二宮清純: この人と飲みたい、前編に引き続きサッカー解説者の水沼貴史さんと本格芋焼酎『木挽BLUE』を飲みながらサッカー談義に花を咲かせたいと思います。

水沼貴史:この『木挽BLUE』は飲みやすくて美味しいですね。

 

二宮: 家にも『木挽BLUE』のボトルがあるそうですね。家では奥様と?

水沼: はい。家内と2人で飲みながら、ゆっくりと夫婦の時間を過ごすのにも、ぴったりなお酒だと思います。

 

 

 

 

二宮: 奥さんとお酒を飲みながら息子さん(セレッソ大阪・水沼宏太選手)や娘さんの話はしますか?

水沼: 思い出話なんかもたまにしますよ。子供たちが大きくなると、夫婦水入らずの時間も増えますからね。

 

二宮: 息子さんの話も少々。お父さんが元日本代表の選手だとプレッシャーもあったでしょうね。

水沼: それで彼はつらい思い、苦しい思いをずっとしてきたんです。僕が親だということを彼はずっと背負って生きなければいけない。これについては、家内が宏太にきちんと説明していました。

 

二宮: 奥さんは息子さんにどう説明をしたのですか?

水沼: 「お父さんがいて、あなたがいる。お父さんはこういう人(元日本代表選手)だったからあなたは絶対に注目される。でも、それは仕方のないこと。切り離すことはできない。あなたはそこで生きていかないといけないの」。家内は宏太にそう話していました。

 

二宮: 宏太選手が所属するセレッソが平成29年度の天皇杯を制しました。宏太選手のヘディングゴールが決勝点でした。

水沼: ヘディングでのゴールはたまたまみたいですけどね。でも、嬉しいですよ。あの天皇杯の決勝戦を僕は解説していました。子供の試合を解説することもそうですが、親子そろって天皇杯優勝を経験するなんて、なかなかないことですから。

 

二宮: 彼は運動量も豊富ですし、精神的にもタフですね。

水沼: サイドハーフでランニングから相手の裏をとってボールを受けられる選手です。献身性もあって、アップダウンの動きもできます。親のひいき目かもしれませんが、代表に入ってもいいんじゃないかなと思う選手のひとりです。あとは試合中、人一倍声を出せる。リーダーシップもあるんです。

 

二宮: お父さんよりもリーダーシップがある?

水沼: 僕なんて全然(笑)。宏太の方がはるかにリーダーシップはあります。

 

二宮: 期待が高まりますね。

水沼: 彼が子供の頃、代表のユニフォームを買って欲しいと言ってきた。その時僕は「これは買ってもらうのではなく、自分の力でつかみ取りなさい」と教えた。高みを目指せと言いながら育ててきたので、代表入りを諦めてほしくないですね。

 

 オレたちが日産を強くしよう!

 

二宮: さて、水沼さんは大学卒業後、日本サッカーリーグ(JSL)の日産自動車サッカー部でプレーされていました。入社は何年ですか?

水沼: 1983年入社です。同期にはFWの柱谷幸一など学生時代から日本代表入りしていた選手がいました。

 

二宮: 当時の大学サッカー界のスターたちがごっそり日産に入社しましたよね。

水沼: えぇ。柱谷、杉山誠、田中真二、越田剛史といった同期たちとは1979年に日本で開催されたワールドユースにも出場しました。今、思い返してみると勢いがあって生意気なメンバーでしたねぇ(笑)。

 

二宮: 他の選手はともかく、水沼さんから生意気という印象は受けませんが……。

水沼: 「オレたちが日産に入って、強くしようぜ」と、話し合ってみんなで入社したんです。今思うと、若いですね。

 

二宮: なぜ日産を選んだのですか?当時の日産はJSL1部と2部を行ったり来たりしていました。水沼さんが日産に入社する前年は三菱重工が1部優勝を果たしました。

水沼: 三菱重工や他の企業からも誘いはありました。ですが、当時の加茂周監督率いる日産はとにかく攻撃的なサッカーで面白そうだった。“読売クラブに追いつけ追い越せ”が目標で勢いもありました。それとステーキが美味しかった。

 

二宮: ステーキ(笑)。なんですか、それは?

水沼: 入社にあたって加茂さんから直々に六本木のステーキ屋で口説かれたんです。(笑)。

 

二宮: ステーキにつられたと?

水沼: それも大きかったなァ(笑)。

 

二宮: 入社即、レギュラーでしたか?

水沼: 同期の選手は、すぐに試合に出場していましたが、僕はなかなかチャンスをもらえなかった。ステーキ屋で“水沼のポジションは確保しておくから”と言われて入社したのになァ(笑)。

 

二宮: アハハハ。当時の日産は金田喜稔さん、木村和司さんらが主力で層は厚かった。

水沼: 周りのレベルの高さ、自分の未熟さを痛感しました。入社して、“レギュラーになるのは簡単ではないな”と、改めて感じました。

 

二宮: いつ頃からレギュラーに?

