5月は内川聖一の通算2000本安打達成や松坂大輔が2勝目をマークするなど話題豊富でした。29日からセ・パ交流戦も始まりますが、まずは内川2000本から振り返りましょう。

 

 懐が深く"嫌なバッター"

 私のブログ「佐野慈紀のピッカリブログ」にも書きましたが、内川とは彼がドラフト1位に指名された当時から付き合いがありました。あれから18年で偉業達成、しかもずっと第一線、バリバリのレギュラーで活躍しているのだから驚きですね。

 

 彼のすごいところはどの球に対しても反応してバットを出せること。スイングしたときに迷いがないので、ピッチャーが投げたどの球種、コースに対しても強いスイングができるんです。対戦するピッチャーとしてはこれほど嫌なバッターはいないでしょうね。懐も深いし、狙い球を決めたら少々際どいボールでも迷いなく打つんですから。迷いがないということはバットの軌道がブレないし、投球に対してしっかりアジャストできるということです。

 

 それにしても彼ほどのバッターでもプレッシャーはあるんですね。2000本にあと1本と迫ってからはなかなかヒットが出ませんでした。私はそういう大記録とは無縁だったので気持ちは察するしかありませんが、やはり相当な重圧だったのでしょう。でも内川はそういう状態でもバットの出は悪くなかった。長期のスランプには陥らないタイプのように思えます。いずれにしても球史に名を残す右打者として2000本をゴールとせず、これからもまだまだ活躍してほしいですね。

 

 松坂はケガや肩痛の影響でここ数年は思うように投げられなかった。それが今季はこれまでの経験をフルに活用して、ゲームを作ろうという姿勢が見えていますね。本人もようやく戦える場、1軍のマウンドに帰ってこられたことで気持ちも乗っているのでしょう。

 

 ベテランというと語弊がありますが、松坂のピッチングは熟練の技ですね。全盛期のような豪速球があるわけでもないのに、相手打者に狙い球を絞らせずにイニングを重ねる姿には大人のピッチングという言葉がぴったりです。中日の若手投手にも松坂の姿勢はいい影響を与えるでしょうね。

 

 清宮vsセ投手陣

 29日から始まる交流戦は、両リーグともに優勝争い、クライマックスシリーズ争いに残れるかどうか、最初のハードルになります。昨季までは"パ高セ低"とリーグ間の格差が話題でしたが、今季はリーグというよりもチームに勢いがあるかどうか。それが勝敗の分かれ目だと思います。

 

 パ・リーグ首位の埼玉西武は開幕からの勢いがここにきてちょっと落ちてきているので、交流戦で再び流れをつかめるかがポイントです。北海道日本ハムと福岡ソフトバンクはセ・リーグを叩くことで、獅子の尻尾を早くつかまえたいところでしょう。

 

 セ・リーグは上位3チームの広島、巨人、横浜DeNAと、Bクラスの中日、阪神、東京ヤクルト。この上下3チームの格差が交流戦でより明確になるかもしれません。特に打線が湿ったままの阪神は交流戦でつまずくと、そのままズルズルと落ちてしまうこともあるでしょうね。同じことはパ・リーグ最下位の東北楽天にも言えます。楽天は投手のローテーションをどうするのか、則本昂大ら計算できるピッチャーをどこに当てるのかなど詳細ははっきりしませんが、この交流戦が正念場です。各球団、決め手を欠く状況で迎える今季の交流戦。これでシーズンの大筋が見えてくるでしょうね。

 

 そして今季の交流戦ではやはり清宮幸太郎に注目です。セ・リーグ球団のファンも見たいでしょうし、リーグの異なる新しい投手と対戦することで、彼がどうアジャストするのかが楽しみです。大物ルーキーの適応力、対応力なども要チェックです。

 

image佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商高で甲子園に出場し準優勝を果たす。卒業後に近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日、エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)、ロサンジェルス・ドジャース、メキシコシティ(メキシカンリーグ)、エルマイラ・パイオニアーズ、オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。


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