NPBもアイランドリーグもシーズンが開幕して約半月が過ぎた。アイランドリーグ出身選手ではWBC日本代表にも選ばれた千葉ロッテの角中勝也(元高知)が開幕から全試合でスタメン出場してヒットを重ね、福岡ソフトバンクの金無英(元福岡)が中継ぎで無失点ピッチングを続けている。また東京ヤクルトの三輪正義(元香川)もスーパーサブとして1軍に戻ってきた。その他の選手たちも1軍での活躍の機会を虎視眈々と狙っている。NPB入りというひとつの夢を叶えた彼らの今を追いかけた。
 “幅”を広げて1軍定着へ――福田岳洋

 2年ぶりの1軍登板を果たしたとはいえ、昨季は不本意なシーズンだった。夏場に昇格し、5試合に投げたものの、防御率は9.72。最初の2試合こそ1イニングを三者凡退で抑えたが、その後は連打を浴びて失点するケースが目立った。

 1軍出場ゼロに終わった一昨年のオフ、福田は、その原因となった痛めていた左ヒザにメスを入れた。投げることへの不安を取り除き、体を一から作り直して臨んだシーズンだった。2軍では好調が続き、いいボールが放れている手応えがあった。だが1軍となると、内容よりも求められるのは結果だ。香川から入団して3年目。「このチャンスを逃したらクビになるかもしれない」との思いもあった。

 ただ、その意気込みは裏目に出た。たとえば最初の2試合を完璧に封じて迎えた甲子園での阪神戦(7月29日)。1死後、関本賢太郎に四球を与えたことで「アカン。もう、これ以上、ランナーを出すわけにはいかない」と平常心を失ってしまったのだ。焦れば焦るほど投げるボールはストライクゾーンに入らなくなる。まさかの3連続四球。なんとか1失点で踏ん張ったが、ベンチの印象は悪くなってしまった。 

 その後もランナーを出すと、「打たれてはいけない。抑えなきゃいけない」と気持ちが守りに入る。もがけばもがくほどピッチングが単調になり、痛打される悪循環。怖いものなしで腕を振り、シーズン終了まで1軍に残ったルーキーイヤーとは全く違う精神状態に陥っていた。

「でも冷静に考えたら、ランナーを出さないピッチャーなんていないんですよね。むしろランナーが出ることは前提でマウンドに上がらないといけない。“ランナーを出さない”ではなく、“ランナーを出してからどうするか”。そこにもっと意識をむけるべきでした」
 昨季、チームで最多登板を果たし、中継ぎでフル回転した菊池和正は福田にとって良きお手本となった。キャッチボールからランナーを出た場面を想定し、クイック投法やリズムを変えてボールを投げる。すべてを実戦につなげる準備の仕方に学ぶべき点は多かった。

 もちろん成績を残せなかったのはメンタルの問題だけではない。フィジカルとテクニックの両面でも課題がみえた。
「試合が続いたり、イニングを重ねるごとに、いいボールが行かなくなりました。思っていたボールが投げられないと簡単に打たれてしまう」
 オフの間に体を動かせていなかった分、納得いくボールを投げ続けるスタミナも不足していた。2軍で調子を上げ、1軍昇格した時点で体は疲労が溜まり、いっぱいいっぱい。「それでも投げるという覚悟が足りなかった」と本人は反省するが、「やるだけのことはやった」と腹をくくれるだけの練習が積めなかったのも事実だ。

「プロで長く活躍されているピッチャーを観察していると、共通しているのはよく走ること。走れないと投げれないし、投げれなければ結果も出ない」
 走り込みのできる体を取り戻し、もう一度、下半身を強化した。
「いいボールが投げられている時は、しっかり軸足が立ってタメができている。調子がいい時、悪い時は必ずありますが、まずはしっかり軸足で立てるように意識しています」

 心身がいくら充実しても、最終的には目の前のバッターを抑えなければ生き残ることはできない。福田は自らのピッチングスタイルを再度、見つめ直す必要があると痛感した。この答えのひとつが投球の幅を広げることだ。昨秋から福田はカットボールの習得に取り組んだ。自主トレでは昨季までチームの先輩だった左腕の山本省吾(福岡ソフトバンク)のアドバイスも仰ぎ、曲がりの小さな高速スライダーへと改良を加えた。

「それまではスライダーを曲げよう、曲げようという意識が強すぎたんです。それでコントロールがつかなかったり、バッターに見極められていました。でも省吾さんが言うには“スライダーもカットボールの延長戦上でちょっと曲げるのが本来の使い方だ”と。だからカットボールのイメージで135キロくらいのスピードで、ちょっと曲げる。それでバットの芯を外せればと考えています」

 既に巨人・阿部慎之助も空振り三振に切ってとったフォークボールと、右バッターの内をえぐるシュートという武器は持っている。外へ少し逃げる新球をマスターすることで高低と内外を幅広く使える。
「いくら得意なボールでも、プロは何度も対戦しますからね。シュートばかりを延々と投げ続けるのもきつくなってくる。結局、攻めきれずにシュートを打たれたケースも多かったんです。だから、外のボールでもっと勝負できればと考えています」
 何も空振りを奪うだけがピッチングではない。バッターが仕留めたと思ったボールが凡打になればアウトは重ねられる。ボールを低めに集め、打たせて取るピッチングをより追求することで突破口が開けると信じている。

「先発とか、中継ぎとか投げる場所にはこだわっていません。行けと言われたところでマウンドに上がるだけです。目の前のバッターをしっかり抑えていけば、1イニングだろうが、長いイニングだろうが、1年を通じて放れると思っています」
 ルーキーイヤーも昨季も1軍に定着しきれなかった。今季こそは3度目の正直だ。昨年で30歳となり、もう成績を残すことが真っ先に求められる。「詳細は明かせないが、大きく変えた部分がある」と本人も不退転の決意でシーズンに臨む。

 どんな状況でも落ち着いて対処する精神的な幅と、どんなバッターにもジャストミートさせない投球の幅――2つの“幅”を広げることで右腕は再び1軍に挑もうとしている。

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 福田投手の直筆サインボールを抽選で1名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の冒頭に「福田岳洋選手のサインボール希望」と明記の上、住所、氏名、連絡先(電話番号)、記事への感想をお書き添えの上、送信してください。当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締め切りは4月末までです。たくさんのご応募お待ちしております。

(石田洋之)

4月17日(水)

 岡崎、逆転2点タイムリー(徳島2勝1敗、JAバンク徳島、246人)
香川オリーブガイナーズ  5 = 000300020
徳島インディゴソックス   8 = 00000404×
勝利投手 入野(1勝0敗)
敗戦投手 永川(0勝1敗)
セーブ   シレット(1S)
本塁打  (徳)大谷龍1号3ラン