第五中足骨。恥ずかしながら、このトシになるまで意識したことがなかった。ただ、実はサッカー選手に非常に多い骨折のひとつで、最近では清武やネイマールらがこのアクシデントに見舞われている。足の甲の外側にあるちょっと突起したこの骨は、直接的な衝撃はもちろんのこと、持続的なストレスによる疲労骨折も引き起こしやすいのだという。

 

 と、それまでなら「だからなんだ?」という話なのだが、スポーツ医学の専門家によると、この第五中足骨の骨折、日本人には特に多いのだそうである。

 

 理由は簡単で、欧米人と比較した場合、日本人の第五中足骨は大きく突出している人の割合が多い。つまり、折れやすい骨が、より衝撃を受けやすい形で出っ張ってしまっているのである。

 

 かつて、日本代表選手が単一メーカーのスパイク使用を義務づけられていた時代、ラインを塗り替えたり、貼り替えたりして他社製のスパイクを履く選手がいた。そして、そうした選手のほとんどが理由として口にしたのが「横幅が狭い」ということだった。あのころは、単に靴底の問題かと思っていたが、実は、第五中足骨が圧迫されることによるストレスだったのだろう。

 

 おそらく、海外のメーカーにもそうした選手の声は届いていたはず。80年代も後半に入ったあたりから、日本人特有の足型を採用したモデルが発売されるようになった。かくして、ドイツ製のスパイクは横幅がキツい、といった声は、次第に聞かれなくなっていった。

 

 生活様式や食生活の変化によって、日本人の足型も次第に変わっていったという。以前に比べれば、第五中足骨が突出した人の割合は、確実に減少しているらしい。ところが、だとしたら同じように減少していてもおかしくない第五中足骨の骨折は、依然としてニュースになり続けている。これはどういうことなのか。

 

 メーカー関係者が理由のひとつとしてあげるのは、中国市場の拡大である。つまり、以前はアジア最大の市場だった日本人向けに足型を開発する必要があったが、中国がその立場にとって代わったいま、その必要性は大幅に少なくなった。ならば、日本人向けのモデルを廃止し、全世界共通モデルにしてしまった方がコストのカットも図れる。かくして、海外メーカーの製品でありながら、その実ジャパン・オリジナルだったモデルの多くが、廃番の道をたどりつつあるのである。

 

 かくして、日本人の第五中足骨は、再び強いストレスを受けるようになった。

 

 メーカーと契約したスパイクを履くというのは、選手にとって大きなステータスである。契約金の多寡によってメーカーを選ぶ選手がいるのも当然といえば当然。だが、こと日本人選手に話を限るならば、今後、メーカー選びは慎重になった方がいい。自分の足型にフィットするのかどうか――。

 

 絶対匿名を条件に、こう漏らした選手がいる。

「第五中足骨が折れやすいメーカー、折れないメーカー、あるんですよね」

 

<この原稿は18年3月8日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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