サッカーロシアW杯グループG第1節が19日(日本時間)、ヴォルコグラードで行われた。イングランド代表がチュニジア代表に2対1で競り勝った。イングランドは前半11分、FWハリー・ケインのゴールで先制。35分にPKで追いつかれたものの、試合終了間際にケインが決めた。

 

 エースで主将のケイン、CKから2ゴール(ヴォルゴグラード)

チュニジア 1-2 イングランド

【得点】

[チ] フェルジャニ・サシ(35分)

[イ] ハリー・ケイン(11分、90+1分)

 

 若き才能が集うイングランド。チュニジアに苦戦を強いられたが、エースの2発に救われた。

 

 24歳のキャプテン・ケインを筆頭に、彼と2トップを組むラヒーム・スターリングは23歳。攻撃的MFの一角を担うデル・アリは22歳だ。ゴールマウスを守るジョーダン・ピックフォード、守りの要ジョン・ストーンズはともに24歳である。平均年齢26歳のイングランドは3-3-2-2のフォーメーションを敷いた。

 

 イングランドは前回大会1勝もできずにグループリーグ(GL)敗退した。雪辱に燃えるサッカーの母国。しかし、チュニジアの守護神ムエズ・ハセンが立ちはだかった。前半3分、イングランドはペナルティーエリア内でデル・アリがボールを奪い、MFジェシー・リンガードにパスを送る。リンガードは右足で合わせたが、ハセンに左足で防がれる。直後のCKではMFジョーダン・ヘンダーソンが頭で叩きつけて、ゴールを狙うもののハセンに弾き出された。

 

 4分にはデル・アリがドリブルで持ち出し、リンガードへスルーパス。DFラインの裏に抜け出したリンガードはグラウンダーで中へ折り返す。GKはリンガードに反応して飛び出したため、ゴールはほぼガラ空き。しかしパスはスターリングにうまくタイミング合わず枠を外れた。序盤からチャンスをつくりながらも決め切れない。

 

 すると、ここでエースが仕事を果たす。11分、左のCKを得たイングランド。キッカーのMFアシュリー・ヤングがライナー性のボールを放り込むと、ファーサイドでストーンズが頭で合わせた。ハセンに一度は弾かれたが、ケインが押し込んだ。イングランド・プレミアリーグで4年連続20得点以上を挙げているエースの先制ゴールで勢いに乗るかと思われた。

 

 そして15分にはチュニジアに追い討ちをかけるようなアクシデントが起こる。再三ファインセーブを見せていたハセンが左肩を痛めてピッチから去った。涙を流すハセンにチュニジアの選手たちが慰める。流れは完全にイングランドに傾いてもおかしくはない。

 

 しかし、イングランドは追加点を奪うどころかチュニジアに追いつかれた。33分、DFカイル・ウォーカーがマークをしていたMFファレディン・ベン・ユセフにヒジを当ててペナルティーエリア内で倒してしまう。レフェリーは迷わずPKを宣告。ウォーカーにはイエローカードが与えられた。MFフェルジャニ・サシのキックをGKピックフォードは右手で触れたものの、ゴールラインを割った。

 

 その後もイングランドは攻勢を仕掛ける。39分にはセットプレーからDFハリー・マグワイアが頭で折り返し、デル・アリがバックヘッドで繋いだ。ゴール前で混戦となり、そのこぼれ球をスターリングがオーバーヘッドを試みるが、ヒットしない。さらにこぼれたボールにストーンズが左足で合わせたものの、ミートせずゴール左に大きく外れた。

 

 前半終了間際には右ウイングバックのキーラン・トリッピアーの縦パスにリンガードが反応した。飛び出してきた相手GKより先にボールに触れる。しかし転がるボールの行く先は右ポスト。枠外に弾かれた。結局、前半は1対1のまま終了した。

 

 後半もボールをキープし、押していたのはイングランドだった。だが、なかなか好転しない状況にガレス・サウスゲイト監督が動く。23分に20歳のマーカス・ラッシュホード、35分には21歳のルベン・ロフタス=チークを投入。スピードのあるラッシュホード、上背があり力強いロフタス=チークで前線に厚みを持たせる。最終ラインからストーンズもオーバーラップして攻撃に参加。人数をかけて敵陣に迫ったものの、ゴールは遠かった。

 

 チャンスすらつくれず時計の針は進んでいくばかり。引き分けが頭を過る後半のアディショナルタイム、試合は動いた。右CKを得たイングランドはヤングが放り込む。マグワイアが競ると、ファーサイドにボールが流れる。ここにフリーで待っていたのがケイン。ヘディングでニアサイドを撃ち抜いた。今大会の得点王候補に挙げられるエースが、1人決定力の高さを見せつけた。

 

 苦しみながらも競り勝って、勝ち点3を獲得したイングランド。内容は良くなくとも2大会ぶりの白星を挙げたことで、勢いに乗る可能性はある。次節はパナマ戦。グループG最大のライバルと目されるベルギーとの最終節を前に、勝ち点を積み上げたい。

 

(文/杉浦泰介)