錦織圭、逆転で初戦突破 〜テニス楽天ジャパンオープン〜

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 2日目を迎えたテニス楽天ジャパンオープンは、3人の日本人選手が登場。世界ランク13位の錦織圭は、同26位のユルゲン・メルツァー(オーストリア)に逆転勝ちを収めて2回戦進出を決めた。昨年に続いての初戦突破を狙った伊藤竜馬は、格上のフェリシアーノ・ロペス(スペイン)から第1セットを先取したものの、フルセットの末に敗れた。杉田祐一は世界ランク34位のイワン・ドディク(クロアチア)にストレート負けを喫した。
 錦織、崖っぷちからの逆転勝利

「うまくスタートしたと思ったが、プレッシャーを感じてタイトになっていて、フォアをはじめプレー全体がうまくいかなかった」
 昨年、同大会で初優勝し、日本人男子として初のツアー2勝目を飾った錦織。今年はディフェンディングチャンピオンとして迎え、大きなプレッシャーを感じていたという。そのため、第2セットの途中まで、錦織らしくないイージーミスが目立った。

 第1セットはどちらに流れがいくのか、最後までわからない展開だった。互いにサービスゲームをキープして3−3で迎えた7ゲーム目、錦織は大事なところでダブルフォルトをしてしまうなど、自らのミスでこのゲームを落としてしまう。続く8ゲーム目をメルツァーが難なく奪って5−3とリードした。しかし、錦織も10ゲーム目をブレークに成功して5−5と並び、結局このセットはタイブレークにもつれこんだ。タイブレークも一進一退の攻防戦が続いた。しかし、最後はメルツァーの強烈なサーブを錦織が返すことができず、結局このセットを落としてしまった。

 第2セットも錦織は先にリードを奪われた。ゲームカウント2−3で迎えた6ゲーム目、サーブ、ショットともにミスが続き、このゲームを奪われると、続く7ゲーム目はラブゲームでキープされ、2−5と、あと1ゲーム落とせば終わりというまさに崖っぷちに立たされた。本人も「負けたと思った」と初戦敗退を覚悟したという。だが、「とにかく1ポイントずつやっていくしかなかったので、ミスをしないことを頭に入れながらプレーした」と気持ちを切り替え、8ゲーム目をデュースの末に取りきる。

 そして錦織が「最大のポイントだった」と振り返った9ゲーム目、ここでプレーを変えたという。「向こうもプレッシャーがかかっていると思い、ペースを落として相手に打たせ、ミスを誘うようにした」と錦織はその戦略を語った。これが功を奏した。このゲーム、メルツァーのミスで錦織がリードを奪うと、30−30からは「たまたま読みが当たった」と本人が語るも、メルツァーの197キロのサーブに対し、フォアクロスのリターンエースを決めて再びリードする。そして、最後はラリーの末にメルツァーのバックショットがネットにかかり、錦織がブレークに成功した。「これで流れも自分自身の縮こまっていたプレーもガラリと変わった」と錦織。さらに10ゲーム目をキープした後の11ゲーム目は、メルツァーがネットに出てきたところをフォアの逆クロスでパッシングショットを決め、またもブレークして6−5と逆転。12ゲーム目も危なげなくキープした錦織が、7−5でこのセットを奪い、セットカウント1−1と並んだ。

 最終セット、互いにキープし合い、ゲームカウント1−1で迎えた3ゲーム目、錦織のフォアショットが立て続けに決まり、ブレークに成功する。これで勢いに乗った錦織は4ゲーム目を2本続けてサービスエースを決めるなどしてラブゲームで奪った。一方、錦織の勢いに押されるかたちで、メルツァーは連続してミスを犯して5ゲーム目も落とす。錦織はこのチャンスを逃さなかった。6ゲーム目にはラインぎりぎりのフォアの逆クロスを決めて観客を沸かせると、最後の8ゲーム目は集中力を高め、15−15から3本続けてサービスエースを決めるという豪快なプレーで締めくくった。
「昨年も初戦をフルセットで勝って勢いに乗れた。今年もそうできたらと思っている」
 2回戦の相手は、錦織同様に逆転で伊藤を破ったロペス。「ケイ・ニシコリ」の本領発揮といきたいところだ。 

