緒方孝市監督は「守り勝つ野球」を標榜しているそうだ。しかし、ここまでの守備を想定していたわけではあるまい。「守り勝つ」というのは、通常、投手陣が最少失点に抑えて、それを堅実な守備で守って、少ない得点で勝っていく――そんなイメージだろう。

 

 しかし、今のカープの守備、とくに内野陣は、そういう常識を超越している。ヒットをつかみとってアウトにするような、攻撃的な守備とでも言おうか。

 

 もちろん、それが可能なのは、菊池涼介の守備力のおかげといっていい。ただ、菊池にひきずられるようにして、田中広輔もぐんぐんよくなっている。

 

 一例をあげるなら、ルーキー加藤拓也があわやノーヒットノーラン達成かという好投を演じた4月7日のヤクルト戦だろうか。加藤は9回に初安打を許すまでに、何度もヒット性の当たりをアウトにしてもらっている。

 

 たとえば6回裏2死からの、あのプレーだ。打者バレンティンは強い当たりで三遊間のゴロ。これをサード小窪哲也が飛びつくも、グラブの先に当たって、打球はショート方向へ転がる。これをカバーした田中広輔がすぐさま一塁送球、間一髪アウト。球場がどよめくような守備である。菊池の守備に触発されて、内野全体に好循環が起きていると感じる。

 

 それはいいのだが、中崎翔太が故障離脱した。ジェイ・ジャクソンも危なっかしい投球が続いている。

 

 これ、仕方ないと思うのだ。要するに、勤続疲労である。

 ただ、開幕ダッシュには成功したカープだが、後ろの7、8、9回の継投、いわゆる“勝利の方程式”が確立しないと、いずれ負けがこむことにもなりかねない。

 

 現在の起用法を見ていると、薮田和樹をセットアッパー候補と考えているようだ。クローザーはジャクソンか今村猛を想定しているように見える。

 

 うーん。今村は、抑える日もあれば、打たれる日もあるからなあ。今年のジャクソンは、全般的にボールが高いし。

 

 今年のセットアッパー、クローザーをどうするのか――これが、大きな課題として、つきつけられている。

 

 で、私案をひとつ。

 クリス・ジョンソンは、いずれ復帰するだろう。そうしたら、加藤をうしろに回してはどうか。

 

 四球が多いのは気になるが、フォークは3種類くらいあるように見える。

 4月7日の試合では、たとえば3回表、打者・大引啓次のときに、カウント3-2からサインに首を振ってフォークをなげて空振り三振を奪っている。このフォークを、捕球技術には定評のあるキャッチャーの石原慶幸が捕りそこねているのだ。いい落ち方をしている証拠だと思う。

 

 ま、あくまで私案である。ともあれ、これが現在の最大の課題であることは、まちがいない。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


◎バックナンバーはこちらから