四国アイランドリーグplusは前期のクライマックスが近づいてきた。8シーズン、優勝から遠ざかっている高知ファイティングドッグスは、9年ぶりの栄冠に向けて目下、2位(5月15日終了時点)。香川オリーブガイナーズを1.5ゲーム差で追いかけ優勝争いを展開中だ。入団以来、「頂点」を経験していない新キャプテンの山下和則に話を聞いた。新戦力の多い若いチームをまとめるベテランのVにかける思いとは?

 

 言葉よりプレーで引っ張りたい

 高知ファイティングドッグスは今季、10人以上の新戦力を迎え若返りました。新キャプテンとして若い選手たちをまとめる役割を期待されていると思いますが、元々、あまり声を出すタイプじゃないんです。だから言葉よりもプレーでチームをまとめて引っ張っていけたらいいな、と思っています。

 

 僕は高校卒業後、専門学校を2年経てから高知に入団しました。高校、専門学校と野球を続けてきて、やはりまだ野球を続けたいという気持ちが残っていたんですね。入ってみて真っ先に思ったのは環境の良さです。よく「独立リーグは厳しい環境」と言われますが、1日中野球のことだけを考えられるのは自分にとって最高でした。まあ生活面での厳しさはありますが……。

 

 高知に入っていろいろな方と出会い、そして学んできました。阪神に復帰した藤川球児さんは野球に対する情熱がとても強かったのを覚えています。人気球団の阪神にいて、それでメジャーリーグも経験した人からすれば、アイランドリーグではモチベーションが沸かないと思うんですよ。でも藤川さんは「絶対にNPBに復帰する」という強い信念を持って高知で真剣にプレーしてきた。一緒にやってすごく刺激を受けましたね。

 

 昨季、チームメイトだったマニー・ラミレスのバッティングはインパクトの音が今まで聞いたことのないようなもので驚きました。これまで見てきた誰とも違っていて、ポイントが体に非常に近くて腰を鋭く回す。なんていうか常人とはレベルが違ってましたね。駒田徳広監督が「マニーはスパイクの履き方を見せるだけでも勉強になる」と言ってたんですか? そうですね、超一流のプロの立ち居振る舞いというのを見られたのは貴重な体験でした。

 

 駒田監督からは「2ストライクに追い込まれたら考え方を変えろ」と教わっています。どのカウントでもバットを同じように目いっぱい持つのではなく、追い込まれた短く持つんだ、と。とにかく「こうすれば勝てる、こうすれば打てる」という引き出しをたくさん持っている方ですね。巨人でレギュラーを張っていただけに言葉に説得力があります。

 

 今季、うちの打線は助っ人に頼っていた昨季までと異なり日本人が中心です。その分、チーム全体に「自分たちがやるんだ」という雰囲気が出てきています。

 

 僕は高知に入団してから優勝を経験していません。振り返れば高校時代もベスト16までだったし、やっぱり優勝というものを味わってみたいんです。昨季、勝てば優勝という試合で敗れるなど、V目前で悔しい思いをしました。本当は優勝できなかった時点で、ユニホームを脱ごうと考えていたんです。でもこのチームで優勝を経験しないで辞めるのはイヤだな、と。目標は絶対に優勝、そして独立リーグ日本一です。

 

 今季のチームスローガンは「勝男(かつお)」です。僕たちの勝つ姿を見に球場にいらしてください。イキのいい野球をお見せしますので、応援よろしくお願いいたします。

 

<山下和則(やました・かずのり)プロフィール>
1993年2月26日、山口県出身。野球を始めたのは小学校3年のとき。小学生時代はピッチャー、中学からキャッチャーに転向した。青嶺高(現・美祢青嶺高)時代は秋季県大会16強がベスト。高校卒業後、専門学校の九州総合スポーツカレッジに進学。2年後、四国アイランドリーグのトライアウトを受験し、高知ファイティングドッグスに入団。6年目の今季、キャプテンに就任した。身長170センチ、体重72キロ。右投右打。


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