水沼: 入団した年の12月の天皇杯でチャンスが巡ってきました。途中から出場して得点を決めて、少しずつ出場時間が増えました。

 

二宮: この年、日産は初めて天皇杯を制したんですよね。

水沼: 決勝ではヤンマーに2対0で勝って初タイトルを獲りました。実はこの試合、ヤンマーの選手兼監督、釜本邦茂さんの最後の公式戦だったんです。

 

二宮: 当時の新聞を読むと、釜本さんは後半8分から途中出場しています。有終の美を飾るゴールはありませんでしたが、誰もが引退を惜しみました。日本代表として76試合に出場し75得点。メキシコ五輪では得点王になるなど世界的なストライカーでした。

水沼: 僕も釜本さんに憧れていた時期がありました。リーグ戦でも対戦したのですが、その時は芸能人を見るような感じで“うわぁ、釜本だぁ!”と思いましたよ。オーラが別格でした。

 

二宮: これは元読売クラブ(現東京ヴェルディ)でプレーしていた加藤久さんから聞いた話です。「釜本さんを削りに行ったら、逆に自分の足を痛めてしまった。大木のような足だった」と。

水沼: とにかく釜本さんのフィジカルの強さは抜きんでていました。本当に体が強かった。それでいてシュートが抜群にうまいんです。あんなFWはなかなか出てこないでしょうねぇ。

 

 涙のJリーグ開幕戦

 

二宮: 1993年、Jリーグの誕生で日本サッカーは大きくかわりました。日産は横浜マリノスになりました。水沼さんは何歳でしたか?

水沼: 1993年は33歳になる年でした。僕は30歳くらいでサッカーを止めようと思っていたんです。でも、Jリーグができると聞いて、何とか開幕するまでは現役としてプレーを続けたい、歴史を肌で感じたいと思い必死にトレーニングに励みました。

 

二宮: 5月15日、Jリーグの開幕カードはヴェルディ川崎対横浜マリノス。会場の国立競技場には約6万人もの観客が入りました。

水沼: 前日のトレーニングからメディアの数が多くて驚きました。普段と雰囲気がまったく違っていた。前日にスタメンだと伝えられ、夜は寝られたのか寝られなかったのかさえ、覚えていないんです。

 

二宮: そこまで緊張されていたとは……。

水沼: ホテルから国立競技場までバス移動だったのですが、大勢の人が僕たちのバスを見ているんです。“あぁ、注目されているんだ。オレたちはこういう環境でプレーできるんだ”と気持ちが高まったことを今でも、鮮明に覚えています。

 

二宮: 過酷なトレーニングをこなしてまで、引退を伸ばした甲斐があったと?

水沼: ええ。ウォーミングアップを終えてロッカールームに戻る時、ヴェルディの加藤久さんと「頑張ろうな」と握手をした瞬間に2人とも、もう泣いてしまいましたよ。

 

二宮: 開幕セレモニーはレーザー光線を使った派手な演出でした。取材していた私も興奮したことを覚えています。

水沼: 僕もメインスタンド下の入場口付近から見ていました。綺麗でしたよね。そしてTUBEのギタリスト・春畑道哉さんのギターが素晴らしかった。

 

二宮: あの「Js Theme」はよかった!

水沼: あれで感動してまた泣いてしまった(笑)。シャワールームで顔を洗ってから入場したんです。きついトレーニングを頑張って、現役引退を伸ばして本当によかったと思いました。

 

二宮: 試合はヴェルディのヘニー・マイヤーに先制ゴールを決められますが、マリノスはエバートン・ノゲイラとラモン・ディアスのゴールで逆転勝ちを収めました。

水沼: ディアスのあのゴールはね、思い入れが強いんですよ。

 

二宮: 当時の取材ノートを持ってきました。井原正巳さんが木村和司さんにミドルパスを送る。木村さんがヘディングで水沼さんに落とす。水沼さんがドリブルから相手DF2人をかわしてシュート。GKが弾いたところをディアスが押し込んだゴールでした。

水沼: このグラスが井原、木村さん、そして僕。『木挽BLUE』のボトルがディアスです(笑)。これからの日本サッカーを背負う井原。今まで日本リーグを支えてきた木村さんと僕にボールが渡る。最後は“今後、世界レベルの選手たちがJリーグに来てくれるだろうか”という不安がある中で、世界的ストライカーのディアスが決めてくれた。これまでの日本サッカーの歴史をつくってきた選手とこれからの日本サッカーを背負う選手たちで繋いで奪った得点だったんです。だからとても感慨深かった。

 

「最後は気持ちじゃろ!」

 

二宮: まさに歴史的なゴールだったわけですね。さて、ここからは現役時代のお酒にまつわるエピソードを伺います。当時は酒豪がいましたね。代表的なのは木村さん。

水沼: お酒が大好きでしたね。でも、木村さんは飲んでもちゃんと結果を出すところがすごいんですよ。

 

二宮: 昔のサムライですね。

水沼: 現役時代に、木村さんと飲んでいて痺れる言葉を頂いたんです。

 

二宮: どんな言葉ですか?

