実はまだ、自分の中での結論が定まっていない部分がある。凡人には推し量りがたい、とてつもない深謀遠慮が隠されているのではないか。どこかでそう思いたがっている自分がいる。

 

 このままでいけば、被害は甚大である。すでにイメージダウンは甚だしい。現役学生の中からは就職への影響を懸念する声が上がっている。おそらくは来年度の志望者も減少するだろう。「存亡の危機」という言葉も、あながち大げさではなくなってきた。

 

 彼らが何か手を打つたびに、世間の怒りには油が注がれている。となると、これは意図的なのか? 日本には珍しい「危機管理学部」を持つ大学ゆえの、壮大な実験なのか? この逆境を見事乗り越えれば、学部、ひいては大学の評価は間違いなくあがる。学生は全国民が注目する“事件”を内側から観察することができる。素晴らしい。実に素晴らしい……と思いたがっている自分がいる。

 

 まさか、いくらなんでも、と。

 

 さて、W杯に出場する日本代表23人の発表まであと1週間である。先日はそれに先立って27人の名前が発表されたが、そのときの率直な感想も「まさか、いくらなんでも」だった。

 

 14年の本田は、香川は、岡崎は、間違いなく南アフリカのときよりも成長していた。チームとしての熟成も、少なくとも現在のチームよりは進んでいた。

 

 それでも、勝てなかった。

 

 18年の本田は、香川は、岡崎は、ブラジルのときよりも成長しているだろうか。4年前に足りなかったものを、そしてチームづくりに時間がほとんどないという大きなハンデを補えるぐらい、化けてくれているだろうか。

 

 残念ながら、わたしの答えは「ノー」。だが、西野監督は「イエス」との結論に達したということなのだろうか。だから、4年前のチームにはいなかったスペシャリストを加えるでもなく、ある一つのチームを母体として考えるのでもなく、時計の針を4年前に逆転させたとしか思えないメンバーにしたのだろうか。

 

 スペインの2部でほとんど出番のなかった井手口と、ハンブルクで大車輪の活躍を見せた伊藤。そこで前者を選ぶ理由がわたしにはわからない。

 

 スピードの生かし方をつかんだ感のある永井(FC東京)や、札幌で硬質な強さを発揮している都倉、中村俊輔を彷彿(ほうふつ)とさせるFKを連発している天野(横浜)などが候補にすら入らなかったのもわからない。G大阪の今野を「入れたかった」というのもわからない。正直言って、まったく、わからない。

 

 ポリバレントな選手は必要だが、それがスペシャリストを排除する理由とされるとは!

 

 最終メンバーの発表まではまだ時間がある。だからきっと、ここから世間をアッと言わせる一手が用意されているはず……と思いたがっている自分がいる。

 

 まさか、いくらなんでも、と。

 

<この原稿は18年5月24日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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