“チームのために最も貢献した魂あふれるプレー”に贈られるNPBの「ジョージア魂賞」では、先日、2013年度の年間大賞が東北楽天・田中将大投手に決定しました(8月16日、対埼玉西武、新記録の21連勝を打ち立てた魂の投球)。また当HP編集長・二宮清純ら6名の選考委員による選考委員特別賞は巨人・菅野智之投手に贈られています(4月13日、対東京ヤクルト、好守備でチームに勝利をもたらせた投球)。

(写真:まさに2013年は田中のシーズンと言える1年だった)
 今季、ジョージア魂賞を選ぶファン投票を実施していた「ジョージア ベースボールパーク」のサイトでは、二宮清純の書き下ろしコラム「アナザースピリット 〜 チームを支える魂のプレー〜」のコーナーを連載してきました。コーナーでは惜しくも受賞は逃したものの、二宮が印象に残ったノミネートプレーを中心に毎月1回ペースで選び、コラムを執筆しています。

 2013年のラストを締めくくるにあたり、最新コラムではジョージア魂賞の対象ではない監督、コーチ、スタッフの中から、チームのために貢献した采配や仕事ぶりについて取り上げました。二宮が今季、最も印象に残ったのは千葉ロッテ・伊東勤監督のチームをAクラスに押し上げた人材マネジメント術です。ぜひサイトにアクセスしてコラムをお楽しみください。

 また当サイトでは特別に、前回更新された年間大賞の田中投手に関するコラムを紹介します。

 東北楽天・田中将大「“魂の化身”の3419球」

 マー君で明け、マー君で暮れた1年だった。

 球団創設9年目で、初の日本一を達成した東北楽天の大エース田中将大の今季の成績を改めて記しておこう。レギュラーシーズンでは28試合に登板し、24勝0敗1セーブ、防御率1.27。リーグ優勝、クライマックスシリーズ制覇、日本一と節目の試合の最後のマウンドには、すべて田中が立っていた。

 とりわけ印象に残るのがリーグ優勝を決めた敵地での埼玉西武戦だ。田中がマウンドに上がったのは4対3と1点リードで迎えた9回裏だった。1死二、三塁と一打逆転サヨナラのピンチを招いたが、ランナーを背負ってから本領を発揮するのが田中だ。西武が誇る3、4番の栗山巧と浅村栄斗を真っ向勝負のストレートで連続三振に切ってとった。最後はまさに“マー君劇場”だった。

 開幕から勝ち続けた田中は開幕連勝の日本記録(15連勝)とともに、“神様・仏様”と並び称された稲尾和久らが保持していた通算連勝記録(20連勝)をも塗り替えた。ちなみに彼がつくった24の貯金は、チームの貯金を1つ上回っていた。

 今回、ジョージア魂賞年間大賞に選ばれた8月16日の西武戦では、立ち上がりの無死二、三塁を切り抜けると8回を1失点。連勝を21に伸ばし、“神様・仏様”超えを果たした。

 試合後、辛口で鳴る星野仙一監督が田中に限ってはベタ褒めだった。
「もう、あいつには称賛の言葉はない。言い尽くした」
「稲尾さんはタフで針の穴を通すコントロールを持った人で鉄腕と呼ばれた。将大は何と呼ぼうか。プラチナだな」

 では、18.44メートルをはさんで対峙した他球団の強打者の目に今季の田中は、どう映っていたのか。まずは千葉ロッテの井口資仁。
「ランナーのいない時は打っていますけど、(ランナーが)得点圏にいると、なかなか打たせてくれませんね。突然、ギアが入るんです。たとえコントロールミスをしても、絶対に長打にならないコースに投げてくる。
 それにスプリット(高速で落ちる変化球)がいい。去年くらいから完全にマスターしましたね。そしてスライダー。以前はスラーブのような(大きな)曲がりだったんですが、今はカットボール気味にギュッと滑る」

 続いて今季限りでユニホームを脱いだ山崎武司。2年前までは楽天でプレーしていた。
「彼はアクセントのつけ方が巧い。ランナーがいない時は、7割ぐらいの中でスイスイ投げていますが、ランナーが得点圏にいくと、ガラッと変わる。もうガキ大将みたいな顔になっていますよ。
 でも、僕はこれでいいと思うんです。場面場面でメリハリを付けないと長いイニングは投げられません。負けてもおかしくない試合もありましたが、それでも試合が終わったら逆転して彼が勝ち投手になっている。これこそは仲間からの信頼感の表れですよ」

 若くしてレジェンドの仲間入りを果たした田中将大。今季、レギュラーシーズン、クライマックスシリーズ、日本シリーズを通じて投じたボールは実に3419球。それは彼の闘志の結晶であると同時に、魂の化身でもあった。


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