W杯前哨戦と銘打たれたコンフェデレーションズカップで、日本は3戦全敗に終わった。ブラジル、イタリア、メキシコという世界の強豪と戦うなかで、ザックジャパンが得た収穫と課題は何だったのか。
 コンフェデ杯で得られた収穫は、ハイプレスが機能したことと、攻撃のかたちがつくれていたことだ。なかでもイタリア戦では、積極的なプレスと高いボールポゼッションで終始主導権を握った。イタリアのボールホルダーに次々とアプローチをかけ、相手に攻撃を組み立てさせなかった。攻撃ではサイドチェンジを有効に使い、速いタテパスから中央を崩す多様性も見られた。メキシコ戦も前半4分に、香川真司(マンU)が遠藤保仁(G大阪)のパスをPA内で受けてシュートに持ちこむなど、オフェンスの方向性は間違いではないことが証明されたといえるだろう。

 だが、残念ながら上記以外の収穫はゼロに等しかった。
 ブラジル戦では序盤、中盤、終盤に失点する最悪のパターンで完敗を喫した。ネイマールの先制点は防ぎがたいものではあった。しかし、2失点目はズルズルとラインを下げてしまったために、ブラジルの選手にスペースと時間を与えてしまった。ボランチのパウリーニョにPA内まで攻め上がられていたことが、何よりの証左だろう。さらにPA内にはGKを除く7人の日本選手が揃っていたが、パウリーニョにほぼフリーの状態でシュートを打たれた。今後はゴール前でのチャレンジ&カバーの徹底が求められる。

 イタリア戦ではゲームマネジメント力の不安定さが見受けられた。前半途中までに2点をリードし、さらに3点目を狙いに行った姿勢は評価に値する。だが、90分間を全力でやり通すことは不可能に近い。前半終盤にCKからデ・ロッシにヘディングで叩き込まれたシーンでは、日本選手の足は完全に止まっていた。ガス欠で足が止まった瞬間を世界は見逃さない。選手間の距離をコンパクトに保ち、あえて相手にボールを回させながら、いわゆるアタッキングサードで奪いとる。そういった主導権の握り方も日本には必要だ。

 そして、今大会ではアルベルト・ザッケローニ監督の采配にも疑問符がつくシーンが多かった。特にメキシコ戦では、リードされている状況でDFを2人投入。システムを4−2−3−1から3−4−3に移行するための判断だったのだろう。しかし、布陣変更直後に2点目を与えてしまい、長友佑都(インテル)が負傷して間もなく元のかたちに戻さざるを得なくなった。度重なる布陣変更でチームのバランスは崩れ、結局は1点を返すに留まった。

 今大会は3試合をほぼメンバーを固定して戦った。いや、現体制になってからの2年半を振り返っても布陣に大きな変化はない。試合中の交代では疲弊による同ポジションの入れ替えばかりで、流れを変えるジョーカー的な選手の投入は少ない。先発メンバーの信頼が高いと言えるが、控えメンバーの底上げが十分に行われてこなかった弊害が顕著になりつつあると感じる。

 7月の東アジアカップでは、シーズン開幕前の海外組を招集しないことが濃厚と言われている。主力と控え選手の格差をこれ以上広げないために、東アジア杯は重要なものになる。ここまで出場機会の少なかった選手には、今後も代表に必要とされるためのアピールの場としての奮起を期待したい。

 また、新戦力も積極的に試してもらいたい。現在、J1得点ランクトップタイの柿谷曜一朗(C大阪)、2年連続得点王の佐藤寿人(広島)は今の代表にはいない人材だ。柿谷は高い技術を持ち、近年は決定力も向上。香川、清武弘嗣(ニュルンベルク)、乾の元C大阪トリオとの連係も魅力だ。佐藤は動き出しの速さ、シュート技術の高さはJナンバーワンと言っても過言ではない。先発のみならず、疲れが出てくる後半中盤あたりから投入すれば相手守備陣の脅威になるだろう。

 守備陣には田中マルクス闘莉王(名古屋)を推したい。32歳となり、スピード面の衰えは隠せないが、空中戦の強さと優れたビルドアップは健在。“闘将”として味方を鼓舞するメンタル面の効果も期待できる。

 コンフェデ杯の結果は、現状のクオリティでは世界には勝てないことを明確にしてくれた。W杯までの残り約1年で、ザックジャパンはどこまで強くなれるのか。その答えを楽しみに待ちたい。