24日、都内のホテルでNPB(日本プロ野球機構)の「新人選択会議」(ドラフト)が行なわれた。最も注目された最速149キロ左腕の松井裕樹(桐光学園)は、5球団が競合の末に東北楽天が交渉権を獲得した。3球団が競合した大学No.1右腕の大瀬良大地(九州共立大)は広島が交渉権を獲得。社会人No.1右腕の吉田一将(JR東日本)は、オリックスが単独指名に成功した。
 3日前、杜の都で宙に舞った闘将が満面の笑みを浮かべた――。
昨夏の甲子園で2年生ながら1試合22奪三振の大会記録をマークし、一躍“時の人”となった松井。最速149キロの直球とキレ味抜群のスライダーを武器とするサウスポーを1位指名したのは、楽天、中日、福岡ソフトバンク、横浜DeNA、北海道日本ハムの5球団。その中で松井の交渉権を獲得したのは、楽天だった。

「星野監督に行けと言われて……」。昨年同様、球団の命運を握るクジを引く役割を担当したのは、立花陽三球団社長だった。“残りものには福がある”とばかりに、5球団最後に引いたクジが“当たり”だったのだ。立花球団社長が引き当てたクジを示すように右手を高く掲げると、星野監督はニンマリ。嬉しさを隠しきれない様子で、これ以上ない笑顔を見せた。

 楽天は今季、創設9年目にして初のリーグ優勝を達成。千葉ロッテとのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージを制し、26日からは巨人との日本シリーズに挑む。今ドラフトの最大の目玉であった松井の交渉権獲得で、初の頂上決戦に勢いをつけたかたちとなった。

 阪神、広島、東京ヤクルトの3球団が競合したのは、150キロ超の直球を武器とする大学生No.1投手の大瀬良だ。クジの結果、大瀬良の交渉権を獲得したのは、今季は16年ぶりにAクラス入りし、初めてCS進出を果たした広島だった。

 2日後に迫った日本シリーズではV9時代以来となる連覇を狙う巨人が1位指名したのは、細身ながら150キロの直球を武器とし、制球力にも定評のある石川歩(東京ガス)。今年の都市対抗ではベスト8進出の原動力となり、日本代表では抑えを務め、東アジア競技大会で金メダル獲得に貢献するなど、今季最も飛躍した右腕だ。しかし、今年は巨人の単独指名とはいかなかった。ライバルとなったのは千葉ロッテ。抽選後、笑顔を見せたのはロッテの伊東勤監督だった。

 単独指名に成功したのはオリックスと埼玉西武だった。オリックスはアマNo.1投手の呼び声高い191センチの長身右腕・吉田を1位指名。競合すると予想された吉田だったが、クジなしでオリックスが交渉権を獲得した。また、西武は昨年、藤浪晋太郎(阪神)の女房役として春夏連覇に貢献し、今年の18U世界野球選手権では最多打点をマークした森友哉(大阪桐蔭)の一本釣りに成功した。

 外れ1位で競合したのは高卒3年目の21歳右腕・柿田裕太(日本生命)。最速145キロの直球に多彩な変化球を織り交ぜたピッチングで、9月の練習試合では吉田一将と投げ合い、5安打8奪三振で完封勝ちを収め、評価が急上昇した。阪神、DeNA、日本ハムが指名し、クジの結果、DeNAに交渉権が与えられた。阪神と日本ハムは、さらに柿田同様にドラフト直前で評価を上げたサウスポー岩貞祐太(横浜商大)でも競合。“3度目の正直”となったのは、阪神だった。日本ハムは走攻守三拍子そろった渡辺諒(東海大甲府高)を指名した。

 松井を外した福岡ソフトバンクと、大瀬良を外したヤクルトがともに外れ1位で指名したのが安定感抜群で即戦力として期待される杉浦稔大(国学院大)。交渉権を獲得したのはヤクルトだった。ソフトバンクは地元出身の152キロ右腕・加治屋蓮(JR九州)を指名した。

 落合博満GM、谷繁元信新監督の新体制が注目される中日は、183センチの長身から繰り出す最速143キロの直球とフォークが武器の右腕・鈴木翔太(聖隷クリストファー高)の交渉権を獲得した。久々に単独指名がかなわなかった巨人は、守備に定評のある社会人No.1捕手の小林誠司(日本生命)を指名した。

<交渉権獲得決定選手>

巨人
【1位】
 小林誠司(日本生命・捕手)※石川の外れ指名
【2位】
 和田恋(高知高・内野手)
【3位】
 田口麗斗(広島新庄高・投手)
【4位】
 奥村展征(日大山形高・内野手)
【5位】
 平良拳太郎(北山高・投手)
【育成1位】
 青山誠(日本大・外野手)
【育成2位】
 長江翔太(大阪経済大・投手)
【育成3位】
 北之園隆生(秀岳館高・投手)

