第386回 世界一の座を勝ち取るのはドジャース? インディアンス? ~2017年MLBプレーオフ展望~

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(写真:ダルビッシュ有はドジャースのワールドシリーズ進出に貢献できるか Photo By Gemini Keez)

 2017年のMLBシーズンも大詰め――。いよいよプレーオフが始まり、世界一に向けてのラストスパートが始まった。今季も多くの強豪がしのぎを削る中で、世界の頂点に立つのはどのチームか。両リーグの優勝候補をピックアップし、ワールドシリーズに進むチームを予想してみたい。

 

 注/以下、選手の成績はすべてレギュラーシーズンのもの

 

 名門復活か、勢いに乗るWCか ~ナ・リーグ~

 

本命 ロサンゼルス・ドジャース(104勝58敗 ナ・リーグ西地区優勝)

 

 今季メジャー最高勝率を可能にした層の厚さに敬意を表し、ここではドジャースを本命に据えたい。ナ・リーグには強力なライバルが存在しないこともあり、29年ぶりのリーグ制覇は射程圏内。もっとも、8月26日から9月11日にかけて1勝16敗と低迷するなど、連勝と連敗を繰り返す波の大きさは懸念材料だ。

 

(写真:デーブ・ロバーツ監督の采配もドジャースには重要になる Photo By Gemini Keez)

 ポイントとなるのは、今季も大黒柱クレイトン・カーショウ(18勝4敗、防御率2.31)以外の投手陣がどれだけ頑張れるか。昨季もプレーオフではカーショウが孤軍奮闘したが、オーバーペースがたたってナ・リーグ優勝決定シリーズではガス欠。その轍を踏まないように、リッチ・ヒル(12勝8敗、防御率3.32)、ダルビッシュ有(10勝12敗、防御率3.86)、アレックス・ウッド(16勝3敗、防御率2.72)といった先発陣の働きに注目が集まる。

 

 トレード期限にダルビッシュを獲得したのは端的に言ってこの1カ月のためであり、その成果が期待される。守護神ケンリー・ジャンセン(41セーブ、防御率1.32)に繋ぐまでの中継ぎには不安があるだけに、ブルペンに入る前田健太(13勝6敗、防御率4.22)の活躍の場もあるはずだ。

 

 また、コーリー・シーガー(打率.295、22本塁打、77打点)、ジャスティン・ターナー(打率.322、21本、71打点)、コディ・ベリンジャー(打率.267、39本、97打点)を中心とする打線も得点をあげて投手陣を援護できるかどうか。

 

 シーズン中に8勝11敗と苦しんだダイヤモンドバックスと対戦する地区シリーズが鍵になる。ワイルドカード戦の勝利で勢いに乗る地区ライバルを倒せれば、“今年のドジャースは違う”という雰囲気が出てくるはず。その流れに乗って、名門が久々にワールドシリーズの舞台に戻ることは十分に可能に思える。

 

穴 アリゾナ・ダイヤモンドバックス(93勝69敗 ナ・リーグ・ワイルドカード) 

 

 “ダイヤモンドバックスとは対戦したくなかった”。絶対に公言はしないが、多くのドジャース関係者は心底ではそう思っているのではないか。

 

(写真:ワイルドカード戦で先制弾を放った主砲ゴールドシュミットの打棒にも注目だ Photo By Gemini Keez)

 シーズン最後の26勝12敗と好調で、その期間の勝率はナ・リーグ1位。ドジャースとの直接対決でも最後の6戦では全勝だった。

 

 エースのザック・グレインキーは今季も17勝7敗、防御率3.20と安定し、左腕ロビー・レイ(15勝5敗、防御率2.89)もドジャース相手には31回2/3で53奪三振と相性が良い。この左右のエースをワイルドカード戦につぎ込まざるを得なかったのは誤算だったが、3番手以降もザック・ゴッドリー(8勝9敗、防御率3.37)、タイフアン・ウォーカー(9勝9敗、防御率3.49)、パトリック・コービン(14勝13敗、防御率4.03)と好素材が残っている。

 

