29日、男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」2016-17シーズン開幕戦が各地で行われた。昨季B1初代王者に輝いた栃木ブレックスは同ベスト4のシーホース三河とホームで対戦。第1Qで8点のビハインドを負った栃木は、第2Qにベンチメンバーの活躍などで28得点を挙げて41-36と逆転。第3Qも点差を広げ、78-64で快勝した。その他の会場では、昨季準優勝の川崎ブレイブサンダースが名古屋ドルフィンズにホームで76-77の惜敗。川崎は後半に猛烈な追い上げを見せ一時は逆転したが、残り3秒でひっくり返された。大型補強で注目を集める琉球ゴールデンキングスはサンロッカーズ渋谷に54-73、劇的なB1残留を決めた横浜ビー・コルセアーズは滋賀レイクスターズに56-73と、いずれもホームでの開幕戦を白星で飾れなかった。

 

 ロシター、15得点12リバウンドのダブルダブル(ブレックスアリーナ宇都宮)
栃木ブレックス 78-64 シーホース三河
【第1Q】13-21【第2Q】28-15【第3Q】20-11【第4Q】17-17

 

 チーム力、リバウンド、ディフェンス、ブースターという栃木の持ち味ばかりが目立った開幕戦だった。

 

 昨季のチャンピオンチームからトーマス・ウィスマンHC、チャンピオンシップ(CS)ファイナルMVPのSG古川孝敏らが去った。インサイドで身体を張れるPF/Cジェフ・ギブスもケガで欠く。ネガティブ要素はいくつもあったが、それを吹き飛ばすような試合を見せた。

 

 第1Qは8点リードを奪われたが、第2Qは互いにオン・ザ・コート2(外国籍選手最大2名起用できる)を選択。栃木は新加入のSFセドリック・ボーズマンが9得点、2年目のPG生原秀将が7得点と活躍した。守っては三河のポイントゲッターPG/SG比江島慎とSG/SF金丸晃輔をノーゴールと沈黙させた。

 

 5点リードで試合を折り返した栃木。第3Qも攻め手を緩めない。勝負所を抑えていたのはやはりこの男。司令塔のPG田臥勇太だ。比江島のアシストからCアイザック・バッツに豪快なダンクを叩き込まれるが、ディフェンスリバウンドからの速攻でレイアップを決めた。再び三河に詰められても、外からのカットインでバスケットカウントを獲得し、3点プレー。チームを上昇気流に乗せる。

 

 直後には針の穴を通すような鮮やかなチェストパスでPG/SG遠藤祐亮のゴールをアシスト。点差を広げると、激しいディフェンスで三河の反撃を封じ込める。このQは20得点を挙げ、失点はわずかに11。リードを14点に広げた。第4Qは17ー17とタイだったが、最後まで三河を波に乗せなかった。昨季CSセミファイナルの再戦は栃木がリベンジに燃える三河を返り討ちにした。

 

「選手が本当に集中して粘り強いプレーをしてくれた。それもこれだけ多くのファンの方々が声援してくれたおかげだと思っています。私にとっては大切な日になりました」

 今季から指揮を執る栃木の長谷川健志HCはブースターへの感謝を述べた。勝因について訊かれると、「すべてはリバウンドとディフェンスだと思います」と答えた。リバウンドは栃木48に対し、三河は34。激しいディフェンスも見せた。昨季最多リバウンド、最小失点を記録した栃木の武器はHC、メンバーが代わっても変わらなかった。

 

 キャプテンの田臥は「皆、気持ち入れて最後まで集中してやってくれた結果が勝ちに繋がった」とチームメイトを称えた。アリーナをチームカラーの黄色で染めたブースターに「これだけ多くのファンが一緒に戦ってくださったので勝てました。明日も激しい戦いになると思いますので一緒に戦ってください」と呼び掛けた。

 

 ブレックスアリーナを包む“黄色いうねり”は文字通り、栃木の選手たちの背中を押した。連覇に挑む王者は誇らしげにコートを後にした。

 

(文/杉浦泰介)