Jリーグは12日、2012年度の全クラブの経営情報を開示した。40クラブの「当期純利益(当期純損失)」を合計すると約4億3百万円の利益となった。前年度から約9億4千4百万円アップしており、5年ぶりの黒字。赤字のクラブ数は前年度の18から12、債務超過クラブ数は11から9に減り、Jリーグ全体として財務指標は改善傾向に向かっている。Jリーグはクラブ経営の透明性向上のため、05年度分から経営情報を発表している。今年度から導入されたクラブライセンス制度による影響が見受けられたかたちとなった。
「一歩目としては、まずまずです」。クラブライセンスマネージャーを務める大河正明は、赤字クラブ数の縮小の手応えをうかがわせた。クラブライセンス制度導入元年、各クラブに緊張感が生まれてきているようだ。財政面で早速、その効果は表れた。赤字クラブ数は、J1が8クラブ(山形、鹿島、横浜FM、清水、名古屋、C大阪、神戸、広島)から5クラブ(札幌、鹿島、横浜FM、名古屋、神戸)、J2が10(栃木、草津※現・群馬、湘南、富山、岐阜、岡山、愛媛、北九州、鳥栖、熊本)から7(栃木、群馬、富山、岐阜、鳥取、福岡、熊本)へと減少している。一方、「債務超過クラブ数」はJ1が3(山形、横浜FM、神戸)から3(札幌、横浜FM、名古屋)、J2が8(札幌、草津、湘南、岐阜、北九州、鳥栖、熊本、大分)から6(栃木、群馬、岐阜、北九州、大分、熊本)へとほぼ横ばい。2014年度末に「3期連続赤字」か「債務超過」でライセンスは不交付となり、リーグに参加することはできなくなる。今後も減少傾向へ進むだろう。

 ただ営業収入は、J1が1クラブあたりの平均約31億5千2百万円で8%増に対し、J2は約9億3千6百万円と8%減だった。営業収入のトップは浦和レッズで約53億5千3百万円。収支が公開されてから8年連続の1位を守ったが、前年度からは約2千9百万円と減っている。昨季Jリーグを制したサンフレッチェ広島は約5億円の増収となり、当期純利益では約2億2千3百万円。前年度の赤字(約7百万円)から、一気に立て直した。J2に降格したガンバ大阪は営業収入が1年で約5億3千2百万円下がるなど、リーグの成績が収益に反映された。

 大河マネージャーは、Jリーグの成長戦略を1本の木に例えた。木が立派に育つには、「根っこを広く、深く張ること」「幹を太くすること」「高く伸ばすこと」の3つの要素が必須だとし、クラブライセンスは「幹を太くする」ための策だという。今回、Jリーグが提示した命題に多くのクラブが応えたわけだ。ただ身の丈にあった経営も大事だが、身の丈を大きくしようとしないままならば、成長はない。「高く伸ばす」には、世界におけるJリーグブランドの向上や真のビッグクラブの確立が必要だと言われている。そこへと踏み出すクラブに期待したい。クラブライセンスに加え、シーズン移行やポストシーズン制導入など改革への議論は続いており、Jリーグの課題はまだまだある。だが、今こそ経営学の権威であるピーター・ドラッカーが言ったとされる「変化をチャンスとしてとらえるべき」なのではないだろうか。

(杉浦泰介)