NPB12球団のキャンプが一斉に始まり、今年も野球シーズンが幕を開けた。四国アイランドリーグPlusでも新チームが動き始めている。昨季は高知出身の角中勝也(千葉ロッテ)が大ブレイク。独立リーグ出身者では初のタイトル(首位打者)に輝くとともに、3月のWBCの日本代表候補にも選出された。今季は昨年のドラフトで入団した2選手を含む、リーグ出身の19名が角中に続けとばかり、新たな1年のスタートを切っている。NPB入りというひとつの夢を叶えた選手たちの今を追いかけた。
 どん底から支配下へ――土田瑞起

 雷神2世――昨年末、1年目を終えた土田に対して、そんな見出しがスポーツ紙を飾った。右腕を高く評価したのは阿波野秀幸2軍投手コーチだ。“雷神”のニックネームを持つ先輩の越智大祐のようになれる。大きな期待を抱かせての2年目のスタートだ。

 ルーキーイヤーは夏場から2軍でコンスタントに登板し、20試合に投げて2勝2敗、防御率2.44の成績を収めた。140キロ台のストレートにスライダー、フォークを織り交ぜ、中継ぎのみならず、先発も任された。
 
 決してシーズン当初は順風満帆ではなかった。春先、大学生相手の交流試合では制球が定まらず、ストライクを取りに行ったところを打ち込まれた。
「プロとしてのプライドを完全に失いましたね」
 これではNPBでは絶対に通用しない……アイランドリーグでの4年間も無意味になりそうな気がした。

 どん底まで落ちれば、後は這い上がるしかない。コーチの指導を受けながら、土田は一から自らのピッチングを見つめ直した。豊田清2軍投手コーチからは「キャッチボールの1球1球からフォームを意識して投げる」ことを教わった。阿波野コーチからは「ヒジの位置が低いとコントロールが定まらない」との指摘を受けた。田畑一也2軍投手コーチからは「力いっぱい放るのではなくバランスを考えるように」とアドバイスされた。

 土田はアイランドリーグ時代から勢いで投げるタイプだった。ゆえに制球力にはどうしても難がある。いきなり壁にぶち当たった土田は、コーチの教えをひとつひとつ素直に実践していった。それを1カ月、2カ月と続けているうちに、一皮むけた自分がそこにいた。力任せに放って自滅していた右腕が、自然体でピッチングができるようになっていた。

「それまでは、もっと速い球を投げたい、もっとスピードを出したいと、最初からガチガチに力を入れて放っていました。でも、フォームのバランスを考えて、最後のリリースのところだけ力を入れたボールでも全くスピードは変わらない。しかも、コントロールがつけられる。そのことに気づけたのは自分にとって大きかったですね」

 無駄な力が入らなくなると、周りもよく見えるようになる。どのバッターにも同じようなパターンで投げていた今までとは異なり、相手の弱点を頭に入れながらコースや球種を考え、カウントを有利に持ち込むピッチングも身につけていった。
「昔はコントロールに自信がなかったこともあって、追い込んたら早く勝負したかった。それで甘く入ってやられることも多かったんです。今は追い込んでから、ボール球もうまく使えるようになってきました」

 2軍とはいえ、1年目である程度の結果を残した土田にとって、今季は支配下登録を勝ちとることが目標になる。 
「MAXで148キロですから、NPBのレベルではいたって普通です。球のスピードより、コントロールを重視し、変化球でいかにストライクを取るかが大事。その部分を意識しています」
 ワンランク上のピッチャーを目指す上で、もうひとつ武器になる変化球は是が非でも欲しいところだ。現状、スライダーでストライクが取れなくなるとピッチングは途端に苦しくなる。

「変化球はそれぞれ3方向に曲がるものを覚えなさい」
 阿波野コーチからも課題を与えられた。今の持ち球は右バッターの外に逃げる球(スライダー)と、落ちる球(フォーク)の2方向しかない。カットボールなり、シュートなり、右バッターの懐を突く変化球が求められる。秋からは新球の習得に励み、「他の変化球よりいいかもしれない」と手応えをつかんだ。

 そして一番のハードルは、やはり制球力。以前と比較すればまとまってきたものの、時折、ストレートやスライダーが抜け、明らかなボール球になってしまう。
「追い込むと余計な力みが、どうしても出てきてしまう。そこをいかに抑えて低めに投げられるかが大事ですね」
 1軍のバッターともなれば、追い込まれてからも粘って四球をもぎとったり、ヒットを打てる。追い込んでから、さらにいいボールが投げられるようにならないと上の世界では戦えない。

 アイランドリーグの先輩でもある左腕の岸敬祐は2年目の昨季に支配下登録され、2軍で最優秀防御率のタイトルを獲得。今季は1軍キャンプのメンバーに抜擢された。四国のファンは岸に続く活躍を待ち望んでいる。
「元アイランドリーグの選手との対戦は楽しいですね。でも、なぜかよく打たれるんです。こっちが意識しすぎなのかもしれませんけど(笑)」

 今季は長崎時代、高卒で同期入団だった水口大地も埼玉西武に育成選手として入団した。実は彼をアイランドリーグに誘ったのが土田だ。
「高校生がひとりだけでトライアウトに行くのがイヤだったんで、友達に話をしたら、そこにたまたま水口がいたんです」
 お互いに切磋琢磨し、1軍の舞台で直接対決する――新たな目標がまたひとつ加わった。

 支配下登録。今、23歳の頭の中には、この5文字しかない。「昨年は20試合に投げさせてもらいましたけど、まだ中継ぎでは勝ち試合で登板させてもらったことがほとんどない。今季はチームを勝ちに導けるピッチングでアピールしたい」と語る顔にもプロの風格が漂い始めてきた。あとは自らの右腕で結果を出すだけだ。まさに雷のごとく激しい光を放ち、その名をとどろかせてみせる。


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(石田洋之)