(写真:表彰式でトロフィーを掲げるキャプテンの正中<前列中央>と優勝を喜ぶA東京の面々)

 男子バスケットボールリーグ「B.LEAGUE」のCHAMPIONSHIP 2017-18(CS)のファイナルが26日、神奈川・横浜アリーナで行われた。東地区2位のアルバルク東京が同地区優勝の千葉ジェッツふなばしを85-60で下し、初優勝。準優勝の千葉は全日本総合選手権に続く、今シーズン2冠はならなかった。CSのMVPはファイナルで15得点を挙げたSG田中大貴が受賞した。

 

 カーク、両軍最多の23得点で優勝に貢献(横浜アリーナ)

アルバルク東京 85ー60 千葉ジェッツふなばし

【第1Q】19-18【第2Q】24-15【第3Q】18-16【第4Q】24-11

 

 変化のA東京vs.進化の千葉ーー。2シーズン目のB.LEAGUEの頂上決戦はそんな様相を呈していた。

 

(写真:赤に染まったアリーナ。リーグ最多の1万2005人が詰め掛けた)

 A東京は指揮官が代わり、PG安藤誓哉、PG小島元基、Cアレックス・カーク、SF馬場雄大ら多くの新戦力が加わった。日本リーグ、NBL時代から名門として国内を牽引してきた自負がある。初代王者を栃木ブレックスに奪われた危機感に現れにも映った。厳しい練習を課すことで知られるルカ・パヴィチェヴィッチHCの指導の下、A東京は激しいディフェンスがチームカラーとなった。

 

 一方の千葉はチームカルチャーの醸成にこだわった。大野篤史HCが続投し、持ち味の走るバスケットに磨きをかけた。新加入のPFギャビン・エドワーズ、SFアキ・チェンバースらは千葉のフィロソフィーに合う選手たちだ。司令塔の富樫勇樹、キャプテンのSF/PF小野龍猛を中心に堅守速攻のトランジションオフェンスを展開し、リーグNo.2の得点力(1試合平均84.5点)を誇った。

 

 激戦区と言われた東地区で優勝争いを繰り広げた両チーム。ファン、ブースターたちの期待値も高く、決戦の舞台となった横浜アリーナには昨シーズンを上回るリーグ最多の1万5002人が入場した。A東京と千葉のチームカラーが赤ということもあり客席は赤く染まった。

 

(写真:豪快なダンク3本叩き込み、スクリーンでは味方のスペースをつくったカーク)

 先制したのは千葉だった。ディフェンスからの速攻。富樫のパスからPFマイケル・パーカーが決めた。するとA東京も田中が切れ込んでレイアップでやり返す。第1Qは競り合いが続いた。A東京はカークが豪快なダンクを2本叩き込むなど9得点。千葉はエドワーズが走力と高さを生かし、7得点を挙げた。19-18とA東京がわずかに1点リードで第1Qを終えた。

 

 第2QはA東京のピック&ロール(ボールを持っているプレーヤーをスクリーンでフリーにする)が威力を発揮。カーク、PF/C竹内譲次らがつくるスペースを田中、安藤などのガード陣が切り込む。得点を重ねる。激しいディフェンスで千葉のミスも誘い、徐々にスコアが離れていった。PFジャワッド・ウィリアムズのブザービーターが決まり、43-33と10点差で試合を折り返した。

 

(写真:富樫は7得点5アシスト。攻撃を牽引したがチームを勝利に導くことはできず)

 全日本総合との2冠に燃える千葉も小野のスリーポイント(3P)などで点差を詰めたが、得意の速攻は鳴りを潜めた。加えてもう1つの武器である3Pの成功率が上がらない。第3Q終了時は16.7%。点差はさらに開いた。第4Qには馬場が10得点の大暴れ。エドワーズのブロックをかわす鮮やかなダブルクラッチ、スティールから豪快なダンクと持ち味を存分に発揮し、勝負を決めた。

 

 終わってみれば85-60でA東京が25点差をつけた。千葉の大野HCは「ターンオーバーが多くリズムに乗れず自分たちを苦しめてしまった」と敗因を挙げた。「今シーズン、自分たちがやってきたことが表現できなかった」。速攻からの得点は4点、3Pの成功数は4本のみだった。

 

 千葉の武器を封じたのはA東京のディフェンスだ。CSのMVPに輝いた田中は「相手を苦しめたディフェンスの勝利だと思います」と口にすれば、正中は「どっちに転ぶか分からないタフな試合。自分たちが信じてきたことをやり通すことができた」と胸を張る。

 

(写真:審判に抗議するパヴィチェヴィッチHC。熱血漢で知られる)

 パヴィチェヴィッチHCは試合後のミーティングで「共に戦って優勝できたこと。HCとして感謝している」と選手たちに伝えたという。敗れた千葉の大野HCも「心残りがないと言ったら嘘になるが、ここまできた選手たちを誉めてあげたい。成長のプロセスを一緒に進んでこれたことを光栄に思います」と語った。

 

 互いの誇りをぶつけ合った両チーム。この日の軍配はA東京に上がったが、千葉は全日本総合で2連覇と着々と力をつけている。パヴィチェヴィッチHCは「まだプロセス。伸びしろがある」と語ったようにA東京とて完成形ではない。来シーズンも赤がリーグを熱狂させる主役となるのか。

 

(文・写真/杉浦泰介)