17日、プロ野球セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第2戦が行われ、レギュラーシーズン1位の巨人と、同3位の広島が対戦した。試合は3回に寺内崇幸の一発で、巨人が3点を先制する。投げては先発の菅野智之が完璧なピッチングを披露し、広島打線をわずか3安打に抑えての完封勝利をあげた。巨人は日本シリーズ進出まで、あと1勝とした。

◇ファイナルステージ第2戦
 ルーキー・菅野、11奪三振完封(巨人3勝0敗、東京ドーム)
広島   0 = 000000000
巨人   3 = 00300000×
勝利投手 菅野(1勝0敗)
敗戦投手 前田健(0勝1敗)
本塁打  (巨)寺内1号3ラン
「チームにとっていい勝利」。巨人の原辰徳監督は、淡々と試合を振り返ったが、今季15勝を挙げた広島のエース・前田健太を負かしての1勝は、ただの1勝以上の価値があった。ルーキーが相手エースを上回るピッチングを見せ、打っては“脇役”の活躍で勝利した。

 ファイナルステージ初戦を落とした広島は、巻き返しを図り、前田を中4日で起用。12日、阪神とのファーストステージ第1戦では、血マメができても7回1失点と好投し、エースとしての仕事を全うした。この日も1、2回と、巨人の重量打線を無失点に抑えたが、3回に手痛い一発を浴びる。

 3回裏、先頭の亀井義行が初球をセンター前へ弾き返し、出塁する。次の菅野が送りバントを確実に決め、得点圏にランナーを進めた。1番の長野久義が四球を選び、1死一、二塁のチャンスで寺内に打順が回ってきた。代替選手として今季のオールスターに出場した守備のユーティリティープレーヤー。バッティングは決して得意ではない寺内はバントの構えや、バスターを仕掛けて、マウンド上の前田を揺さぶった。「いいピッチャーなので、甘い球だけを絞った」と、カウント1−2からの4球目、寺内は少し中に入ったスライダーに巧くバットを合わせた。フラフラと上がった打球はレフトスタンド最前列に吸い込まれた。「まさか入るとは思わなかった。ファンの一押しで入った」と、本人も驚くホームラン。伏兵の一発で巨人が大きな先取点を手にした。

 一方、抜群の立ち上がりを見せたのは、今季13勝をあげたドラフト1位ルーキーの菅野。「とにかく気持ちだけは負けない」と、最初から飛ばしていった。初回、先頭の丸佳浩を外角のシュートで見逃し三振を奪うと一気にリズムに乗った。昨日4安打と好調の菊池涼介からはインローのシュートで空振り三振に仕留め、一発のある3番のキラ・カアイフエをサードフライに打ち取った。

 2、3回も三振の山を築き、スコアボードにゼロを並べていった。テンポ良く球を放る菅野にバックも援護。4回表、丸のセンターへのライナー性の当たりを、長野が背走して好捕した。5回には木村昇吾の二遊間を抜けそうな打球に寺内が追い付いて、華麗なジャンピングスローでアウトを取った。菅野は6回1死までノーヒットピッチング。代打・天谷宗一郎にボテボテの内野安打を許したが、その後も崩れることなく8回終了まで毎回の11三振を奪った。

 シャットアウトまで、あと3アウトと迫った菅野。しかし、9回1死を取った後、丸、菊池の1、2番コンビに連打を許し、キラにはこの日初めてのフォアボールを出してしまう。1死満塁、一発が出れば逆転されるピンチ。「少し緊張したが、後悔だけはないように」と開き直った。4番のブラッド・エルドレッドを内角のシュートでファーストへのファウルフライに打ち取ると、5番の梵英心はフォークでセンターフライに仕留めた。24歳のルーキーは9回を被安打3に抑え、鯉打線を109球で料理した。シーズン中もなしえなかった完封をポストシーズンで成し遂げた。

 第1戦をエースで負けなかった巨人に対し、第2戦をエースで落とした広島。広島にとっては明日以降、引き分けすらも許されない絶体絶命の窮地に追い込まれた。16年ぶりのAクラス、初のCSでのファイナルステージ進出。ここまでの赤ヘル旋風は、ペナントを独走した巨人にとっては、そよ風に過ぎなかったのか。まずは明日の第3戦をなんとか取って、大逆転に向けて風向きを変えたい。