愛媛新聞は、同県にゆかりがあり、スポーツでインパクトを残した団体や選手を称える愛媛新聞・スポーツ賞を設けている。毎年1月上旬に発表され、45回目を迎えた今年もアーチェリー、軟式野球、弓道、ビーチバレー、剣道、なぎなたなど様々な競技の選手たちが表彰された。その中に法政大学自転車競技部2年の近藤翔馬(松山聖稜高等学校出身)の名前があった。

 

 近藤は昨年8月31日から9月3日にかけて行われた自転車全日本大学対抗選手権大会(インカレ)の男子スクラッチで優勝を果たしたことが評価されて同賞を受賞した。自転車競技といっても、種目は多岐に渡る。大きくわけてロードレースとトラックレースがある。トラックレースの中でもさらに8つの種目がある。タイムトライアル、スプリント、ケイリン、パーシュート、スクラッチ、ポイントレース、マディソン、オムニアムだ。

 

 ここでは近藤が優勝したスクラッチと、彼が「個人的に好き」というポイントレースを簡単に紹介したい。

 

 スクラッチは定められた距離を走る個人競技だ。男子の場合、決勝は15キロ、予選は10キロで行われる。主集団に周回遅れにされてしまったら、失格となる。近藤いわく、スクラッチは「最後の1発で決まってしまう」もので、レース終盤の攻防が白熱する種目だ。

 

 近藤は2017年9月6日付の愛媛新聞で喜びを語っている。

「格上の選手が多く、レース後は本当に自分が勝ったのかと思った。有力な選手をマークしながら最後に差し切れた。今まで結果が出なかったが、やってきたことは無駄じゃなかった」

 

 レース終盤のラストスパートで大学日本一の称号を手にした。

 

 近藤は自身の長所と短所を説明した。

「(レース中にペースを上げる)インターバルには自信があります。相手が“しんどいな”と思っている時に自分から動けるというのは長所だと思います。課題はトップスピードです。スピードがないと、いくらインターバルに強くても、不利になることもあるので……」

 

 彼は身長169センチ、大学入学時の体重は60キロだった。「華奢でした」と入学当時の自分を振り返る。「重たいギアでも対応できるように」と法政大学に入学後、体幹トレーニングとウェイトトレーニングに重点を置いた。努力が実り、2年足らずで体重は69キロに増加した。筋肉量を増やしたことがスクラッチでの優勝につながったのだ。

 

 ポイントレースは単純な最終着順ではなく、レース中に獲得したポイントにより成績が決まる。周回数というものが設けられており、定められた周回ごとに1位で通過すると5点、2位には3点、3位には2点、4位には1点が入る。この得点の合計で勝負を決するのだ。ラップと呼ばれる周回遅れにするとプラス20ポイントが加算される。

 

 極端な話、序盤にポイントを稼いでいれば、最終周は着順的に最下位でゴールしても優勝できる。当然、その逆もあり得る。レース前半は後方にいても、後半にポイントを稼げば優勝できるのだ。ポイントが同数の場合のみ、最終着順を参考に順位を決める。そういった駆け引きも含め、ゲーム性が強い種目とも言えるだろう。

 

 近藤はポイントレースの魅力を、こう語る。

「レース間の駆け引きを含め、自分でレースを組み立てる面白さがあります。戦い方次第では誰にでも逆転のチャンスが巡ってくるので、僕は好きです。ラップで20ポイントが入ると逆転の可能性が結構ありますからね」

 

 近藤は自転車競技の魅力、自分自身のことを話す時、とても楽しそうだった。「インタビュー慣れしていますね」と水を向けると「話すのが好きなだけです」と茶目っ気たっぷりに笑った。

 

 彼はまだ19歳。インカレを制するなど今後が楽しみな存在である。この若者はどのように育ち、自転車競技に出会ったのだろうか――。

 

第2回につづく

 

近藤翔馬(こんどう・しょうま)プロフィール>

1998年3月4日、愛媛県松山市生まれ。小学生時はフルコンタクトの空手、中学校時はサッカーに取り組む。松山聖稜高校に入学してから自転車競技を始める。2015年5月、愛媛県高校総体スクラッチで優勝。翌月の四国高校選手権ではポイントレースとスクラッチで1位に輝いた。同年の和歌山国体ポイントレースで8位の入賞を果たした。法政大学に入学すると17年全日本大学対抗選手権のスクラッチで優勝を果たした。身長169センチ、体重69キロ。

 

(文・写真/大木雄貴)

 


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