プロ野球はセ・パ交流戦が終了し、セ・リーグの東京ヤクルトが最高勝率チームになりました。ヤクルトはこれからペナントレースのダークホースとして注目です。

 

 阪神は混セから脱落?

 ヤクルトの好調の要因は抑えの石山泰稚を筆頭にしてゲーム終盤を任せるピッチャーが安定したこと。もともと打力はあるチームだったので、ゲーム後半の失点を防げるようになれば上がってくるのは当然。交流戦を終えてセ・リーグ5位ですが、首位・広島までは4.5ゲーム差。混セの主役になりそうです。

 

 広島はヤクルトとは反対に中継ぎ陣が安定しません。開幕前から「三連覇は厳しい」と言っていたのは、投手陣の"勤続疲労"を心配してのことでした。さらに連覇したことで他球団のマークも厳しくなり、当然、研究もされている。その状況にあって、特に配球を変えたという印象もないので、これからさらに厳しい戦いになるのではないかと見ています。調子の良いピッチャーと悪いピッチャーの差が激しい印象ですね。

 

 交流戦を終えてセ・リーグは各チームの優劣がはっきりしてきました。前述のヤクルトの他、巨人、横浜DeNAはオールスターまでにさらに上位にくるでしょう。DeNAはホセ・ロペス、梶谷隆幸がケガで2軍という飛車角落ちの状態なのが気になりますが、彼らが戻ってくるまでどこまで頑張れるか、それがカギになります。

 

 混セにあって阪神だけが、この後もまだ苦労しそうです。力のある選手はいますが、まだベテランの福留孝介、糸井嘉男頼みというチーム編成で、とにもかくにも若手の奮起が求められます。個々で見ればヒットも打つし、出塁もしますがつながりを欠いて"打線"になっていません。

 

 パ・リーグは開幕前に「楽しみな存在」と言っていたオリックスがグッと出てきました。アンドリュー・アルバースら先発陣が安定したことに加え、増井浩俊が後ろにいて発展途上のリリーフ陣を支えているのが大きい。中継ぎでは山本由伸、黒木優太、澤田圭佑らに今後、注目したいところです。

 

 千葉ロッテは井口資仁監督が「いい野球をしているな」という印象です。走塁の意識を高めるなど、井口流の野球も浸透してきて前半戦の残り、そして後半戦に向けて上位に食い込んでくると予想します。

 

 交流戦の終盤、東北楽天の梨田昌孝監督が辞任しました。昨シーズンは外国人選手の大胆な起用がハマッた感じですが、楽天はチームとしてなかなか一皮むけない印象です。茂木栄五郎、オコエ瑠偉などイキのいい若手はいるんですが、彼らがどうも伸びてこない。梨田監督は若い選手を乗せてその気にさせることに長けているんですが、それでもうまくいかなかった。平石洋介監督代行は2軍監督の経験もあるので、若手選手たちと近い存在です。若手のモチベーションを上げて、如何にその気にさせるかが最大のテーマでしょう。

 

 どなたかがおっしゃっていた「50勝30敗」というどこに根拠があるのかわからないノルマは気にすることなく、平石代行には楽天のランクアップのために頑張ってほしいですね。

 

 最後にメジャーリーグの話を少しだけ。ダイヤモンドバックス平野佳寿は予想通りの活躍です。やはりフォークボールを決め球にするピッチャーはアメリカの堅いマウンドが合うんですね。足を踏ん張ってしっかりと腕が振れますから。メジャーのセットアッパーなんて特徴がないと生き残れない厳しい世界。その点、平野のフォークはカウントも稼げるし、空振りもとれる一級品。これからどんどん勝ちゲームを任されることになると思います。これぞプロフェッショナルという活躍は同じセットアッパーとして鼻が高いですね。

 

 苦労しているのはパドレスの牧田和久。今はマイナーに落ちていますが、牧田にとってここが正念場です。サブマリンで高低で揺さぶるのが持ち味ですが、もうそれは研究されているのでしょう。ボールを左右に散らしてみるとか、もっといやらしいピッチングをして、もう一度メジャーのマウンドに戻ってきてもらいたいですね。

 

image佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商高で甲子園に出場し準優勝を果たす。卒業後に近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日、エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)、ロサンジェルス・ドジャース、メキシコシティ(メキシカンリーグ)、エルマイラ・パイオニアーズ、オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。


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