつかれたものの、44分、MF岡崎慎司(シュツットガルト)が決勝点を決めた。グループB首位の日本は勝ち点を13に伸ばし、第6戦のヨルダン戦に勝利すればW杯出場権を得る。

 岡崎、値千金の決勝ゴール!(スルタン・カブース・スタジアム)
オマーン代表 1−2 日本代表
【得点】
[オ] アハメド・マハイジリ(77分)
[日] 清武弘嗣(20分)、岡崎慎司(89分)
「勝ち点3を獲ったことがすべて」
 主将のMF長谷部誠(ヴォルフスブルク)は、冷静な口調で振りかえった。勝てばブラジル行きに王手をかける大事な一戦。日本は厳しい暑さの影響もあり、本来の連動したサッカーができなかった。しかし、全員が最後まで気持ちを切らすことなく、勝ち点3を持ち帰った。

 気温が30℃を超え、会場はオマーンカラーの赤に染まっていた。完全アウェーの環境で、のっけからエンジン全開の相手に押し込まれた。特にオマーンの切り替えの早さに苦しめられた。11分にはオマーンボールのスローインからピンチを迎える。PA内右サイド深くに投げ込まれ、抜け出した選手にクロスを入れられる。逆サイドのMFドゥールビーンにフリーで打たれたシュートはゴール上へ。ボールがサイドラインを割ったことで選手の足が止まった一瞬のスキを狙われた危ない場面だった。

 日本にとってはピリッとしない序盤だったが、徐々にボール支配率を高め、オマーンゴールに迫る。効果的だったのがサイド攻撃だ。両サイドの選手が高い位置を保ち、オマーンを押し込む。17分には、清武の右サイドからのクロスをゴール前で岡崎がヘッド。これはプレミアリーグで活躍するGKアリ・アル・ハブシに防がれたものの、攻めのかたちをつくった。

 すると20分、サイド攻撃から待望の先制点を奪う。決めたのは清武だ。敵陣まで攻め上がっていたDF今野泰幸(G大阪)が、左サイドを抜け出したDF長友佑都(インテル)へ浮き球のパス。長友のクロスが相手DFに当たってゴール前にこぼれたところを左足で押し込んだ。アウェーでの貴重な先制弾が、清武にとって嬉しい代表初ゴールとなった。

 これでリズムをつかんだ日本はボールを支配し、引き続きサイド攻撃から追加点を狙いにいく。しかし、最後の精度を欠き、2点目には至らない。29分には、右サイドからのクロスにフリーの前田が飛び込んだが、わずかに届かなかった。

 チャンスの後にはピンチがやってくる。前半も残り少なくなった36分には、決定機をつくられた。左サイドからのアーリークロスにMFイスマイル・アルアジミに頭で合わせられる。ボールは左ポストに直撃。ゴール前に跳ね返ったボールを長友が必死にスライディングでクリアして難を逃れた。日本は運にも助けられてピンチをしのぎ、1−0で試合を折り返した。

 今回の予選、ホームで無敗のオマーンは後半の立ち上がりも攻勢を仕掛けてくる。しかし、GK川島永嗣(リエージュ)の好セーブもあり、ゴールは割らせない。オマーンの勢いが落ち始めると、前半同様、ボールを支配し、サイドから攻撃を組み立てていく。17分、清武が左サイドを突破した長友のクロスを受けてシュート。しかし、ジャスミートせず、GKに難なく押さえられた。

 なかなか追加点を奪えない展開に、ベンチは逃げ切りを図る。19分、ワントップのFW前田遼一(磐田)に代えてDF酒井高徳(シュツットガルト)を投入。DFの人数を増やす交代により、酒井高が左SBに入り、長友が左MFへポジションチェンジ。さらに左MFの岡崎が右サイド、右MFの清武がトップ下に移り、MF本田圭佑(CSKAモスクワ)がワントップになった。

 ところが、ベンチの目論見は裏目に出る。後半32分、セットプレーから同点に追いつかれてしまった。PA手前左サイドでDF吉田麻也(サウサンプトン)が痛恨のファールを犯してFKを与えると、MFアハメド・マハイジリのキックは壁の下を抜き、ゴール右下へ。GK川島は前の選手がブラインドとなり、反応が遅れ、ボールはゴールにそのまま吸い込まれた。劣勢を一気に跳ね返す同点ゴールにオマーンサポーターで埋まるスタジアムは異様な雰囲気に包まれた。

 逆転を狙おうと攻勢を強める相手に対し、日本は防戦一方となる。最悪の事態を避けたいベンチは39分、清武に代えて守備的MF細貝萌を投入。遠藤をトップ下に上げ、中盤の支配率を上げてゲームのコントロールを試みる。それでもオマーンに押し込まれる時間帯が続いたが、GK川島を中心に守備陣が体を張って跳ね返した。

 苦しい時間帯をしのぐと、終了間際にドラマが待っていた。44分、酒井高が左サイドを果敢に仕掛けてニアサイドへクロス。遠藤がそらしたところを、岡崎が体ごとボールをゴールに押し込んだ。殊勲の勝ち越し弾。それまで熱狂していたスタジアムが水を打ったように静まり返る。日本が5大会連続のW杯へ王手をかけた瞬間だった。

「気候の問題もあり、オフ・ザ・ボールなど、日本の良さを出せなかった」
 アルベルト・ザッケローニ監督は苦戦の要因をこう分析した。国内組の選手は9日からカタールで事前合宿をしていたものの、主力の海外組が合流したのは2日前。岡崎が「バテバテだった」と語ったように、暑さに順応できていないことは明らかだった。それでも勝利をつかんだことに「中東の戦いで勝ち切れたのは大きい」と長谷部も納得の表情を見せた。

 来年の3月26日のヨルダン戦に勝てば、日本はW杯出場権を得るグループ2位以内が確定する。もし引き分けても他会場の結果次第でブラジル行きが決まる可能性がある。いずれにしても今回の1勝で非常に優位になったことは間違いない。だが、指揮官が「まだ3試合あるので気を抜かない」と語れば、長谷部にも「まだ決まったわけではない」と浮かれた様子はみられない。勝ってブラジルへ――。それが次戦の合言葉だ。

<日本代表出場メンバー>

GK
川島永嗣
DF
酒井宏樹
吉田麻也
今野泰幸
長友佑都
MF
遠藤保仁
→高橋秀人(90分+4)
長谷部誠
岡崎慎司
本田圭佑
清武弘嗣
→細貝萌(84分)
FW
前田遼一
→酒井高徳(64分)