水沼: 合宿の宿舎で飲んでいた時だったと思うのですが……。部屋に集まってみんなで飲んでいたんです。当然サッカーの話になったのですが、木村さんが「最後は気持ち、気持ちじゃろ!」と、広島弁でいったんです。

 

二宮: 木村さんは広島市出身ですからね。

水沼: 木村さんはピッチでも、そしてお酒の席でも「サッカーは自分がどれだけ頑張れるか、勝ちたいと強く思えるか。全ては気持ちなんだ」と教えてくれました。

 

二宮: 日産の監督だった加茂周さんもお酒が好きでしたね。

水沼: 加茂さんも結構、飲んでいました。加茂さんは選手のモチベーションをあげるのが抜群にうまかった。天皇杯の決勝の時でした。複数回、天皇杯を優勝していたから選手も決勝独特の緊張感や雰囲気はわかっていた。そうなると同じようなミーティングをしても、なかなか効果が出ないんです。

 

二宮: その状況下で加茂さんはどうしたのですか?

水沼: 当日、選手を集めてメンバーを発表した。そして選手たちの顔を見渡して「……今日は大丈夫」と一言。それで終わりです。

 

二宮: 戦術的なこととかは何も言わなかった?

水沼: 何も言わなかったですね。全員の顔を見渡しただけで、「今日は大丈夫、お前ら、いける」と。

 

二宮: 痺れるシーンですね。

水沼: すごい監督だと思いました。「よしっ! オレたちはいける!」と士気が高まりました。

 

二宮『木挽 BLUE』を飲みながらサッカーの話をしていると、時間があっという間に過ぎていきます。

水沼: もうアディショナルタイムですか?(笑)

 

二宮: 最後に『木挽 BLUE』をサッカー選手に例えると誰でしょうか。

水沼: うーん、僕じゃないですか?

 

二宮: おおっ!? それはなぜ? テーブルの料理に自在に合わせられるテクニシャンということでしょうか。

水沼: それそれ(笑)。それと芋焼酎なのにすごく爽やか。僕も昔は爽やか系と言われていましたから(笑)。

 

二宮: アハハハ(笑)。今も爽やかですよ。また『木挽 BLUE』を飲みながらサッカー談義をやりましょう。

水沼: ぜひ、お願いします。冬はお湯割りで飲みたいですね!

 

(おわり)

 

水沼貴史(みずぬま・たかし)プロフィール>

1960年5月28日、埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。本太中学では3年時に全国制覇を経験。浦和南高校に進学すると1年時からレギュラーを獲得し、全国高校サッカー選手権優勝に貢献した。法政大学サッカー部を経て、1983年に日本サッカーリーグ(JSL)日産自動車サッカー部(横浜F・マリノスの前身)に入部。ドリブルを武器にウイングや攻撃的MFとして活躍した。95年に現役引退。A代表デビューは1984年。現在は解説者として活躍中。JSL、Jリーグ通算203試合、38得点。国際Aマッチ32試合、7得点。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回、水沼貴史さんと楽しんだお酒は芋焼酎「木挽BLUE(ブルー)」。宮崎の海 日向灘から採取した、雲海酒造独自の酵母【日向灘黒潮酵母】を使用し、宮崎・綾の日本有数の照葉樹林が生み出す清らかな水と南九州産の厳選された芋(黄金千貫)を原料に、綾蔵の熟練の蔵人達が丹精込めて造り上げました。芋焼酎なのにすっきりとしていて、ロックでも飲みやすい、爽やかな口当たりの本格芋焼酎です。

 

提供/雲海酒造株式会社

 

<対談協力>

おとら

東京都港区西麻布2-13-12

TEL:03-6451-1355

 

営業時間

月~土 17:00~翌5:00(L.O.翌4:00)

日・祝 17:00~23:00(L.O.22:00)

 

☆プレゼント☆

 

 水沼貴史さんの直筆サイン色紙を本格芋焼酎『木挽BLUE』(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はこちらのメールフォームより、件名と本文の最初に「水沼貴史さんのサイン色紙希望」と明記の上、下記クイズの答え、郵便番号、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)を明記し、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストをお書き添えの上、お送りください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は5月10日(木)。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。

 

◎クイズ◎

 今回、水沼貴史さんと楽しんだお酒の名前は?

 

 お酒は20歳になってから。

 お酒は楽しく適量を。

 飲酒運転は絶対にやめましょう。

 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

 

(写真・構成/大木雄貴)


◎バックナンバーはこちらから