25日(現地時間)、サッカーロシアW杯グループB最終節がカリーニングラードで行われ、スペイン代表がモロッコ代表を2対2で引き分けた。スペインは前半14分、FWカリド・ブタイブに決められて先制を許した。19分にイスコのゴールで追いついたものの、後半36分にセットプレーからモロッコに勝ち越される。試合終了間際にCKからFWイアゴ・アスパスの得点で再び追いついた。スペインは勝ち点5でポルトガルと並んだが、総得点の差でグループB首位通過を決めた。

 

 意表突くショートコーナーから同点弾(カリーニングラード)

スペイン 2-2 モロッコ

【得点】

[ス] イスコ(19分)、イアゴ・アスパス(90+1分)

[モ] カリド・ブタイブ(14分)、ユセフ・エン=ネシリ(81分)

 

 前々回の王者・スペインがなんとかグループリーグ(GL)を突破した。

 

 1勝1分けの勝ち点4で迎えたスペインの最終節。1トップに2試合連続ゴール中のジエゴ・コスタを起用した。引き分けでも決勝トーナメント進出が決まる。対戦相手はここまで2連敗で、既にGL敗退が決まっているモロッコだ。

 

 しかし、スペインは連係ミスから先制を許した。14分、自陣でボールを持ったMFイニエスタがDFセルヒオ・ラモスとうまくコミュニケーションがとれずにボールをブタイブに奪われ、大ピンチを招いた。ブタイブに独走され、GKダビド・デ・ヘアとの1対1に。ブタイブは冷静にデ・ヘアの股を抜くシュートを決める。スペインはいきなりビハインドを負った。

 

 それでも地力に勝るスペインは5分後に追いつく。イスコがコスタにボールを預けると、コスタはペナルティーエリア内左のイニエスタにはたく。ワンタッチで縦へと突破したイニエスタは右足アウトサイドでマイナスのクロスを折り返す。ペナルティーエリア内に侵入していたイスコはボールを足元に収めると、GKの動きを見てゴール左上を打ち抜いた。鮮やかなパスワークからスコアをタイに戻した。

 

 しかしDFラインが不安定なのか簡単に裏を取られた。25分にはロングスローで、再びブタイブに抜け出される。ここはデ・ヘアが好セーブで難を逃れた。43分にはミドルレンジからMFハキム・ジイェフにシュートを打たせてしまう。枠の上に外れたが、スペインはボールは支配しながらモロッコに押されるシーンも目立った。後半10分にはMFノルディ・アムラバトのミドルシュートがクロスバーを叩いた。エンドが変わっても守備の不安は付きまとった。

 

 攻撃ではボールを回しながらチャンスを窺った。17分、右からのクロスにイスコが頭で合わせる。シュートはゴール右に吸い込まれていったが、ゴールラインを割る前にDFロマン・サイスにヘディングでクリアされた。直後のCKでDFジェラール・ピケがヘディングシュートを放ったものの、ゴール左に外れる。スペインはなかなか2点目が奪えない。

 

 フェルナンド・イエロ監督は29分にアスパスをコスタに、MFチアゴ・アルカンタラをマルコ・アセンシオに代えた。2枚替えで打開を図ったが、勝ち越し点を決めたのはモロッコだった。36分、右CKからMFナビル・ディラールが放り込むと、ユセフ・エン=ネシリが高い打点からのヘディングシュートをゴール右に突き刺した。スコアは1対2――。このまま敗れても他会場のポルトガルvs.イランの結果次第ではGL突破の可能性も残すが、痛い失点だった。

 

 イエロ監督は39分にMFダビド・シルバに代えてFWロドリゴを投入。前線の枚数を増やし、同点を狙う。試合終了間際、スペインはカウンターからアスパス、ロドリゴが絡んでCKを獲得した。右CKをアセンシオがリスタート。モロッコが守備陣形を整える前に、右サイドバックのダニエル・カルバハルがクロスを入れる。アスパスはヒールで合わせてゴールネットを揺らした。

 

 ところが、判定はアスパスのオフサイド。ノーゴールかと思われたが、ここでビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)によりジャッジは覆る。一転してアスパスの得点が認められた。モロッコの選手たちは猛抗議。映像を確認する限りオフサイドはギリギリなかった。VARの“アシスト”により、スペインは土壇場で追いつくことに成功した。

 

 試合はこのままタイムアップ。スペインはGL首位通過を果たした。一方のモロッコにとってはW杯で20年ぶりの白星がスルリと手からこぼれていったかたちだ。大会前からモロッコをグループBの上位に予想する者は少なかった。1分け2敗で終わったが、3戦通じて好勝負を演じて見せた。強豪相手にも勇敢に立ち向かい、存在感を示した。

 

(文/杉浦泰介)