第97回 四半世紀ぶりに5つの“山場” ~ツール・ド・フランス~
今年で104回目を迎える“自転車ロードレースの祭典”ツール・ド・フランスは7月1日に開幕する。
グランデパール(開幕地)は、ドイツ西部、ノルトライン・ヴェストファーレン州の州都デュッセルドルフ。ドイツ開幕は1987年のベルリン以来、実に30年ぶりだという。
全21ステージ。今回のコースの特徴は、ドイツ、ベルギー、ルクセンブルクと渡ってフランスに入り、ボージュ山脈、ジュラ山脈、ピレネー山脈、中央山塊、アルプス山脈を走破しなければならない。この5つの山脈がコースに盛り込まれたのは、25年ぶり。北西部のブルターニュ地方は、今回は外れている。こう配の厳しいコースが多いのが、今年の大きな特徴だ。
見どころタップリの各ステージ

(写真:どこでアタックを仕掛けるか。各チームの戦略にも注目 (c)Yuzuru SUNADA)
今年もステージごとに見どころがタップリだ。
デュッセルドルフの第1ステージは、14kmの個人タイムトライアル(TT)。メッセ(見本市会場)前から熱戦の火ぶたが切られる。デュッセルドルフからベルギー・リエージュまでの第2ステージ(203.5km)は平坦なコースだが序盤と終盤に4級峠が待ち受ける。スプリント合戦が繰り広げられることになる。
最初の山岳コースは第5ステージ(ボージュ山脈)。ここは最大こう配20%超のラ・プランシェ・デ・ベル・フィーユの頂上フィニッシュとなる。第1週の終盤戦となるジュラ山脈に入る第8ステージ(ドール~スタスィヨン・デ・ルッス187.5km)、難関の第9ステージ(ナンテュア~シャンベリー181.5km)はクライマーの腕の見せどころと言ったところか。
休息日を挟み、第2週はピレネー山脈に舞台を移す。
注目は第12ステージだろう。ポーからペラギュード、214.5kmの山岳コース。第5ステージに続く頂上フィニッシュで、最大こう配は16%となる。翌日の第13ステージも興味深い。サン・ジロンからフォワまでわずか101kmの距離ながら、山岳ポイントが3カ所も入っている。ピレネー山脈を越えると、中央山塊へ。
勝負どころはアルプス山脈に突入する次の第3週になるだろう。
6年ぶりにコースに設定された“難関地”ガリビエ峠の戦いとなるのが第17ステージ(ラ・ミュール~セール・シュヴァリエ183km)。最後は28kmのダウンヒルが待っており、熾烈なレースが予想される。
そして第18ステージは最後の山岳決戦(ブリアンソン~イゾアール)。頂上フィニッシュのイゾアール峠はめてゴール地点として設定された。
コース最長222.5kmの第19ステージ(アンブラン~サロン・ド・プロヴァンス)を経て、第20コースはマルセイユでの個人TT(22.5km)。そして7月23日の最終第21ステージは恒例のパリ・シャンゼリゼ大通りでフィニッシュする。
王者・フルームの3連覇なるか

(写真:凱旋門などの華やかな観光名所も駆け抜ける (c)Yuzuru SUNADA)
走行距離は3540km。9つの平坦ステージ、5つの中級山岳ステージ、5つの上級山岳ステージ、そして2つの個人TT。計21のステージで争われることになる。チームトライアルは今回設定されていない。
総合1位のマイヨ・ジョーヌ最有力候補は、クリス・フルーム(チームスカイ)を置いてほかにいないだろう。
昨年、史上2位となる3度目の総合優勝を達成。第8ステージでマイヨ・ジョーヌを奪取すると、最後まで守り切った。第12ステージはテレビ中継のバイクにぶつかって自転車が壊れたり、第19ステージは雨の影響で転倒してケガを負った。それでも2位以下を寄せつけず、ドラマ満載のフルームのための大会になった。
今年は昨年以上にこう配が厳しいコース設定のため、登りに強いフルームの優位は動かないと言われている。
対抗馬はフルームと同じく“ファンタスティック4”の一角、ナイロ・キンタナ(モヴィスターチーム)か。
昨年のツール・ド・フランスはお馴染みの猛チャージが見られず、総合3位どまり。それでもブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝を果たしており、フルームを脅かす一番手であることは間違いない。27歳と若く、登りにも滅法強い。フルームとキンタナの一騎打ちとなる可能性もある。
そして雪辱を期すのが、アルベルト・コンタドール(トレック・セガフレード)だ。過去2回、総合優勝を果たしている“ファンタスティック4”の1人。しかし昨年はまさに悪夢のような大会だった。初日の第1ステージで落車して負傷。ケガを抱えながら踏ん張りながらも第9ステージでリタイアしている。34歳のベテランに対しては「全盛期の力はない」と厳しい見方が出ているが、3度目の総合優勝にこだわる彼の意地にも期待したい。
地元フランスの期待を一身に背負うのが、昨年総合2位と健闘したロメン・バルデ(AG2R・ラ・モンディアル)だ。MBA(経営学修士)を取得した頭脳派の26歳。積極果敢なアタックが持ち味で登り坂に強いだけに、粘り強いレースを続けていけば優勝を狙えるチャンスも出てくる。
またスプリントポイントを最も多く得た選手に与えられるマイヨ・ヴェールは、ペーター・サガン(ポーラ・ハンスグローエ)が主役だ。2012年から5年連続で獲得してきたスターは、今回優勝すればエリック・ツァベルが持つ最多獲得記録と並ぶ。
熱闘、激闘、死闘……。
今年のツール・ド・フランスにはどんなドラマが待ち受けているのだろうか。
【ツール・ド・フランス 放送予定】(放送はすべてJ SPORTS4で生中継)
第1ステージ 7月1日(土) 21:55~翌3:00
第2ステージ 7月2日(日) 18:40~翌1:30
第3ステージ 7月3日(月) 18:55~翌1:45
第4ステージ 7月4日(火) 18:50~翌1:30
第5ステージ 7月5日(水) 19:50~翌1:30
第6ステージ 7月6日(木) 18:45~翌1:30
第7ステージ 7月7日(金) 18:45~翌1:45
第8ステージ 7月8日(土) 18:50~翌1:30
第9ステージ 7月9日(日) 18:25~翌1:15
第10ステージ 7月11日(火) 19:50~翌1:45
第11ステージ 7月12日(水) 19:40~翌2:15
第12ステージ 7月13日(木) 17:35~翌1:30
第13ステージ 7月14日(金) 21:15~翌1:45
第14ステージ 7月15日(土) 19:40~翌2:00
第15ステージ 7月16日(日) 19:40~翌2:15
第16ステージ 7月18日(火) 20:10~翌1:45
第17ステージ 7月19日(水) 18:50~翌2:00
第18ステージ 7月20日(木) 19:25~翌2:00
第19ステージ 7月21日(金) 18:55~翌2:00
第20ステージ 7月22日(土) 20:25~翌1:45
第21ステージ 7月23日(日) 23:20~翌4:30
※7月10日(月)、17日(月)、24日(月)は各週のハイライトを放送
※このコーナーではスカパー!の数多くのスポーツコンテンツの中から、二宮清純が定期的にオススメをナビゲート。ならではの“見方”で、スポーツをより楽しみたい皆さんの“味方”になります。