Jリーグは28日、事務局で会見を行い、春秋制から夏春制への移行やポストシーズン制導入を含めて議論が行なわれている戦略会議の進捗状況を報告した。昨日の理事会で、夏開幕に関しては移行する方向性は示したものの、それに踏み切るかどうかの結論はまだ出ていない。今後は欧州を中心とした国際カレンダーや、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)の開催日程が変更する可能性に備えて、継続して議論を重ねていく。
「50%」。Jリーグの中西大介競技・事業統括本部長が語る数字が、まだまだ道半ばということを物語っている。
 日程に関しては、昨年の6月から「カレンダータスクフォース」として、計15回に渡って協議をしてきた。10月からは現在のJリーグ戦略会議というかたちに変えて、今年の5月まで8回話し合ってきた。この会議はシーズン制をどのような形にするかを含めて、成長へのビジョンや目標を設定することが目的である。だが、その完成度はまだ半分程度ということだ。

 会議での主な検討テーマに挙げられているのが、シーズン制やポストシーズンの導入についてである。3月に開幕して12月に終わる現行の日程は、世界のサッカーの中心である欧州の主要リーグとは大きく異なる。欧州主要リーグは、9月から5月にかけて、1年をまたいで行なわれている。カレンダーをワールドスタンダードに合わせることで、日本人の海外移籍への円滑化を図り、代表の強化スケジュールも組みやすくなる。こうした利点から春秋制から、かつては秋春制、現在は夏春制への移行を求める声が出てきているのだ。

 ここに来て、シーズン制移行へと舵を切りつつあるJリーグ。そこには世界のサッカーの動向も大きく影響している。まず2014年の国際サッカー連盟(FIFA)のインターナショナルマッチデーが9〜11月にダブルデート(週2回開催)となるからだ。この時期、Jリーグは終盤戦を迎え、カップ戦など日程の過密さがさらに膨れ上がる。それに加え、アジアサッカー連盟(AFC)がACLのスケジュールを欧州型に移行する提案がなされているからだ。そうなると、「Jリーグの日程は破綻する」(中西本部長)可能性があり、シーズン制を動かさざるを得ない状況になるという。

 だが、まだ決断には至っていないのには、かねがねから言われている降雪地域での開催が難しくなるなどの移行のデメリットがある。さらには欧州サッカーの動向だ。2022年のW杯はカタール開催。W杯を例年通りの6月に行なえば、酷暑で選手や観客に大きな負担が強いられることになる。それを懸念して、冬に開催時期を移行する可能性も出てきている。その対応策として、欧州主要リーグが日本式のスケジュールへとカレンダーを変更する議論もされているという。そのためシーズン移行するか否か、そのどちらにでも対応できるように準備するというのが、今のJリーグの方向性である。

 もうひとつの検討議題、ポストシーズン制の導入はJリーグを盛り上げるための手段である。現状では3つのパターンを大別し、想定しているという。1つは米国の4大スポーツのようなカンファレンス制を敷いてのプレーオフ制度である。2つ目は南米のサッカーやかつてのJリーグのように2ステージ制でシーズンを戦い、最終的にチャンピオンシップで王者を決める方式だ。最後はベルギーなど欧州の中堅国に見られる上位間でのプレーオフ(スプリット方式)。これについては、7月の実行委員会でも審議される見通しだ。

 すべてはJリーグが成長するための骨子である。Jリーグはこの5月に開幕から20周年を迎えた。サッカー後進国である日本が、新興国として隆盛してきたのは、Jリーグの存在抜きには語れない。日本サッカーがプロ化を果たしてからは、日本代表はW杯に5大会連続出場決めている。そして今や代表の半数以上が国外でプレーする“海外組”となった。長友佑都(インテルミラノ)、香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)など、世界的ビッグクラブでプレーする選手も出てきた。

 しかし、急激な成長を遂げている日本サッカーも、Jリーグの観客数や収入面では、その伸びが衰えてきているのが実状だ。欧州主要各国のリーグとは、特にマーケット面で大きく水を空けられている。海外への人材流失もその原因のひとつだろう。ただ日本サッカーの骨となるのは、やはりJリーグだ。世界へと羽ばたく選手を供給しつつ、それでも枯渇しないような資源を醸成することが大切だ。そうした“メイド・イン・ジャパン”のブランド力を上げるだけでなく、国内外の選手が「Jリーグに入りたい」と思わせるリーグの魅力を構築しなくてはならない。

 20年という歳月は、伝統国に比べれば、まだまだ“こども”も同然かもしれない。ただ未完成な分、伸びしろは多分にあるはずだ。シーズン制の改革には痛みを伴うかもしれない。その傷は最小限に抑える必要はあるが、Jリーグは新たに生まれ変わる時期に来ているのではないだろうか。時期尚早――そう周囲から言われた逆風を跳ねのけて誕生したJリーグ。どちらにせよ「いつやるか?」には、そろそろ終止符を打つべきだ。

(杉浦泰介)