いよいよ2020東京オリンピック・パラリンピックまで3年を切った。都内にいるとその機運は感じるのだかが、いったん地方に行くとほとんど感じられない。もちろん東京で開催し、東京都が主催者でもあるので、今後も東京をさらに盛り上げる必要があるとは思う。しかし、日本での開催なのに国内全体の盛り上がり感が低いのは残念な状況と言わざるを得ない。

 

 2013年の開催決定以来、エンブレム問題、国立競技場建設問題、開催費用負担などなどオリパラ関係で報道されてきたニュースはネガティブなものが多く、いまひとつ明るい話題になっていないのも一因だろう。前向きなニュースより、ネガティブな方がニュースになりやすいというメディアの性格上、これは仕方のないことなのかもしれない。しかし、それだけに盛り上がらない責任を押し付けていては、ここからの盛り返しは不可能だ。

 

 もちろん大会組織委員会も東京都も、様々な策を練り攻勢に出ている。その効果はこれからじわじわと出てくるのではと期待をするところだ。

 

 個人的には大会をPRするだけでなく、国民の参加を促すことが国内での盛り上がりに大きく関係してくるのではないかと思っている。人は自らが関与したものには、何らかの興味関心を持つものだ。いまのまま他人事にしていては、どれだけオリパラが耳や目に入ってきても心を動かされない。しかし、その思いは参加するとなれば変わるはずだ。

 

 さて、一般人がオリパラに参加する手段とは?

 もちろん選手として出場するのは相当なハードルだし、9万人というボランティアが現実的か。競技に直接関与できるのはそのくらいかもしれないが、僕はもっと広い意味での参加する機会を作れないかと思っている。

 

 様々な大会への関わり方

 

 そのいい例が組織委員会の行っている「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」である。使用していない携帯を寄付してもらい、そこからメダルを作ろうというこのプロジェクト。スタート時はそれほどでもなかったが、いまでは80万個の寄付が集まってきたという。そして寄付した人は、「自分の電話がメダルになると思うと嬉しい」とか「メダルを見るのが楽しみ」というようなコメントが多い。「携帯の寄付」という参加行為だけでも大会への思いは変わるのだ。

 

 このように、参加とは競技会に直接出なくともよい。なんらかの形で国民が参加できる機会があると少しずつ変わると思うのだ。寄付という形もあるだろう。現在、組織委員会では「東京2020寄付金」を募っている。ここで少額でも寄付すれば、自分のお金で大会が運営されている実感も湧くだろう。もっとも税金が投入されている段階で広義な意味では皆のお金が使われているのだが、能動的に寄付をすることで意識は違ってくるものだ。

 

 文化での参加という方法もある。オリパラはそもそも、スポーツだけの祭典ではない。「スポーツを文化と教育と融合させること」というのが憲章に記載されている。東京でも様々な文化イベントが開かれるし、参加型のものもある。そういった形でも、この大きなイベントの一員となったら、その意識は変わるだろうし、その人々の記憶にも深く刻まれるのではないか。

 

 2020年は、国と東京都、組織委員会、関係自治体が運営していく。しかし、それだけではない。国民は単に観戦者にとどまらず、何らかの形で参加する。それがこれからのオリパラ像だと思うし、だからこそ、この時代に開催する意味があるのではないだろうか。

 

 あと3年、されど3年。残された時間で、どうやれば国民参加のオリパラができるのか。しっかりと知恵を絞りたい。

 さあ、皆でオリンピック・パラリンピックに参加しよう!

 

白戸太朗(しらと・たろう)プロフィール

17shiratoPF スポーツナビゲーター&プロトライアスリート。日本人として最初にトライアスロンワールドカップを転戦し、その後はアイアンマン(ロングディスタンス)へ転向、息の長い活動を続ける。近年はアドベンチャーレースへも積極的に参加、世界中を転戦していた。スカイパーフェクTV(J Sports)のレギュラーキャスターをつとめるなど、スポーツを多角的に説くナビゲータとして活躍中。08年11月、トライアスロンを国内に普及、発展させていくための会社「株式会社アスロニア」を設立、代表取締役を務める。今年7月に東京都議会議員に初当選。著書に『仕事ができる人はなぜトライアスロンに挑むのか!?』(マガジンハウス)、石田淳氏との共著『挫けない力 逆境に負けないセルフマネジメント術』(清流出版)などがある。

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