第387回 ファイナルは4年連続でウォリアーズ対キャブズになるのか ~NBA 2017-18シーズンの見どころ~
NBAの2017-18シーズンが現地17日に開幕——。過去3年同様、今年もゴールデンステイト・ウォリアーズとクリーブランド・キャバリアーズの強さばかりが目立つのか。それとも両雄の間に割って入るチームが現れるのか。今回は両カンファレンスの行方を展望し、シーズンの見どころを探っていきたい。
王者に不安要素はあるのか
昨季、圧倒的な強さで3年間で2度目の優勝を飾ったウォリアーズ。ケビン・デュラント、ステフィン・カリー、ドレイモンド・グリーン、クレイ・トンプソンという“ビッグ4”を先頭に、ほぼすべての主力メンバーが今季も残留した。ESPN.comのシーズン展望で、全21人の記者がウォリアーズ優勝を予想したことも話題になっている。攻守両面でスキのない現代の最強チームは、よほどのことがない限りは今シーズンも大本命であり続けるはずだ。
ウォリアーズの快進撃が止まるとすればどんな状況だろう? まずは“ビッグ4”の中から複数の故障者が出た場合か。あるいはエゴの問題でチーム内のケミストリーが崩れた時、優勝戦線はより興味深いものになる。
ただ、強固なリーダーシップを確立したパワーハウスに大きな亀裂が生じるとは考え難い。昨季ファイナルでMVPを獲得したデュラントが移籍2年目を迎え、今季はエンジン全開で臨める。だとすれば、ウォリアーズは昨季以上の強さを発揮する可能性の方が高いのかもしれない。
2番手以下との力の差がありすぎることを嘆く声も少なくなく、筆者もタレントの一極集中は残念ではある。しかし、ウォリアーズほど華やかで、破壊力があり、それでいて献身的なチームが生まれることはもうないかもしれない。彼らがピークにいるうちに、その一挙一動を楽しんでおくべきだろう。
“Stop the Warriors” の候補は
鋼の強さを持つウォリアーズの対抗馬を探すのは容易ではない。だが、あえて挙げるとすれば、昨季シーズンMVPのラッセル・ウェストブルックが率いるオクラホマシティ・サンダー、オフにクリス・ポールを獲得したヒューストン・ロケッツ、毎年優れたチームを作ってくるサンアントニオ・スパーズか。
中でも最も興味深いのはサンダーだ。ウェストブルックが絶対的な軸になるチームに、今オフにポール・ジョージ、カーメロ・アンソニーという2人のスターが加わったからだ。
ジョージは依然としてリーグ屈指の2ウェイプレーヤー(攻守両面で秀でた選手)で、1オン1の能力ではいまだに上質なカーメロが3番目のオプションとなるオフェンスは脅威。すべてが上手くいけば、サンダーはどんな強豪にとっても悪夢のようなマッチアップを作り出す可能性を秘めている。
ただ、疑問点も少なからずある。ボール独占傾向が強いウェストブルックとカーメロは共存できるか。昨季に年間平均トリプルダブルとフル回転したウェストブルックに疲れはないのか。チームディフェンスは弱点にならないのか。
今季を通じて、これらのクエスチョンに少しずつ答えが出されていくのだろう。1つだけ確かなのは、2017-18シーズンのサンダーは退屈なチームにはならないということである。
キャブズの視界は良好
カイリー・アービングのキャブズからのトレード志願は今オフ最大の衝撃だった。本人の願い通り、アービングはボストン・セルティックスに移籍。過去3年連続でファイナルに進んだキャブズは、その原動力の一人を失い、新しい方向に進むことを余儀なくされる。
もっとも、少なくともイースタン内ではそれでもキャブズが依然として大本命という見方が圧倒的に多い。アービングが去った代わりに、アイザイア・トーマス、ジェイ・クラウダーといった好選手を獲得できた。ドウェイン・ウェイド、デリック・ローズといったベテランとも契約し、より層の厚い陣容になった。これらの武器をレブロン・ジェームズが上手く使いこなせば、やはりキャブズの戦力は一段抜けているようにも思える。
イースト内にキャブズに正面から太刀打ちできるライバルは数少ない。最大の難敵と目されたのはアービングが加わったセルティックスだったが、開幕戦で得点源のゴードン・ヘイワードが故障離脱してしまった。これでセルティックスの優勝争い参入は難しくなったと見る関係者が多い。
結果として、キャブズは今季もレギュラーシーズン中はそれほど多くのエネルギーを費やす必要はなさそうだ。目標はあくまでウォリアーズへのリベンジ。6月の大決戦(ファイナル)に向け、主力のコンディションをケアし、ペース配分しながら進んでいくことになるのだろう。
シクサーズの未来に期待
キャブズ、セルティックス以外にイースタンの注目チームを選ぶならば、ジョン・ウォールというスターPGを擁するワシントン・ウィザーズ、2年前にイースタン・カンファレンス・ファイナルに進んだトロント・ラプターズだろう。また、ヤニス・アデトクンボというスーパースター候補を持つミルウォーキー・バックスがどこまで躍進するかも楽しみではある。
しかし、まだ優勝戦線に絡む可能性こそ低いものの、イースタン最大級の話題チームとして、ここではフィラデルフィア76ersを挙げておきたい。
長く続けてきた再建政策の甲斐あって、興味深いメンバーがフィリーの街に揃った。昨季の新人王候補になったジョエル・エンビード、ダリオ・サリッチに加え、去年のドラフト全体1位指名選手のベン・シモンズ、今年の同1位指名選手のマーケル・フルツが今季にそれぞれデビュー(注・シモンズはケガで昨季を棒に振った)。すぺて23歳以下のスター候補カルテットは魅力たっぷりだ。
繰り返すが、76ersが今年中に多くの勝ち星を挙げることはおそらくあるまい。それでも数年先をにらみ、成長を見守る楽しみがある。何より、若きタレントたちは、フレッシュでエキサイティングなプレーを展開してファンを喜ばせてくれることは間違いないのだ。
杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール
東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。著書に『MLBに挑んだ7人のサムライ』(サンクチュアリ出版)『日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価』(KKベストセラーズ)。最新刊に『イチローがいた幸せ』(悟空出版)。
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