東北楽天
【1位】
 松井裕樹(桐光学園高・投手)
【2位】
 内田靖人(常総学院高・捕手)
【3位】
 濱矢廣大(Honda鈴鹿・投手)
【4位】
 古川侑利(有田工高・投手)
【5位】
 西宮悠介(横浜商大・投手)
【6位】
 横山貴明(早稲田大・投手)
【7位】
 相原和友(七十七銀行・投手)
【8位】
 相沢晋(日本製紙石巻・投手)
【9位】
 今野龍太(岩出山高・投手)

阪神
【1位】
 岩貞祐太(横浜商大・投手)※大瀬良、柿田の外れ指名
【2位】
 横田慎太郎(鹿児島実高・投手)
【3位】
 陽川尚将(東京農業大・内野手)
【4位】
 梅野隆太郎(福岡大・捕手)
【5位】
 山本翔也(王子製紙・投手)
【6位】
 岩崎優(国士舘大・投手)

埼玉西武
【1位】
 森友哉(大阪桐蔭高・捕手)
【2位】
 山川穂高(富士大・内野手)
【3位】
 豊田拓矢(TDK・投手)
【4位】
 金子一輝(日大藤沢高・内野手)
【5位】
 山口嵩之(トヨタ自動車東日本・投手)
【6位】
 岡田雅利(大阪ガス・捕手)
【7位】
 福倉健太郎(第一工業大・投手)

広島
【1位】
 大瀬良大地(九州共立大・投手)
【2位】
 九里亜蓮(亜細亜大・投手)
【3位】
 田中広輔(JR東日本・内野手)
【4位】
 西原圭大(ニチダイ・投手)
【5位】
 中村祐太(関東一高・投手)

千葉ロッテ
【1位】
 石川歩(東京ガス・投手)
【2位】
 吉田裕太(立正大・捕手)
【3位】
 三木亮(上武大・内野手)
【4位】
 吉原正平(日本生命・投手)
【5位】
 井上晴哉(日本生命・内野手)
【6位】
 二木康太(鹿児島情報高・投手)
【育成1位】
 肘井竜蔵(北条高・捕手)

中日
【1位】
 鈴木翔太(聖隷クリストファー高・投手)※松井の外れ指名
【2位】
 又吉克樹(四国IL香川・投手)
【3位】
 桂依央利(大阪商業大・捕手)
【4位】
 阿知羅拓馬(JR東日本・投手)
【5位】
 祖父江大輔(トヨタ自動車・投手)
【6位】
 藤澤拓斗(西濃運輸・内野手)
【育成1位】
 岸本淳希(敦賀気比高・投手)
【育成2位】
 橋爪大佑(大阪商業大・内野手)

福岡ソフトバンク
【1位】
 加治屋蓮(JR九州・投手)※松井、杉浦の外れ指名
【2位】
 森唯斗(三菱自動車倉敷オーシャンズ・投手)
【3位】
 岡本健(新日鐵住金かずさマジック・投手)
【4位】
 上林誠知(仙台育英高・外野手)
【育成1位】
 石川柊太(創価大・投手)
【育成2位】
 東方伸友(浜田商高・投手)
【育成3位】
 曽根海成(京都国際高・捕手)
【育成4位】
 張本優大(佛教大・捕手)

横浜DeNA
【1位】
 柿田裕太(日本生命・投手)※松井の外れ指名
【2位】
 平田真吾(Honda熊本・投手)
【3位】
 嶺井博希(亜細亜大・捕手)
【4位】
 三上朋也(JX-ENEOS・投手)
【5位】
 関根大気(東邦高・外野手)
【6位】
 山下峻(松本大・投手)
【育成1位】
 砂田毅樹(明桜高・投手)
【育成2位】
 萬谷康平(ミキハウスREDS・投手)

オリックス
【1位】
 吉田一将(JR東日本・投手)
【2位】
 東明大貴(富士重工・投手)
【3位】
 若月健矢(花咲徳栄高・捕手)
【4位】
 園部聡(聖光学院高・内野手)
【5位】
 吉田雄人(北照高・外野手)
【6位】
 奥浪鏡(創志学園高・内野手)
【7位】
 柴田健斗(BC信濃・投手)
【8位】
 大山暁史(セガサミー・投手)
【育成1位】
 東弘明(四国IL徳島・内野手)

東京ヤクルト
【1位】
 杉浦稔大(国学院大・投手)※大瀬良の外れ指名
【2位】
 西浦直亨(法政大・内野手)
【3位】
 秋吉亮(パナソニック・投手)
【4位】
 岩橋慶侍(京都産業大・投手)
【5位】
 児山祐斗(関西高・投手)
【6位】
 藤井亮太(シティライト岡山・捕手)

北海道日本ハム
【1位】
 渡辺諒(東海大甲府高・内野手)※松井、柿田、岩貞の外れ指名
【2位】
 浦野博司(セガサミー・投手)
【3位】
 岡大海(明治大・内野手)
【4位】
 高梨裕稔(山梨学院大・投手)
【5位】
 金平将至(東海理化・投手)
【6位】
 白村明弘(慶應義塾大・投手)
【7位】
 岸里亮佑(花巻東高・外野手)
【8位】
 石川亮(帝京高・捕手)