「新生UWFが誕生して今年で25年。何かイベントでもやりたいですね」
 僕は、プロレス記者にこんな話をふってみた。

 プロレス界に一石を投じ、現在の総合格闘技の礎を築いた第二次UWFは、1988年5月に後楽園ホールで産声をあげた。あれから四半世紀も経ったことになる。

「あ~、もう、そんなに経ちますか?」
 その年月の長さに記者も目を丸くしていた。

 僕は今年、Uの選手を集めて簡単なトークイベントでも手掛けたいと思ってみたものの、なかなか実現にはいたらなかった。現在、ミヤマ☆仮面として、子どもたちに夢を与える仕事に没頭しているため、UWFに情熱を傾けるのは、やはり難しいことであった。

 そんな中、かつてのUWF戦士である船木誠勝選手と長井満也選手の対決が、初代タイガーマスクが主催するリアルジャパンプロレスで実現することとなった。

 9月28日、僕は会場である後楽園ホールへ開始2時間前に到着していた。自分が試合をするわけではないのにこんなにも早く会場へ向かうほど、僕は興奮しまくっていたのである。

 船木選手はUの時代に一番お世話になった先輩であり、長井選手に関しては、Uの頃の同期生なのだ。そんな2人の初対決だからこそファン以上に注目していたのである。

 当人同士は、おそらく僕以上の感情に支配されていたのだろう。それは客席から見ていても手に取るように伝わってきた。リングに登場した両者の表情がものすごいからだ。

「うわっ! 長井さんの目がヤバイ……」
 何より長井選手の気合の入り方がハンパではなかった。長井選手は、練習生の頃に首を骨折してしまい、UWFでデビューを果たせなかった過去がある。
 
 当時、Uのエースとして大活躍していた船木選手との対戦は、やはり特別なものがあるのだろう。彼はゴングが鳴る前から、これまで見たことのないような形相で船木選手に歩み寄っていた。

 試合の立ち上がりは、ピリピリとした緊張感に包まれ、打撃の牽制から始まった。シュートボクシング出身であり、K-1にも出場経験のある長井選手の打撃を船木選手が警戒しているように映った。

 それを払拭するかのように船木選手の方から積極的に手数を出していった。素早いローを左右へ散らし、ミドルキックを放ったが、腰が入っていない。おそらくリーチのある長井選手のカウンターを恐れていたのが原因と思われる。

 相手の蹴りをさばくことの多かった長井選手だったが、試合途中に放った変則的な軌道のハイキックは意表をついていて、ヒヤリとした。これは空を切ったものの、会場がざわつくほどインパクトのあるキックであった。

「初対決だったので、2人とも慎重になり過ぎたのかも。もっと自分から大胆に仕掛けていけば良かったよ」
 長井選手が試合後に振り返った通り、お互い、もう一歩踏み込みが足りない展開となった。

 しかし、それがかえって大きな緊張感を生み、観客を試合にグイグイ引き込んでいった。グランドの展開に移ると今度は船木選手の方がコントロールし、主導権を握っているように見える。常に一本を狙ったようなグランドの攻防がいい。

 プロレスとは明らかに違う、それでいて総合ではない、UWF独特の空気感がそこには漂っていた。あの時代にタイムスリップしたようなノスタルジーをかきたてられた。

 試合は、タッグマッチということもあり、最後は船木選手の必殺技に長井選手が沈んだ。
「再戦? ぜひともまたやりたいな。船木さんはプロレスムーブのできるU系選手の方が持ち味を出せる」

 長井選手は、心から再戦を望んでいるようだった。この言葉を聞いて僕は嬉しくなった。

 UWFは、1990年に3派に分裂してしまった。船木選手は、藤原組からパンクラス、長井選手はリングス、僕はUインターへとバラバラになり、その後、交わることがなかったのだ。

 それが長い時を経て、再び肌を合わせるのだからプロレスは大河ドラマである。時間がすべてを解決してくれる特効薬なのだと改めて思う。

 それを知っているプロレスファンは、四半世紀が経っても辛抱強くUWFの復活を願っている。もちろん、引退してしまった選手も多く、これは不可能に近い話かもしれない。だが、もう一度集まる機会をつくれないかと思わずにはいられない。

「そうそう、船木さんは垣原君と会いたがっていたよ。試合で絡んでくれないかなとも言ってたな」
 長井選手は、船木選手の言葉を僕に伝えてくれた。掌底コンビとしてタッグを組むのも面白そうだが、リングではない違った形でのコラボができればと思っている。

 僕は、ミヤマ☆仮面として、来年、面白い仕掛けを考えている。そのため、レスラーとしての準備はできそうにない。さすがに引退して、7年も経っているのだから、体だって動かないはずだ。

 ただ、試合は難しくても、UWFのハッピーエンドをプロデュースできないかと思案している。UWFが崩壊してから25年にあたる2015年には、全選手でバンザイしている光景をかつてのUWF信者と呼ばれたファンにぜひ見せてあげたい。

(今月より、このコーナーは毎月第4金曜日に更新します)
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