1日、日本陸上競技連盟はフランス陸上競技連盟(FFA)とパートナーシップ協定を締結することを発表し、都内で調印式を行った。2日前に来日したピエール・バイス副会長と河野洋平日本陸連会長が調印式に出席し、リオデジャネイロ五輪に向けて協力関係を構築することを誓った。
(写真:協定書に署名した河野日本陸連会長とバイスFFA副会長)
「格好の相手」。河野会長がそう語る協定国は、強豪・フランスだ。100メートルで白人初の9秒台をマークしたクリストフ・ルメートルや、昨夏のロンドン五輪棒高跳びで金メダルを獲得したルノー・ラビレニら世界トップレベルの選手がいる。会見に同席した尾縣貢専務理事は「現時点では日本のレベルは低い。まずはフランスの力を借りて、追いつき対等になりたい」と抱負を述べた。

 対してFFAのバイス副会長が「日本にも優秀な選手は多くいる。お互い成長していければ」と応えた。「日本は男女マラソンに才能のある選手がたくさんいるので、テクニック、メンタル合わせて吸収していきたい」と、FFA側にも学ぶ姿勢があることを強調した。会見に先立って行なわれた日本陸連とのミーティングで、高地でのトレーニングや6月の日本選手権後にパリで合同合宿を行うアイデアが出たことも明かした。

 日本陸連が他国の陸連とパートナーシップを結ぶのは初めてである。今回の協定は日本陸連のオフィシャルパートナーである株式会社アシックスがFFAとの橋渡しをしたことで実現。アシックスは、FFAと今年1月よりオフィシャルサプライヤー契約を結んでいる。ほかにもフィンランド、イタリア、オーストラリア、オランダ、韓国をサポートしている。現在、更なるパートナーシップ協定を締結する交渉は行なわれていないが、アシックスの尾山基CEOは「たとえばフィンランドは投てきが強い。商品を提供するだけではなく、双方の技術力アップのために同盟を組めたら」と、今後の可能性についても示唆した。

 尾縣専務理事は、今回のパートナーシップでの協力内容について「選手強化に関する情報交換」「種目別の合同合宿の開催」「大会の選手相互派遣」「トレーニング拠点の構築」「ジュニア世代の相互交流」「世界大会の相互協力」などを挙げた。また「海外で力を出せない日本選手を、いろんな国に派遣できる環境を整えれば、本番に強いチームを構築できるのではないかと思っています」と、今後の目標を語った。

 会見では2日前の織田幹雄記念国際陸上競技大会で、10秒01の今季世界最高をマークした桐生祥秀(洛南高)にも触れた。河野会長は「日本にとって、大変うれしい報告。高校生のレベルが上がっていると感じています。新しい世代から世界レベルの選手を出さなくてはいけない」と表情を引き締めた。さらに他種目でも好記録が生まれた織田記念を総括して、「(今後に)かなりいい記録が望めそうな予兆がした」と期待を口にした。

 リオ五輪へ向け、まずは8月に世界選手権モスクワ大会が控える。5日にゴールデングランプリ東京が開催され、6月には日本選手権が行なわれる。その結果を踏まえ、世界と戦う日本代表が決まる。日本陸連の原田康弘強化委員長は「世界陸上は経験の場ではなく、戦いの場」と語った。ロンドン五輪ではメダル1個に終わった日本陸上界。だが短距離界では、“最速の高校生”桐生や山縣亮太(慶応大)、大瀬戸一馬(法政大)など若い世代の台頭が目立っている。この流れを“日仏同盟”により、選手強化の交流を図り、更なる上昇気流に乗せたい。

(杉浦泰介)