(写真:7アシスト、6スティールと攻守に活躍した比江島<中央白>)

 18日、男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」第23節最終日が各地で行われた。東京・青山学院記念館で行われた試合は、中地区1位のシーホース三河が東地区5位のサンロッカーズ渋谷を81-77で下した。三河はリーグ戦12連勝で、地区優勝のマジックを3とした。一方、ホームで敗れた渋谷は8連敗となった。

 

 エース比江島、両軍最多の26得点(青山学院記念館)

サンロッカーズ渋谷 7781 シーホース三河

【第1Q】13-19【第2Q】23-20【第3Q】16-26【第4Q】25-16

 

(写真:タイムアウト中、勝久HC<中央>は選手たちに大きなアクションで指示を送っていた)

 連勝中の三河に連敗中の渋谷。前日の試合も三河が74-61で快勝していた。渋谷の負けパターンは序盤で離されてしまうこと。それを意識してか、PG伊藤駿がジャンプシュートで先制した。

 

 一方の三河も黙っていない。PG橋本竜馬のスリーポイント(3P)で、すぐさま逆転に成功する。インサイドではPF桜木ジェイアールが力を発揮。19-13と6点リードで第1クォーター(第1Q)を終えた。

 

 第2Qは渋谷がPGベンドラメ礼生、PF/Cジョシュ・ハレルソンの活躍で追い上げる。一時は34-34の同点になるが、ここで三河のエースが魅せる。PG/SG比江島慎が中に切れ込んでからのレイアップで勝ち越すと、今度は外から3Pを沈めた。渋谷の勝久ジェフリーHCも「あれが痛かった」という得点で前半は三河3点リードの39-36で終了した。

 

(写真:比江島にとって、青山学院記念館は大学時代のホームアリーナ)

 第3Q中盤にはCロバート・サクレが決め、渋谷が勝ち越す。だが2月から負けなしの三河の勢いを止められない。桜木のゴールで三河がリードを奪うと、比江島がサクレのパスをカットすると、そのままリングへ一直線。豪快なダンクを叩き込んだ。

 

 比江島はその後も3P を決め、チームを勢いに乗せる。このQの終了間際にはドライブからのレイアップでファウルをもらいバスケットカウント。フリースローも確実に入れ、3点プレーで突き放す。第3Qは65-52と差を開いた。

 

(写真:黄色く染まったアリーナ。前日に通算入場者は10万人を超えた)

 第4Qも三河ペース。最大18点差が開いた。だが渋谷はホームコートである。チームカラーの黄色で染まったブースターの前で、このまま屈するわけにはいかない。ベンドラメ、サクレを中心に怒涛の追い上げを見せる。

 

 ダブルチームを仕掛け、ガード陣がアグレッシブにボールを奪いにいく。着実に点差をつめていき、77-80と射程圏内まで迫った。しかし、追い上げもここまで三河に逃げ切られ、連敗を止めることができなかった。

 

(写真:サクレ<6>はこのダンクを含む19得点を挙げた)

「三河のような強いチームに勝つにはひとつひとつのミスを減らしていかなければいけない。もったいないターンオーバー。ディフェンスでの約束事を守ること。あとは勝負どころでシュートを決め切ることが必要です」と勝久HC。これで8連敗となり、東地区では最下位のレバンガ北海道に勝率で並ばれた。

 

 だが下を向いてばかりもいられない。シーズンはまだまだ続く。「間違った方向にはいっていない。引き続きディフェンスを軸にステップアップして自分たちの流れに持ってこれるようにしたい」。指揮官は「正しいことをやり続けている」と揺らがない。

 

 選手たちも同様だ。キャプテンの伊藤が「ブレていない」と口にすれば、ベンドラメも「やり続けるしかない」と語る。選手間でもネガティブな空気ばかりでなく良い意見交換はできているという。今シーズンは10連勝も経験している。まずは連敗を止め、流れを好転させたい。

 

(写真:落ち着いた様子で戦況を見守る姿が印象的だった鈴木HC)

 勝った三河はこれで12連勝。また一歩地区優勝に近付いた。鈴木貴美一HCは手応えを掴んでいる。

「正直言って僕らのチームは負けて反省してしっかり練習して強くなる。ただ終盤にきての敗戦は自信を失ってしまう。そういう意味ではどんなに悪くても常に1点以上上回る。プレーオフに向けて勝ちを意識してやらないといけない。ここまでいろいろなケースで勝てているので自信になっていると思います」

 

 今シーズンの三河はリーグ新の16連勝を記録するなど好調を持続。リーグNo.1の勝率を誇っている。鈴木HCは選手たちの成長を要因に挙げる。

「前半は勢いがあったが12月に入ると個人技ばかりが目立ってチグハグしてきた。後半戦の早々に負けたことで選手たちが個人の能力を上げなければいけないと気付いた。個人がスキルアップに取り組んでいる。勝ち星が増えてきたのは接戦に強くなってきたからだと思います」

 

(写真:36勝8敗。8割を超える勝率で中地区を突っ走る三河)

 チームの底力が上がったことはエースも感じ取っている。比江島は三河の強さを「ひとつに絞れず一番ディフェンスをしにくいチーム」と語る。インサイドからもアウトサイドからもと攻撃は多彩。守る側からすればマークを絞れない嫌なチームである。

 

「誰かが調子良ければ崩れない」(比江島)という三河。この日は比江島の日だった。「全部入っているイメージ」と、フリースローも合わせて15本のシュートを全て決めた。26得点7アシスト6スティールと大暴れ。比江島は渋谷との2連戦を「苦しいことも楽しいこともここで過ごした。すごく楽しみにしてた」と言う。青山学院大学出身の彼にとって、このアリーナは特別な場所。エースは母校で輝いた。

「渋谷さんのホームですけど勝手に“僕のホーム”“自分への応援”と思いながらプレーした。特別な2試合でした」

 

(文・写真/杉浦泰介)