西本聖(元プロ野球選手)<後編>「2段モーション解禁で”投高打低”のシーズンに」
二宮清純: この人と飲みたい、引き続きゲストは西本聖さんです。雲海酒造の本格芋焼酎『木挽BLUE』も、かなりボトルが空いてきました。
西本聖: 焼酎の中で芋焼酎が一番好きなのですが、『木挽BLUE』は本当にいい香りですね。
二宮: 芋焼酎の決め手、西本さんは香りですか。
西本: そうですね。『木挽BLUE』は香りがよく、そしてすっきりした味わいなので、どんな食べ物にも合う感じがします。
二宮: このお店は西本さんの出身地・愛媛県各地の郷土料理が食べられます。八幡浜のじゃこ天と芋焼酎『木挽BLUE』の組み合わせはいかがでしょう。
西本: じゃこ天を食べて焼酎をグイッ。さらにじゃこ天を食べて焼酎を……と、止まらなくなる。互いの良さを引き出す感じですね。
二宮: プロ野球でいうと黄金バッテリー?
西本: まさしく、それです!(笑)。
二宮: さてバッテリーの話が出たところで、西本さんが求める良いキャッチャーの条件は?
西本: キャッチングの良さと強い肩です。
二宮: リードは?
西本: リードに関しては最終的にサインをベンチから出すことができます。だからきちんと捕って、ランナーが走ったら確実に刺してくれる。そういうキャッチャーが安心できますね。
二宮: 現役でキャッチングが良いのは?
西本: うーん、すぐにパッと思い浮かびませんね。最近のキャッチャーはボールに負けてミットがブレることが多いですから。
二宮: 最近は"打てるキャッチャーを育てろ"という感じで、守備は二の次。そういう風潮も要因のひとつでしょうか。
西本: 打撃練習に時間を割いているからか、そもそもキャッチングの練習が足りていないのか……。いずれにしてもキャッチングは急にうまくはならない。毎日の積み重ねです。
二宮: 元広島の達川光男さんは若い頃、江夏豊さんに「タツ、キャッチングを磨け! キャンプで10万球捕れ!」とノルマを課せられたと言ってました。
西本: 本当にそうですよ。キャンプ中ならブルペンとピッチングマシン。シーズンに入ったら早出や居残りをしてマシンのボールを受けて練習をすればいい。絶対にうまくなりますから。
二宮: 良いキャッチングができないのは練習量が少ないから?
西本: そうです。あとはコーチが"やらせていない"からですね。
二宮: 前編でもおっしゃっていましたが、コーチは嫌われてもいいから練習をやらせろ、と。
西本: まったくそのとおりです。コーチの仕事は選手に好かれることではなく、嫌われてもいいから選手を育ててチームを強くすることですから。
二宮: さて、キャッチャーの次はピッチャーに話を移しましょう。今季、2段モーションが解禁されました。打高投低と言われる時代ですが、これはピッチャーにとっては朗報ですよね。
西本: 勝てないピッチャー、伸び悩んでいるピッチャーは皆、2段モーションを試すといいと思います。
二宮: その効果は?
西本: まずタメをつくれるから軸足にグーッと体重を乗せられる。そして軸足に乗ることで間ができる。そうするとボールの出が遅くなって、バッターはタイミングを取り難くなる。
二宮: バッティングはタイミングが何よりも重要だと言います。
西本: そもそも野球はピッチャーの方に主導権がありますが、2段モーション解禁によってグーッとためて投げたり、ときにはクイックで放ったり、さらに投球に幅ができる。今季は意外なピッチャーが台頭するかもしれません。
二宮: 昨季、2段モーションで反則投球をとられた埼玉西武・菊池雄星投手などは……。
西本: シーズン中にフォーム変更を余儀なくされながら16勝ですから、今年は20勝の可能性もあります。
二宮: それは楽しみです。ところで近頃のピッチャーは多彩な変化球を投げます。西本さんの現役時代の持ち球は?
西本: ストレート、シュート、カーブ。この3つでしたよ。
二宮: 技巧派の西本さんですから、もっと多くの変化球を操っていたのかと思っていました。
西本: カーブの握りで角度を変えて投げるスライダーもありましたが、基本はこの3つでした。
二宮: それでいてプロ通算165勝、その秘訣は?
