清宮幸太郎(北海道日本ハム)はプロ入り表明会見の席で「高校(早実)の先輩である王貞治さんのホームラン記録868本を目標にしたい」と語って、ド肝を抜いた。

 

「18歳の青年よ、夢を大きく持て」と言うのは簡単だが、ここまでスケールの大きい夢を語られると、驚きを通り越して感動する。すごいヤツだなあ。きっと活躍するんだろうな。カープにもこのくらいスケールのでかいことを言う選手はいないのかな、と思ったら、いました。

 

 ドラフト3位の新人・ケムナブラッド誠(日本文理大)。

 

「マックス・シャーザーに近づきたい」
 と語ったそうだ。エライ! このくらい言わなきゃ。

 

 ちなみに、シャーザーはナショナルズのエースで、2017年は16勝6敗でサイ・ヤング賞を受賞した。しかも2年連続の3回目。現在の世界一の投手といっても過言ではない。サイド気味の腕の振りから投げる160キロ近い速球に、ものすごいキレのスライダーが印象的だ。

 

 あわてて、ケムナブラッドの動画をチェックしてみた。

 

 ケムナブラッドはサイドではなく上から投げる。だからシャーザーとはフォームは違うのだが、バックスイングで右腕を後ろに引いてから投げに行く瞬間とか、あるいは左足をあげてステップして下ろすリズムとか、そう思って見れば、どことなくシャーザーに似ている。

 

 現状では球速にもコントロールにも、まだまだバラつきがあるようだが、大丈夫。青年には未来がある。どんどんシャーザーの真似をしたらいい。

 

 ついでに、ドラフト1位・中村奨成(広陵高)についても言っておきたいことがある。昨年のワールドシリーズを見ていて、勝ったアストロズの1番打者ジョージ・スプリンガーのスイングの軌道が、中村によく似ているのだ。

 スプリンガーのスイングをみていると、中村が甲子園で、インコースをものの見事にホームランしたあのスイングを、自然に思い出す。

 

 打者・中村としては、スプリンガーを目指せばいいと思う。ワールドシリーズ7試合で5本塁打した長打力と、俊足を合わせ持つ。中村にぴったりである。

 

 もちろん、夢のような未来だけがあるのではない。

 

 少し現実に戻ると、鈴木誠也、安部友裕の2人の故障からの回復具合が気になる。課題である「左の中継ぎ」問題はどうなるのか? 薮田和樹は、さすがに去年の疲れが残っているだろうなあ、とか、不安はつきない。

 

 しかし、1月くらいは、カープにシャーザーとスプリンガーが出現する、という夢を見るのも悪くない。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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