日本シリーズへはパ・リーグがソフトバンク、雨の影響で決着が延びたセ・リーグは横浜DeNAが進出しました。セ・リーグの3位チームが日本シリーズに進むのは初めてのことです。阪神とDeNAのクライマックスシリーズ(CS)・ファーストステージは天候の影響をまともに受けた格好ですが、どちらのチームも条件は同じですから言っても仕方のないことですね。

 

 自軍を徹底分析し、冴えたラミレス采配

 ソフトバンクは去年、北海道日本ハムに大逆転されてリーグ優勝を逃し、気持ちが落ち着かないままCSを戦っていた印象でした。それが今年は選手全員のモチベーションも高く、一体感が感じられました。東北楽天に連敗しましたが、内川聖一や柳田悠岐の存在が大きく、負傷から復帰した彼らの姿を見て「まだいけるぞ」と気持ちが常に前向きだった印象です。

 

 セ・リーグはDeNAがファイナルステージで1敗(アドバンテージ含め2敗)した後、4連勝で広島を退けました。広島はレギュラーシーズン終了後、約3週間、実戦から遠ざかったことが敗因とも言われていますが、それよりもアレックス・ラミレス監督、緒方孝市監督、両者の野球観の違いが出ましたね。

 

 緒方監督はレギュラーシーズン通りの野球をやろうとして、ラミレス監督はシーズン中と短期決戦ではガラリと戦法を変えてきました。細かくつないだ継投策や、代打に乙坂智、細川成也と若手を抜擢したり、選手の好不調を見極めて、常に最善手を打っていた。こうした采配は05年、日本シリーズを制した千葉ロッテのボビー・バレンタイン監督にも共通しています。

 

 さらにDeNAはシーズン終盤、巨人との3位争いでチームが強くなりました。負けられない戦いが続き、あそこで短期決戦力が養われたのでしょう。またラミレス監督は自チームの弱点をよく分析していましたね。シーズン中、中継ぎ陣が崩れることが多かったので、CSでは細かい継投と先発投手の今永昇太、濱口遥大をセットアッパーで起用する大胆な戦法で弱点を補いました。「ここが勝負どころだぞ」という気持ちが伝わるので、中継ぎ投手も意気に感じたことでしょう。

 

 日本Sは4勝2敗でソフトバンク

 日本シリーズで対戦するソフトバンクとDeNAは、両方とも打力のチームです。内川、柳田などタレント揃いという点ではソフトバンクですが、打線の総合力で見るとDeNAが勝っています。特にファイナルステージ第5戦で梶谷隆幸にホームランが出たことが大きい。彼のような選手が気分良くシリーズを迎えるのはチームにとって非常に心強い。

 

 梶谷は万能タイプで打順はどこでもOKですし、DHでも使えるでしょう。DHの起用法も焦点になりますがラミレス監督なら乙坂、細川の起用も考えられます。ソフトバンクの先発陣で左投手は和田毅くらいなので、乙坂の方が可能性が高いでしょうね。

 

 とはいうもののシーズン3位のチームですから、ソフトバンク相手には少々分が悪いと思っています。デニス・サファテという絶対的守護神と、それに向けて計算できる中継ぎ陣。さらに先発にも駒が揃っている。となればソフトバンクが4勝2敗で日本一と予想しています。

 

 DeNAに勝機があるとすれば、今の勢いを持続したまま粘り強く接戦をものにする。第7戦までもつれればDeNAが4勝3敗で日本一でしょう。ラミレス監督が日本シリーズという大舞台でどんな采配を見せて、どんなカードを切ってくるのか。非常に楽しみです。

 

image佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商高で甲子園に出場し準優勝を果たす。卒業後に近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日、エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)、ロサンジェルス・ドジャース、メキシコシティ(メキシカンリーグ)、エルマイラ・パイオニアーズ、オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。


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