西本: 私の場合、プロで勝負できたのは一も二もなくコントロールがあったおかげでした。プロ入りした当初はノーコンだったのですが、徹底的に鍛えられて生き残れましたよ。
二宮: 高校時代(松山商高)から西本さんの投球は知っていますが、そこまでノーコンの印象はありませんよ。
西本: いや、ひどいものでしたよ。「お前みたいにコントロールの悪いピッチャーは見たことがない!」と、当時の杉下茂コーチに言われた。今でも会うと言われます(笑)。当時は来る日も来る日も的をぶら下げたネットに向かってボールを投げさせられたり、そういう練習ばかりでした。
二宮: 西本さんが「コントロールはどうにかなる」と常に口にしているのは自身の経験からですか。
西本: そうです。「あのノーコンだった自分が克服できたんだから誰だって矯正できる」と思っています。実際、コーチ時代はそうやって何人も一人前にしましたよ。
二宮: 今のピッチャーにアドバイスするとすれば?
西本: 新しい変化球を覚えることもいいけれど、今持っている球種のコントロールを磨け、ということです。
二宮: 持ち球の精度を上げろ、と。
西本: そうです。プロ野球で本当の勝負というのはコントロールの有無で決まります。ピンチのときに自信を持って投げられるボールがあれば、これほど心強いものはないですから。
二宮: キャンプ取材に行くと思わず若手投手に教えたくなりませんか?
西本: ウズウズしますね(笑)。特に福岡ソフトバンク、「この子がなんで3桁の背番号(育成)なの?」という投手がいっぱいいます。
二宮: 宝の山?
西本: 良い素材が揃っています。ソフトバンクは選手を育てるシステムがきちんと構築されているから、選手層の厚さもチーム力の高さも納得です。どうして同じことが巨人はできないのかなあ……。
二宮: アハハハ。古巣はやっぱり気になりますね。
西本: 本当に心配なことだらけですよ。
二宮: では、そろそろ今季の順位予想を伺いましょう。セ・リーグは広島のリーグ3連覇がかかっています。
西本: 今の広島を見ているとV9時代の巨人を思い出します。
二宮: と、言うと?
西本: あの頃の巨人は毎年、主力が抜けることもなくほぼ同じメンバーで戦えていました。巨人の野球、川上哲治さんの哲学というものが何年にも渡って継承されていたのが強さの秘訣だったのでしょう。今の広島も同じように丸佳浩、菊池涼介、田中広輔らの中堅、そして鈴木誠也らの若手が一体となり広島野球を実践しています。投打のバランスもとれていて、守備、走塁に対する意識も高い。総合的に見てセ・リーグではひとつ抜けた存在ですね。
二宮: 随分、高評価ですね。
西本: 広島の問題はポストシーズンです。昨季もクライマックスシリーズで3位だった横浜DeNAに敗れました。はっきり言うと監督力の差だったのかな、と。緒方孝市監督がシーズンと短期決戦を切り替えて采配を振るえるかどうか。ちょっと気が早いですが、この秋のポストシーズンはそこを見たいですね。
二宮: 対抗はDeNA、そして阪神でしょうか。
西本: 阪神は若手が伸びてきているし、中継ぎ陣が引き続いて良さそうです。さらに右サイドスローの4年目・石崎剛は球も速く、ブルペンを支える存在になるんじゃないですかね。DeNAは中継ぎ陣をどう整備できるかが鍵になります。
二宮: Bクラスはどうでしょうか。
西本: 巨人はローテーションの3番手以降がまだ計算できない。でも、上原浩治の加入で十分Aクラスが狙える。東京ヤクルトは昨季、ケガ人があれだけ多かったからその点では上がり目がある。小川淳司監督、宮本慎也ヘッドコーチの手腕に注目です。中日は松坂大輔がどうなるか。去年の今頃に比べると左肩が開くこともないし、ヒジもうまく使えていて状態は良い。キャンプで見たときにスライダーのキレも良かったし、怪物の復活が見られたらいいですね。
二宮: パ・リーグはソフトバンクが盤石だと見られています。
西本: 先程も言ったようにこのチームは選手層が厚く、スカウティングも良くて、そして獲得した選手の育て方もいい。しばらくは1強が続くでしょうが、とはいえ他球団もやられっぱなしではダメでしょう。
二宮: プロなら当然です。
西本: 絶対的守護神のデニス・サファテが今季も最後に出てくるでしょうが、しつこくカットしたりバント攻めをしたり、「サファテ崩し」を見せてほしいですね。
二宮: 対抗は東北楽天、オリックス、西武でしょうか?
