7日、サッカー日本代表(FIFAランキング45位)は東京・味の素スタジアムでシリア代表(同77位)とキリンチャレンジカップ2017を行い、1-1で引き分けた。試合は後半3分にシリアのFWマルデク・マドルキアンに先制ゴールを決められる。対する日本は13分にMF今野泰幸の得点で追いついた。その後はチャンスを作るものの、逆転ゴールを決めることができず試合終了。“仮想イラク”のシリアに引き分けた日本は13日にロシアワールドカップアジア最終予選のイラク代表(同120位)戦に臨む。イラクの政情が不安定のため、今回は中立地のイラン・テヘランで試合が行われる。 

 

 昌子が約2年ぶりに代表スタメン(味の素スタジアム)

日本代表 1-1 シリア代表

【得点】

[日] 今野泰幸(58分)

[シ] マルデク・マドルキアン(48分)

 

 日本代表にとって、この親善試合は何のためのものだったのか。メンバー発表会見でヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「テヘランのピッチのコンディションが悪く、ショートパスが繋げず、ロングボールが増える」と語っており、それに伴いセカンドボールの奪取がカギとなると見ていたはずだった。

 

 ところが、蓋を開けて見ると短いパスで崩そうとする代表の姿があった。指揮官の事前のコメントとは裏腹に、平常運転のサッカーを展開していたのだ。さらに前半7分、いきなりアクシデントが日本を襲った。MFマハムード・アルマワスと交錯したMF香川真司が左肩を痛め、プレー続行不能。代わってMF倉田秋がピッチに送り込まれた。

 

 前半はスリートップの両翼がワイドに開き過ぎており、今野らセンターハーフ陣も前に行けなかった。FW大迫勇也が孤立する時間が長かった。スコアレスのまま試合を折り返す。

 

 後半3分、日本が失点する。右サイドからのショートコーナーを受けたDFムアイアド・ジェニアトにクロスを入れられると、DF昌子源とマルドキアンが競り合う。昌子は懸命にジャンプしたが、クロスボールに届かず、マルドキアンに頭でゴールに叩き込まれた。

 

 この1点で目が覚めたのか、13分に日本が反撃に出る。DF長友佑都がFW大迫勇也とのパス交換で左サイドを突破すると、低いクロスをゴール前に供給した。これを今野が右足で合わせて試合を振り出しに戻す。「(クロスに対して)思い切って入っていった」と今野。3月のアジア最終予選で左足小指を骨折したが、約3カ月ぶりの代表復帰を果たした。帰ってきたベテランMFが大きな仕事をやってのけた。

 

 この得点の直後に、ハリルホジッチ監督はFW原口元気に代えてFW乾貴士を投入する。ピッチに入った乾はボールをキープしてタメを作ったり、サイドをえぐるなどしてチャンスを演出した。だがゴールを奪うまでは至らず、1-1のままタイムアップを迎えた。

 

 内容にも不満が残る。ハリルホジッチ監督の試合後の会見も厳しい言葉が並んだ。

「入りが悪かった。我々は自分たちの形ができなかった。特に中盤で問題があり、守備でも攻撃でも相手にコントロールされた。守備の面で相手から遠過ぎて、攻撃の時は引いてボールを受けに来る回数が多過ぎた。前の3枚が開き過ぎてチームプレーができず、本来のプレーができなかった」

 

 約2年ぶりにA代表のピッチに立った昌子はスタメンで起用された。「難しかったことが多かったし、自分自身、最初の入りは硬いなと思った」と語った。これまではレギュラーのセンターバックは吉田麻也と森重真人がコンビを組むことが多かった。だが、今回は森重が選考から漏れた。鹿島の守備の要に成長した昌子に寄せられる期待は大きい。本人も「(長友)佑都君と(吉田)麻也君との連携は徐々に良くなっていった。それは自分的には良かったこと。失点をクヨクヨしても、次、またやられてしまう」と前を向いた。

 

 次戦はロシアワールドカップアジア最終予選。13日にイラクとテヘランで対戦する。ピッチの状態が悪いテヘランで、どんな戦いを見せるのか。日本は現在、同予選B組の首位だが、この試合の出来を見る限り不安要素は少なくない。左肩負傷の香川は試合後に都内の病院へ運ばれた。中盤の構成も変わる可能性もある中、短い時間でどれだけ修正できるかが勝敗のカギを握るだろう。指揮官が何をしたいのか不明な点が多かったが、今回は手の内を明かさなかっただけだと信じたい。

 

(文/大木雄貴)