 伊藤、復活の糧へ。成長見えた敗戦

 センターコートの第1試合に登場した伊藤竜馬は、世界ランク24位のロペスと対戦した。
「楽天オープンは相性がいい大会なので、リラックスしてコートに入ることができた」
 そう本人が語るように、試合前には時折笑顔でリラックスした表情を見せていた伊藤は、第1セット、格上のロペスに対して冷静かつ積極的なテニスで徐々に試合の主導権を握った。

「相手は早い展開を望み、ラリーをしたくないと思っているので、今日は長いラリーをするつもりであまり無理をせず、確実にいけるところで勝負にいった。サーブもラリーの組み立てを考えて、速さよりもファーストを入れることを重視した」
 その戦術は当たった。2ゲーム目、ラリーが続くと、勝負を急ぐロペスのミスが目立った。それでリズムが狂ったのか、続く3ゲーム目でロペスはボレーをネットにかけたり、サーブでダブルフォルトするなど、集中力を切らしたプレーを連発して落とした。さらに伊藤は4ゲーム目をサーブで攻め、ラブゲームで奪って4−2とし、流れを引き寄せた。ロペスも最後は粘りを見せたが、伊藤から流れを引き戻すまでには至らなかった。伊藤は、このセットは6−4で先取した。

 第2セットは11ゲーム目まで互いにキープし続け、両者ともに一歩も譲らない接戦となる。4−3とロペスリードで迎えた8ゲーム目、ここで雨が降り始め、中断を余儀なくされた。これがロペスにとっては幸運の雨となったようだ。「中断するまで、ロペスはイライラしていた。再開するまでの間、コーチと話し合ったんでしょうね」と、伊藤はロペスの変化を感じていたという。約30分後、試合が再開されると、ロペスは落ち着きを取り戻していた。

 互いにキープし続けあう中、伊藤にとって最大のチャンスだったのはロペスのサービスゲームで0ー30とリードした11ゲーム目だった。ここで伊藤はバックハンドのダウン・ザ・ラインを狙うも、これがアウトとなる。「1、2点で流れは変わる」と伊藤が語ったように、ここからロペスがサーブで攻めてデュースに持ち込むと、最後も強烈なサーブを放って、このゲームをキープした。続く12ゲーム目は逆に伊藤が0−30からデュースに持ち込んだが、最後は不運なコードボールでロペスにポイントが入り、7−5でロペスが競り勝った。これでセットカウント1−1となった。

 第3セットも伊藤は落ち着いたテニスを展開した。だが、200キロ以上のサーブで攻めるロペスが徐々に試合の流れを引き寄せていった。圧巻だったのは最後の9ゲーム目。210、211、202キロのサーブで立て続けにポイントを奪ったロペスは、40−0とマッチポイントを迎えると、最後は176キロながら完全に伊藤の逆をつく巧みなサーブで勝利を決めた。

 負けたとはいえ、最後まで集中して積極的なテニスを見せた伊藤は、試合後のインタビューで次のように語った。
「(160位と)ランキングが落ちている今、自分を信じきれず、競ったところでいつも負けてしまう。この状態をいつ抜け出せるかが課題。ただ、こういう試合をしていれば、必ずチャンスは来るはず」
 一昨年の全米オープンの雪辱とはならなかったが、第2セットでは「おそらく自己最速」という227キロの強烈なサーブを放つなど、随所にレベルアップの跡が見られた。昨年は全豪オープンで4大大会初勝利を挙げ、楽天オープンでは当時世界ランク12位のニコラス・アルマグロ(スペイン)をストレートで破るなどの活躍で自己最高の63位にまでランキングを上げた伊藤。世界で戦う実力は十分にある。この敗戦を浮上の糧としたい。

<1回戦>
錦織圭2(6−7、7−5、6−2)1ユルゲン・メルツァー
フェリシアーノ・ロペス2(4−6、7−5、6−3)1伊藤竜馬
イワン・ドディク2(6−3、6−1)0杉田祐一

(文・写真/斎藤寿子)
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