二宮清純「審判を“誤審”から救うために」
ゴロを打った打者走者がファーストに駆け込み、ベースを踏むのと、送球のボールがファーストミットにおさまるのが同時だった場合、判定はセーフとなる。ファーストミットにボールがおさまるより先に打者走者がベースを踏めば、もちろんセーフである。
ところが19日、マツダスタジアムでの広島-横浜DeNA戦では、首をひねらざるをえない判定が相次いだ。まずは6回1死走者なしの場面。ショートゴロを打ち、ファーストに駆け込んだ田中広輔の足が、ボールよりも先に到達したように見えたが、判定はアウト。緒方孝市監督は激しい口調で一塁塁審に確認を求めた。
2度目は0対3とカープ3点のビハインドで迎えた7回裏、2死一、二塁の場面。ショート方向にボテボテのゴロを打った小窪哲也は一塁にヘッドスライディングを試みた。倉本寿彦からの送球よりも小窪の手がベースを先に触ったのは、誰の目にも明らかだった。ただひとり、一塁塁審を除いては……。
本来なら2死満塁の場面がスリーアウトチェンジ。今度ばかりは指揮官も感情を抑えられなかった。血相変えてベンチを飛び出し、一塁塁審に詰め寄った。抗議最中の「暴言」により退場を宣告されてしまった。
微妙な判定ならいざ知らず、明らかな“誤審”が2つも続くと見ている側もしらける。緊迫感のあるゲームが台無しになってしまった。
言うまでもなくアウトセーフの判定は審判の専権事項であり、抗議を行った監督が退場になったのは、やむをえまい。ただ、こういう“誤審”を放置しておくと、ビデオ判定を導入しろとの声に抗えなくなってしまう。これは広島がどうのとかDeNAがどうのとかいう問題ではない。できるだけ正確なジャッジの下で選手たちに気持ちよくプレーしてもらいたいというのは、ファン共通の願いだろう。
ネット時代、判定が正しいか否かについては、すぐ動画で明らかになってしまう。判定を誤った審判は厳しい批判を浴びる。アウトセーフに関するビデオ判定の導入が審判を“誤審”から守ることにつながるのであれば、前向きに検討すべき時期にきているのかもしれない。
(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)