第3回WBCが2日、開幕し、1次ラウンドの初戦で日本代表がブラジル代表に5ー3と逆転勝ちを収めた。日本は先発の田中将大が初回に失点するなど波に乗れず、終盤までリードを許す苦しい展開。しかし、8回、代打・井端弘和の同点タイムリーから、ようやく打線がつながり、試合をひっくり返した。日本は3日に中国代表と対戦する。

◇A組
 田中、杉内、攝津が揃って失点(ヤフオクドーム)
日本代表      5 = 001100030
ブラジル代表    3 = 100110000
(日) 田中−杉内−○攝津−能見−S牧田
(ブ) フェルナンデス−ゴウベア−●仲尾次−コンドウ−ノリス
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「苦しかった」
 山本浩二監督は開口一番、正直な感想を漏らした。これが国際大会、一発勝負の恐ろしさとはいえ、攻守のチクハグさが招いた苦戦だった。

 まず最初の誤算は先発の田中だ。不安視されていた立ち上がりの悪さがモロに出てしまった。直前の強化試合では2試合連続で初回に失点。大事な初戦のマウンドでも、先頭のパウロ・オルランドに対し、セカンドへの内野安打と悪送球が重なり、二塁まで進めてしまう。続くフェリペ・ブリンにもライトフライながら、いい打球を運ばれ、走者は三塁へ。3番レオナルド・レジナットには三遊間を破られ、あっという間に先制を許した。

 田中は相手を抑えようと勝負を急ぎすぎ、勝負どころでボールが甘く入る。2回も下位打線に連打を許す内容で、ベンチはわずか23球ながら左腕の杉内俊哉に交代の決断を下した。

 この若きエースの早い降板でチームの歯車が狂う。それは3大会連続出場の杉内といえども例外ではなかった。日本が2−1と勝ち越した直後の4回、突如、ピッチングを乱す。前回大会では5試合でヒットを1本も打たれていないサウスポーが先頭のレジナットへレフト線への二塁打を浴びると、1死後、佐藤二朗にセンター前へはじき返された。2−2と再び試合が振り出しに戻るタイムリー。杉内も2イニングを投げて1点を失い、降板した。

 さらにチーム内の動揺が見て取れたのが5回の守りだ。1死からオルランドに三塁前のセーフティバントを決められる。さらにディレードスチールを簡単に成功された。日本のお株を奪うようなブラジルの攻撃といえば聞こえはいいが、侍ジャパンの守備陣も無警戒すぎた。

 得点圏に走者が進み、2死2塁で打席には2打数2安打のレジナット。東尾修投手総合コーチがマウンドに行き、敬遠かと思われたが、結果は勝負を選択する。だが、これが裏目に出た。甘く入った変化球を左中間へ飛ばされ、2塁走者が生還。日本は自慢の投手陣が失点を重ね、2−3と1点のビハインドを背負う。

 4番・阿部慎之助が右ヒザを痛めてスタメンから外れた打線も、荒れ球の先発ラファエル・フェルナンデスをとらえきれない。3回には4番・糸井嘉男のライト線へのタイムリーで1点をあげたが、続くチャンスでは稲葉篤紀が空振り三振に倒れた。4回には2番手のムリーロ・ゴウベアに対して、松田宣浩がヒットエンドランを成功させ、一、三塁とチャンスを拡大。これが坂本勇人の犠牲フライを生むが、5回以降は188センチの長身から投げ下ろすゴウベアのピッチングにヒットが出なくなった。

 6回には長野久義が四球を選んで貴重なランナーとなるも、決して大会前から当たりの出ていない鳥谷敬に普通に打たせて最悪のダブルプレー。7回を終えてもビハインドの状況が続き、日本ベンチに重たい空気が漂い始めた。

 そんな中、チームを救ったのは国際大会で修羅場を経験している選手たちだ。8回、先頭の内川聖一が左腕の仲尾次オスカルに対し、レフト前ヒットでのろしをあげる。糸井が送って、山本監督は井端弘和を代打に告げた。23日のオーストラリア戦でも鮮やかなライト前ヒットで相川亮二の3ランを呼び込んだベテランは、またも芸術的な右打ちをみせる。クロスファイヤー気味に入ってきたストレートを一、二塁間へ。二塁から内川が生還し、まずは同点に追いついた。

 さらに長野が内野安打でつなぎ、鳥谷敬がストレートの四球で歩いて1死満塁。この大チャンスに指揮官は「慎之助しかない」と阿部を代打に送り込む。「皆がつないでくれて最高の場面で使ってくれた」と振り返るキャプテンが初球をたたくと打球はセカンドの左を痛烈に襲った。白球は飛び込んだブリンのグラブをはじき、二塁をアウトにするのが精一杯。三塁走者が還り、日本が勝ち越す。なおも松田のタイムリーが飛び出し、リードは2点に広がった。

 阿部はそのままマスクもかぶり、8回は能見篤史、9回は牧田和久とバッテリーを組んでブラジル打線の反撃を許さなかった。チームの大黒柱は「初戦って、皆、固くなるから難しいんですよ」と、思うようにいかなかった試合を振り返った。山本監督も「まず1勝できたことが明日につながる」と、ホッとした表情をみせた。

 3日に対戦する中国は戦力的にはブラジルよりも落ちる。初戦を乗り切って少しは緊張感もほぐれるだろう。今度はスッキリした勝利で、6日のキューバ戦を迎えたい。

(石田洋之)

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