桐生、10秒22で3連覇 〜東京国体〜

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 4日、東京都開催の国民体育大会の陸上競技初日が行われ、少年男子A(高校2、3年)の100メートル決勝で京都府代表の桐生祥秀(洛南)が10秒22で優勝した。桐生は昨年と合わせて同種目2連覇、一昨年の少年B(中学3、高校1年)を含めれば国体3年連続の優勝。少年女子A100メートルは、昨夏のロンドン五輪に出場した埼玉県代表の土井杏南(埼玉栄)が11秒78で制した。
【“最速の高校生”が飾った有終の美】

“最速の高校生”の名に恥じないぶっち切りでの圧勝だった。
 インターハイ短距離3冠(100メートル、200メートル、400メートルリレー)の桐生が、同世代のライバルたちに影すら踏ませぬ強さを見せつけた。

 この日の天気は曇り。時折、小雨もぱらつく空模様だった。気温は19度前後の肌寒い空気が東京都調布市の味の素スタジアムを包んでいた。力をセーブした予選は10秒89で2位で通過、準決勝は後半流して10秒42で1位で突破し、徐々にピッチを上げていった。

 そして迎えた決勝。桐生はいつものルーティンで、号砲を待った。撃ち鳴らされたピストル音とともに各選手が一斉に飛び出した。得意ではないスタートはほぼ一線だった。それでも“ジェット桐生”は積んでいるエンジンが違うとばかりにすぐ抜け出すと、あとはグングン加速していった。

 赤いシャツに水色のパンツの高校生は、誰よりも速くトラックを駆け抜けた。桐生ひとりだけ別次元の走り。昨年、岐阜の国体で自らが出した10秒21の大会記録には、わずかに及ばなかったが10秒22をマークした。本人は「タイムより順位を狙った走りました。気持ちよく終われてよかった」と国体3連覇を喜んだ。

 4月、織田幹雄国際記念陸上で10秒01の日本歴代2位を出し、彗星の如く日本陸上界に現れた17歳。周囲からは、日本人初の9秒台を期待され、桐生も“超えないといけない”という思いにかられていたという。記録更新はならなかったが、彼は日本選手権、IAAFダイヤモンドリーグ、世界選手権……。「TVで見ていて、出たいと思っていた」大舞台をすべて経験した。激動の1年を「楽しかったけど、ところどころでは疲れた」と振り返った。

 現在、高校3年生。来春には東洋大学に進学予定であることを明かした。ナショナルトレーニングセンター、国立スポーツ科学センターが近いという環境面を重視しての決断だった。また桐生と同じくして、日本陸上競技連盟の男子短距離副部長を務める土江寛裕が新たに東洋大に移る。日頃から日本代表コーチの指導を受けられることは桐生にとって、追い風となるだろう。

 桐生は今後の目標に「まずは10秒0台、1台をコンスタントに出すこと」を挙げた。日本のみならず世界にも衝撃を与えた17歳の10秒01。ただ本人は過去の栄光にしがみつく様子はない。「(10秒)01の感覚をもう1回出そうとは思っていない。自分の走りを大事にしていきたい」。狙うはさらなる高み、日本人未踏の領域だ。“最速の高校生”から“最速の男”へ――。桐生の挑戦ははじまったばかりだ。

【3連覇にも不満の高校女王】

 女子の“スーパー高校生”も100メートル国体3連覇を果たした。土井は予選で11秒86、準決勝は11秒85、決勝は11秒78と、3本とも安定した走りで優勝。しかし本人は「全体的に硬かった」と納得はしていない。

 昨夏のロンドン五輪でリレーメンバー入りを果たし、大舞台を経験した。しかし腰の故障の影響で、今シーズンは悩まされた。6月の日本選手権で3位に入ったが、世界選手権の派遣標準記録には届かなかった。「今シーズンは1回もいいスタートができていない」と課題はスタートにあった。「練習ではできていることが、試合で出せていない。かみ合わせていかないと」。好スタートが切れていないから、いい加速につながらない。

 ただ悲観ばかりしているわけではない。「良くはなってきている」と練習の中である程度、手応えも掴んでいる。6日からは中国での東アジア大会に臨む。これまで自己ベスト(11秒43)更新を意識していたが「考えすぎるとダメ。今はいい走りを求めたい」と語った。

 2020年東京五輪の日本短距離界のエース候補が、男女ともに結果を残した。7年後について土井は「今の自分ではまだまだダメ。もう一度頑張ります」と気を引き締めていた。一方、桐生は「世界と戦える選手になりたいです」と力強く宣言した。世界とはまだまだ遠いとされる陸上の短距離種目。7年後の本大会を24歳で迎える2人の若きスプリンターが、その差を縮めてくれると期待したい。

<少年男子A100メートル決勝>
1位 桐生祥秀(京都・洛南) 10秒22
2位 小池祐貴(北海道・立命館慶祥) 10秒51
3位 安倍謙司(香川・香川西) 10秒58

<少年女子A100メートル決勝>
1位 土井杏南(埼玉・埼玉栄) 11秒78
2位 松本沙耶子(静岡・静岡市立) 11秒84
3位 神保祐希(石川・金沢二水) 11秒92

(文・写真/杉浦泰介)
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