西本: 楽天は昨季、序盤から首位を走るなどパ・リーグを盛り上げました。主力選手は残留していますから、今季も上位争いでしょう。あとヨシさん、佐藤義則投手コーチがソフトバンクから楽天に移籍したことも好材料でしょう。
二宮: 佐藤さんは名投手コーチとして知られています。
西本: 佐藤コーチはブルペンで投手陣に「最後、ストライクを放って終われ」と、どのチームでも言っているんですよ。絶対にストライクをとる、そういう意識が楽天投手陣に根付けばこれほど心強いものはないですね。
二宮: オリックスはどうでしょう。
西本: 金子千尋、西勇輝、そして新人・田嶋大樹と投手陣にコマが揃っています。野手陣も吉田正尚、宗佑磨などフレッシュな戦力が多く、期待できるんじゃないでしょうか。楽天、オリックス、西武の3球団の争いは結構、熾烈になるでしょうね。
二宮: 西武は牧田和久投手がポスティングでメジャーリーグのパドレスに移籍。その穴は?
西本: キャンプで見たところ大卒2年目の中塚駿太が非常に良くて、牧田の穴を埋めそうです。黄金期の西武を支えた辻発彦監督が指揮を執って2年目。古巣をどう復活させるのか、今年が勝負の年でしょう。
二宮: 清宮フィーバーの北海道日本ハム、井口資仁新監督の千葉ロッテは?
西本: どちらも厳しいシーズンになりそうです。清宮はとにかく1軍の一流のピッチャーに慣れることでしょう。ボールのスピードやキレは高校野球とは段違いですから。その中で打てる球をどう見極めるか。プロはストライクでは勝負してこないから選球眼も求められます。
二宮: いずれにしても開幕が楽しみですね。さて、最後に『木挽BLUE』をもう1杯どうぞ。
西本: いただきます。ふぅ、シーズン予想で熱く語ってしまったので、キンキンのロックの喉越しがたまりませんね。
二宮: ここぞという場面で登場したリリーフのようですか?
西本: ええ、『木挽BLUE』のロック、見事な火消しです(笑)。クールダウンできました。
二宮: プロ6年目から本格的に付き合ってきたお酒ですが、今のペースは?
西本: 週に3日くらいですね。
二宮: 4勤1休のキャンプではありませんが、ちょうどいい付き合い方ですね。私はほぼ連投ですよ。
西本: お酒も野球もコントロールが大切ですよ(笑)。
(おわり)
西本聖(にしもと・たかし)プロフィール
1956年6月27日、愛媛県出身。松山商から75年、ドラフト外で巨人に入団。江川卓と巨人の先発2本柱として活躍。81年には沢村賞を獲得した。88年に中日へ移籍。89年には20勝を挙げ最多勝、カムバック賞、ゴールデングラブ賞を獲得。90年にはドラフト外入団史上初の150勝を達成した。92年にオリックスへ移籍。そして94年には再び巨人へ移籍し、同年引退。03年、阪神の1軍投手コーチを務め、見事セ・リーグ優勝に導いた。10年から12年は千葉ロッテ、13年から14年はオリックス、15年は韓国・ハンファで投手コーチを務めた。現役通算165勝128敗17セーブ 防御率3.20。
今回、西本聖さんと楽しんだお酒は芋焼酎「木挽BLUE(ブルー)」。宮崎の海 日向灘から採取した、雲海酒造独自の酵母【日向灘黒潮酵母】を使用し、宮崎・綾の日本有数の照葉樹林が生み出す清らかな水と南九州産の厳選された芋(黄金千貫)を原料に、綾蔵の熟練の蔵人達が丹精込めて造り上げました。芋焼酎なのにすっきりとしていて、ロックでも飲みやすい、爽やかな口当たりの本格芋焼酎です。
西本聖さんの直筆サイン色紙を芋焼酎「木挽BLUE」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はこちらのメールフォームより、件名と本文の最初に「西本聖さんのサイン色紙希望」と明記の上、下記クイズの答え、郵便番号、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)を明記し、このコーナーの感想や取り上げて欲しいゲストをお書き添えの上、お送りください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は18年4月12日(木)。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
今回、西本聖さんと楽しんだお酒の名前は?
砂々良(ささら)
新宿区西新宿6-16-12 第一丸善ビル地下1階
TEL: 03-3342-5795
営業時間: 17時30分~24時(LO23時30分)
定休日: 日曜・祝日
お酒は20歳になってから。
お酒は楽しく適量を。
飲酒運転は絶対にやめましょう。
妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。