 ポール・ゴールドシュミット(打率.297、36本塁打、120打点)、J.D.マルティネス(打率.302、29本塁打、65打点)、ジェイク・ラム(打率.248、30本塁打、105打点)といった中軸打線の破壊力は、17安打で11得点を奪ったロッキーズとのワイルドカード戦でも誇示した通りだ。上り調子のダイヤモンドバックスは誰にとっても怖い存在。地区シリーズでドジャースを倒せば、そのまま一気に駆け上がり、2017年のシンデレラチームになっても不思議はない。

 

 昨季の雪辱に燃え、半世紀ぶりの頂点へ ~ア・リーグ~

 

本命 インディアンス(102勝60敗 ア・リーグ中地区優勝) 

 

 両リーグを通じ、最もバランスの取れたインディアンスを世界一の大本命にあげる声が今季は多い。8月24日から9月14日まででなんと22連勝を飾り、シーズン最後の37戦中33勝と絶好調。昨季は地元でのワールドシリーズ第7戦でカブスに屈したインディアンスは、今年こそと、1948年以来の優勝に照準を合わせてきている。

 

(写真:昨季は地元での第7戦に敗れたインディアンス。大舞台に戻ってこれるか)

 投手陣に隙はなく、チーム防御率はメジャートップの3.30。。エースのコリー・クルーバー(18勝4敗、防御率2.25)は後半戦では11勝2敗、防御率1.71、特に9月は5勝0敗、防御率0.84とほぼ完璧な投球を続けてきた。トレバー・バウアー(17勝9敗、防御率4.19)、カルロス・カラスコ(18勝6敗、防御率3.29)も安定しており、先発2、3番手が故障離脱して苦しんだ昨秋とは状況がかなり違う。アンドリュー・ミラー(62回2/3で95奪三振、防御率1.44)、コディ・アレン(30セーブ、防御率2.94)を軸にしたブルペンの力も、この1年間で証明してきた通りである。

 

 ホセ・ラミレス(打率.318、29本塁打、82打点)、フランシスコ・リンドー(打率.273、33本塁打、89打点)が中軸を務める打線のチームOPSも同2位。攻守ともに穴は見当たらず、インディアンスこそが優勝候補筆頭と目されてしかるべきか。

 

 ESPN.comに掲載された予想記事でも、30人の記者のうち16人はインディアンスが世界一と見ていた。特にクルーバーという絶対的な存在がいるこのチームを相手に、7戦中4勝(地区シリーズは5戦中3勝)を挙げるのは並大抵のことではない。2015‐2016シーズンにNBAのキャバリアーズが悲願の初優勝を遂げたのに続き、クリーブランドにメジャースポーツの王座が戻ってくる可能性は高そうだ。

 

対抗馬 アストロズ(101勝61敗 ア・リーグ西地区優勝)

 

(写真:カルロス・ベルトランのようなリーダーを加えたこともアストロズ躍進の要因の1つになった)

 野手のタレントの数では、アストロズもインディアンスに負けていない。ホゼ・アルトゥーベ(打率.346、24本塁打、81打点)、カルロス・コレア(打率.315、24本塁打、84打点)、ジョージ・スプリンガー(打率.283、34本塁打、85打点)の生え抜きトリオを先頭に、18本塁打以上の選手が実に7人。チーム打率、得点、OPSはすべてメジャー1位という強力打線は群を抜いている。

 

 投手陣はインディアンスに劣るが、8月にトレードでジャスティン・バーランダー(15勝8敗、防御率3.36)を獲得したのは大きかった。アストロズ移籍後の5試合で、バーランダーは5勝0敗、防御率1.06と完璧な内容。ダラス・カイケル(14勝5敗、防御率2.90)、ランス・マカリスター・ジュニア(7勝4敗、防御率4.25)、チャーリー・モートン(14勝7敗、防御率3.62)、ブラッド・ピーコック(13勝2敗、防御率3.00)という2番手以降も及第点で、上位進出は十分にあり得る。

 

 順当にいけば、インディアンスとの対戦が予想されるア・リーグ優勝決定シリーズは熾烈な戦いになりそう。スターが散りばめられた2つのパワーハウスの激突は、全米のスポーツファンを魅了するはずである。

 

杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール
東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。著書に『MLBに挑んだ7人のサムライ』(サンクチュアリ出版)『日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価』(KKベストセラーズ)。最新刊に『イチローがいた幸せ』(悟空出版)。
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