谷繁元信「同じ捕手だからわかる古田のすごさ」
今季2000本安打、さらには1000打点を達成した中日・谷繁元信。横浜、中日の正捕手としてマスクを被り続け、これまでリーグ優勝5回、日本一2回。今や現役では、実力・実績ともに彼の右に出る捕手はいないと言っても過言ではない。その谷繁に、二宮清純がインタビュー。プロ25年目、42歳のベテラン捕手が考えるプロの条件とは――。二宮: 谷繁さんが横浜にいた頃は、同じセ・リーグにはヤクルトの古田敦也が脚光を浴びていました。やはり「負けたくない」というライバル意識もあったのでは?
谷繁: 当時は思っていましたね。でも、ある時ふと思ったんです。「別に意識しても、一緒だな」って。それに、やっぱり古田さんは見ていてすごいなと思ったんですよね。毎年140試合近く出ていて、しかも打つ方でも主軸で打率3割以上打って、首位打者のタイトルまで獲っちゃって……。キャッチャーをやりながら、あれだけ打てるというのは、僕にとっては驚きでしたよ。だってキャッチャーは1試合に130球も140球も受けますから、3打席目、4打席目ともなると握力が落ちて、思うようなバッティングができなくなるんです。それなのに、古田さんは打っていましたからね。「この人はすごいな」と思いましたよ。
二宮: 古田のキャッチングやリードについてはいかがでしたか?
谷繁: 僕は古田さんの真似をしようとは一度も思ったことはなかったですね。
二宮: 彼は脇を開けて、下からめくるようにして捕るのが特徴的ですよね。昔はよくワイパーのように扇形に腕を使え、というふうに言われていましたが、谷繁さんはどちらかというとオーソドックスです。どちらが正しいのでしょう?
谷繁: 実はこの間、古田さんとその話になったんです。結論から言えば、どちらが正しいということはないですね。とにかくピッチャーが「よし」と思ってくれて、審判に見えやすかったら、僕はどちらでもいいと思います。
二宮: その人のスタイルでいいと?
谷繁: おそらく人それぞれの骨格とも関係しているのかなと思うんです。古田さんはおそらくヒジを固定すると動かなくなってしまうんじゃないかと。だからちょっと脇を開けて、腕を使っている。僕はどちらかというと、あまり開かないようにしています。
二宮: 古田は股関節が柔らかいですよね。
谷繁: 柔らかいですね。僕も意外と股関節が柔らかいんですよ。
二宮: それもキャッチャーとしての素質のひとつでしょうね。
谷繁: そうですね。キャッチャーは足首、ヒザ、股関節が柔らかい方がいいです。でも、今のキャッチャーは腰の高い選手が少なくない。ペタッと座ると、後ろに倒れてしまうんです。僕が思うに、これってトイレのせいだと思うんですよ。今はほとんど洋式ですけど、昔は和式だったでしょう。あれが良かったんです(笑)。
二宮: 今年でプロ25年目。プロ野球界の風景も入団した頃に比べると、随分変化したのでは?
谷繁: 変わりましたね。「オマエ、何を考えているの?」という選手が増えました。抑えられても、悔しがらない。「次はなんとかしてやり返してやる」とか、そういう風な様子が見えないんですよ。理論だけは言うんですけどね。
二宮: 古い選手からすれば、言い訳に聞こえてしまう。
谷繁: そうそう、そうなんです(笑)。そういう選手が増えましたね。
二宮: 谷繁選手が若手の頃のようなガツガツした選手はいませんか?
谷繁: 全然、ないですね(笑)。なんかこう、いつも淡々としているんですよ。僕なんか「よくそんな冷静でいられるな」なんて思って、逆にこっちがイライラしたり(笑)。まぁ、それも時代なのかもしれませんけどね。ちょっとおもしろくないなと感じることはあります。
<現在発売中の『小説宝石』2013年7月号(光文社)ではさらに詳しい谷繁選手のインタビュー記事が掲載されています。こちらも併せてご覧ください>