第266回 石井貴監督(徳島)「気迫を前面に出して連覇を狙う」
四国アイランドリーグplusの各チームは現在、キャンプ、練習試合、オープン戦と3月末に迫った開幕に向け、総仕上げの段階に入っている。今回の野球西国巡りは新指揮官として徳島インディゴソックスを率いる石井貴監督に話を聞いた。ディフェンディングチャンピオンとして連覇を目指す徳島をどう鍛えるのか。石井監督は現役時代の投球スタイル同様に「すべては気迫です」と言い切った。
東尾&森譲りの闘志を
昨年の11月、球団から話をいただき徳島の監督に就任することになりました。私は神奈川県で生まれ育ち、NPBでは埼玉が本拠地の西武ライオンズに所属。四国はまったく無縁の土地……というわけではなく、西武時代は隣の高知県でキャンプを張っていたこともありました。今は久しぶりに四国に戻ってきたな、という感じです。
西武のコーチを辞めてから5年間、解説の仕事などで野球に関わってきましたが、ずっとユニホームをまた着たいと思っていたので嬉しいですね。ユニホームを着て選手と同じグラウンドに立ち、そして一緒に汗をかく。やはり野球人としてそれが一番の幸せです。その機会をいただいた球団のためにも、そして地元・徳島の皆さんのためにも恩返しをしたいと意気込んでいます。
恩返しとはまずは徳島の連覇です。そしてひとりでも多くの選手をNPBに送り込むことですね。
就任して投手陣に「気迫を出して、相手に立ち向かっていくこと」と言いました。私は現役時代、東尾修さん、森繁和さんといった気迫の塊のような方々の下で野球をしました。根性論ではありませんが、やはり最後、勝負を分けるのは気迫の有無です。
西武のコーチ時代、四国ILの各球団と対戦したことがありましたが、そのときから感じていたことが「独立リーグの選手たちはみんな結果を求めすぎている。形にこだわりすぎている」ということです。NPBに行きたいとの気持ちばかりが先行して、いいところを見せようと空回り。それでは相手と戦う前に負けてしまいます。
だから今季、徳島の選手にはとにかく気迫を出して戦ってもらいたい。そのために行ったのが走り込み量のアップです。キャンプでは球場の裏の山を何往復もさせたり、選手は「例年よりキツイ」とゼーゼー言っていました。走ることで下半身の強化とともに、このキツイ体験が「俺たちはあれだけのことをやってきたんだ」と自信になります。ただ気迫だ、気合だと言っても空回りするので、そうした裏付けも大切ですからね。
昨秋のドラフトで徳島からは伊藤翔が埼玉西武3位、大藏彰人が中日育成1位指名を受けてNPBに進みました。中心投手2人が抜けた形ですが、今季も戦力は十分に揃っているのでいい戦いができます。
キーマンとして名前をあげるなら鎌田光津希、竹内裕太でしょうか。2人とも右の本格派投手で、1年目ですが戦力になってくれると期待しています。あと昨季、先発でも後ろでもフル回転した伊藤克は今季も投げる場所に関わらず結果を残してくれるでしょうね。野手では愛媛マンダリンパイレーツから移籍してきた安井勇輝です。彼は身長188センチ、体重100キロと大柄で、大きいのを打てるバッター。ウチで才能が花開くことを楽しみにしています。
自分自身の現役、コーチ時代の経験からNPBではどういう選手が求められているのかが分かっています。最近のトレンドも踏まえれば、やはりNPBのどの球団もブルペンを重視している。だからそこにピタッとハマる選手を育てて、スカウトの目に止まらせたいですね。投球以外ではクイックや牽制なども細かく教えたい。
試合に勝つこと、そしてNPBドラフトで指名されることで、徳島インディゴソックスの名前が広まります。それが球場にお客さんを呼ぶことにもつながりますからね。石井貴という名前が集客に使えるんだったら、なんぼでも使ってもらって結構です。徳島の皆さんの期待に応えるためにも頑張りますので、応援よろしくお願いいたします。
<石井貴(いしい・たかし)プロフィール>
1971年8月25日、神奈川県出身。藤嶺学園藤沢、社会人野球・三菱重工横浜を経て94年、ドラフト1位で西武に入団。3年目に1軍に定着すると4年目の97年は中継ぎ、抑えとして59試合に登板し、10勝8敗9セーブをあげた。翌98年から先発に転向。2004年にはシーズン1勝ながら日本シリーズで2勝をあげてシリーズMVPに輝いた。以後、2007年まで現役を続け、プロ通算68勝58敗13セーブ。引退後は西武で投手コーチを務め、13年限りで退団。解説者や母校の非常勤コーチなどを経て、18年、四国IL・徳島の監督に就任した。