プロ野球は3月31日に開幕する。第4回WBCの盛り上がりをシーズンにつなげられるのか。そして、気になる優勝争いの行方は?

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 日本ハムとソフトバンク、2強対決か!?

 

 パ・リーグは昨年の優勝チーム・北海道日本ハムと2位・福岡ソフトバンクの争いになるのではないか。

 

 それにしても昨年の日本ハムの逆転劇には驚いた。最大で11.5ゲームもあった差をひっくり返してみせたのだ。

 周知のように日本ハム・栗山英樹監督は"魔術師"の異名をとった故・三原脩を信奉している。その意味では“没後弟子”といってもいい。

 

 栗山が三原ばりの“魔術”を披露したのが、7月3日、敵地でのソフトバンク戦だった。日本ハムは首位ソフトバンクに7.5ゲーム差にまで迫っていた。“迫っていた”とはいっても、逆に言えば、まだ7.5ゲーム差である。この時点で、日本ハムが逆転優勝を果たすと予想した評論家は、少なくとも私の知る限りでは、ひとりもいなかった。

 

 スタメン発表で「1番ピッチャー、大谷」とアナウンスされた瞬間、スタンドは「オーッ」という異様などよめきに包まれた。まるで劇画の世界である。

 さらに驚いたことに、プレーボールから5秒後、大谷はソフトバンクの先発・中田賢一の初球スライダーを振り抜いたのだ。放物線を描いた打球は右中間スタンドに突き刺さった。

 

 この狙いについて栗山に聞いたのは、日本一直後のことだ。

「翔平はピッチャーとして初回の入り方が悪いんです。だったら1番でホームランでも打ってくれれば、気持ち良くスタートできるだろう、と。

 それに、いきなり翔平が打席に立ったら、相手も投げづらいでしょう。あの頃、ウチはひとつの負けが命取りとなるような状況でした。翔平を、どう使えば相手が嫌がるか。それは常に意識していました」

 

 このゲーム、2対0で日本ハムが勝利した。シーズンの流れを変えたのは栗山の「魔術師的采配」だった。足首を故障してWBCを辞退した大谷は、しばらくは打者に専念すると見られている。いつマウンドに上げるのか。今季はそのタイミングがシーズンの行方のカギを握ると考える。

 

 一方、大逆転負けを喫したソフトバンクは何が足りなかったのか。主力の松田宣浩は「外国人打者の不在」をあげた。

 

 14、15年はイ・デホという不動の主軸がいた。14年は主に4番、15年は5番を任された。そのイ・デホは16年、マリナーズに移籍した。

 

 松田は語る。「イ・デホというより、5、6番に座るべき外国人がいなかった。そこに誰かひとり(強打の外国人)いたら、うちはあと何勝かしていた。そうなっていたら……」。そこまで言って、彼は後に続く言葉を飲み込んだ。「優勝していた」と言いたかったのだろう。

 

 今季は昨季、千葉ロッテで2割8分、24本塁打、92打点の成績を残した「キューバの4番」アルフレド・デスパイネが加わった。これで大きな穴は埋まった。「週刊ベースボール」(4月3日号)が行ったペナントレース大予想では伊原春樹、西本聖、川口和久、武田一浩、藪恵壹、野村弘樹、柴原洋、計7人の評論家全員が順位予想でソフトバンクを1位、そして日本ハムを2位にあげている。果たして結果は……。

 

 広島、37年ぶり連覇への関門

 

 昨シーズン、25年ぶりのリーグ優勝を果たした広島の開幕前の下馬評は低かった。前年、15勝をあげている前田健太がドジャースに移籍したからだ。その穴を埋めるのは容易ではない、と誰もが予想した。

 

 だが、あに図らんや、である。5月22日に首位に立った広島は、それから一度もトップの座を譲ることなく、2位・巨人に17.5ゲーム差をつけてゴールテープを切った。

 

 分岐点となったのは、6月18日、本拠地でのオリックス戦だ。9回裏、1対3と2点のビハインド、1死一、三塁の場面で打席に立った5番・鈴木誠也は守護神・平野佳寿のフォークボールを左中間スタンドに突き刺した。

 

 この直後に、緒方孝市監督の口から「神ってる」という"名言"が飛び出した。

「いやぁ、神ってる。何かやってくれるんじゃないかと期待はしていたけど、まさか2試合連続サヨナラホームランを打つとは……。いやぁ、信じられないよ」

 

 鈴木は前日も延長12回裏、比嘉幹貴からサヨナラホームランを放っていた。緒方が「神ってる」と目を丸くしたのも無理はない。

 

 それまで広島は交流戦を苦手としていた。勝ち越したのは08年(13勝11敗)、09年(14勝9敗1分)の2度だけ。07年、11年、14年は交流戦最下位に終わった。

 それが昨季は11勝6敗1分とセ・リーグで唯一、勝ち越した。これが優勝への決め手となった。

 

 果たして広島の連続優勝はあるのか。チームの将来を考えれば、主力の丸佳浩、菊池涼介、田中広輔は揃って27歳(3月31日開幕時点)と若く、まだまだ成長の余地がある。売り出し中の鈴木に至っては22歳で開幕を迎える。その意味では"のびしろ"のあるチームということができる。

 

 一方で不安材料もある。セ・リーグにおいて巨人以外で連覇に成功したチームは広島(79~80年)、ヤクルト(92~93年)、中日(10~11年)の3回のみ。参考までに言えば、巨人以外で3連覇したチームはない。

 

 プロ野球がセ・リーグとパ・リーグの2リーグに分立したのは1950年だ。球界の盟主を自認する巨人は9連覇(65~73年)を1度、5連覇(55~59年)を1度、3連覇を3度(51~53度、07~09年、12~14年)、2連覇を2度(76~77年、89~90年)達成している。

 優勝回数36回、 勝率は5割7分6厘だ。

 

 V奪還に燃える巨人はオフに地味だが手堅い補強をした。FAでは、故障で出遅れているが先発もリリーフもできる山口俊(元横浜DeNA)と左の貴重なセットアッパー森福允彦(元福岡ソフトバンク)、そして外野で4度のゴールデングラブ賞を受賞した陽岱鋼(元北海道日本ハム)を。トレードでは実績のある左腕・吉川光夫(元北海道日本ハム)を獲得した。新外国人のケーシー・マギーは4年前の東北楽天初優勝の立役者で、4年ぶりの日本復帰とはいえこの国の野球に戸惑うことはあるまい。コマは揃った。問われるのは2年目を迎える高橋由伸の采配力だ。

 

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