20日、欧州遠征中の日本代表はベルギー・ブリュッセルのボードワン国王スタジアムでベルギー代表と対戦し、3−2で勝利した。日本は前半15分、MFケビン・ミララスに先制点を奪われた。しかし、そこから徐々にボールを支配してベルギーを押し込むと、38分、FW柿谷曜一朗のゴールで追いついた。後半は開始から主導権を握り、8分にMF本田圭佑のゴールで逆転。18分にはMF岡崎慎司が決めてリードを広げた。その後、1点差に詰め寄られたが、守備陣が体を張った守りで踏ん張り、2013年最終戦を白星で飾った。

  本田、右足で2試合連続弾(ボードワン国王スタジアム)
ベルギー代表 2−3 日本代表
【得点】
[ベ] ケビン・ミララス(15分)、トビー・アルデルワイレルト(79分)
[日] 柿谷曜一朗(38分)、本田圭佑(53分)、岡崎慎司(63分)
「結果もうれしいが、内容がいい試合で自分たちのサッカーができた」
 口調は冷静ながら、本田は満足気な表情だった。16日のオランダ戦後に多くの選手が口にしたのは、“勝ち切れなかった”こと。そこから中2日、FIFAランキング5位のベルギーからしっかりと勝利を収めた。

 日本は前半1分、ミララスにシュートを打たれるなど、序盤からホームのベルギーに押し込まれた。
 最後のところで体を張り、相手の攻撃を跳ね返していた日本だが、15分、稚拙な守りから先制点を奪われてしまう。俊足のFWロメロ・ルカクに左サイドを抜け出され、PA外まで飛び出してきたGK川島永嗣がかわされてゴール前に折り返される。DF酒井高徳がカバーに入っていたが、背後から詰め寄ってきたミララスに気付かず、ボールを拾われて無人のゴールに流し込まれた。オランダ戦に続いてミスから失点を喫した。

 嫌な流れになりかけたが、日本も徐々に攻撃のかたちをつくり、反撃していった。30分、左からのショートコーナーでつなぎ、本田がPA手前から縦パスを入れる。受けた香川がドリブルで仕掛け、左足で狙ったが左ポストを直撃した。
 攻勢を強める日本が追いついたのは38分、柿谷がゴールを奪った。本田が右サイドでボールを受けると、オーバーラップしてきたDF酒井宏樹へスルーパス。ダイレクトでゴール前に上がったクロスを、柿谷が頭で叩き込んだ。柿谷は代表戦で7試合ぶりのゴール。オランダ戦で得点した大迫勇也とのワントップ争いは今後、さらに混沌となりそうだ。

 勢いに乗りたい日本は45分にも決定機を迎える。カウンターから柿谷が左サイドに抜け出し、ドリブルでキープしてからボールを中央に戻す。攻め上がってきたMF長谷部誠が右足を振り抜くが、これはGKに右手1本で阻まれた。前半のうちに逆転することはできなかったものの、流れを引き寄せて試合を折り返した。

 日本は後半開始からMF山口螢、MF清武弘嗣に代わって、MF遠藤保仁、岡崎がピッチに入った。この交代策が的中した。遠藤は長短のパスで攻撃にリズムを生み出し、岡崎は裏への動き出しでベルギー守備陣を押し下げた。

 後半8分には逆転に成功した。遠藤が左サイドでボールを受けると、すぐに中央の本田へ横パス。本田は左足でコントロールしてから、右足でのシュートをゴール左に突き刺した。
 18分には、岡崎が追加点を奪った。長谷部が右サイドから中にボールを運び、PA内中央の柿谷へ。柿谷がワンタッチで前方に出した浮き球を、岡崎が右足でゴール左に決めた。日本の鮮やかな攻撃に、ベルギーサポーターで埋まったスタジアムは一瞬、静寂に包まれた。

 このまま快勝ムードで終わりたかった日本だが、ベルギーの高さを生かしたシンプルな攻撃からピンチを招く。34分、右CKをDFトビー・アルデルワイレルトにヘディングで合わせられた。フリーで打たせてしまったシュートに、好守を見せていたGK川島も反応できなかった。

 1点差に詰め寄られた日本は、37分、香川を下げてMF細貝萌、40分には酒井高に代えてDF今野泰幸を投入。守備的な選手を増やし、逃げ切りをはかった。守備の意識を強めた日本は、守備陣を中心に体を張った守りで同点弾を許さない。4分のアディショナルタイムも耐え抜き、4試合ぶりの白星を手にした。

「2失点したが、3失点目は許さないというぎりぎりの試合をできたのは良かった」
 本田がこう語ったように、1点差に詰め寄られてから崩れなかったことは評価できる。オランダ戦も2点を先制されたが、そこから盛り返し、勝利にあと一歩まで迫った。アルベルト・ザッケローニ監督も「こういう経験をするためにヨーロッパまで来た」と語り、強豪と互角以上に渡り会った今回の遠征結果に手応えを感じているようだ。

 それでも指揮官は「(連敗した)10月の状態に陥らないようにプレーしていかなければいけない」と気を引き締めることも忘れなかった。本田も「(W杯まで)所属クラブに戻って個人のレベルを上げていくことが必要」と更なるレベルアップを誓った。重要なのは、W杯で結果を出せるかどうか。そのために、ベルギーの地で示した成長を止めるわけにはいかない。