27日(現地時間)、サッカーロシアW杯グループF最終節がカザンで行われ、ドイツ代表が韓国代表に0対2で敗れた。ドイツは前半、ボールを圧倒的に支配しながらゴールが遠かった。後半に入り、シュートの雨を降らせたものの、その精度を欠く。アディショナルタイムに2点を奪われ、完封負けを喫した。ドイツはグループF最下位に転落。前回王者のグループリーグ(GL)敗退という波乱が起きた。

 

 今大会初白星で波乱を演出(カザン)

韓国 2-0 ドイツ

【得点】

[韓] キム・ヨングォン(90+3分)、ソン・フンミン(90+6分)

 

 優勝、準優勝、3位がいずれも4回。安定した強さを誇るドイツが、GLで姿を消すこととなった。

 

 初戦を落としたドイツは、第2節はスウェーデンに辛くも勝利を収めた。勝ち点3の暫定2位で最終節を迎えた。前節レッドカードのDFジェローム・ボアテングを出場停止で欠いたが、中盤のメスト・エジル、トニ・クロース、マルコ・ロイスらが揃ってスターティングメンバーに入った。ワントップは3戦連続でティモ・ヴェルナーを起用した。

 

 試合はドイツがボールを保持し、攻勢を仕掛ける。対する韓国はカウンターから活路を見出すといった展開となった。19分にはMFチョン・ウヨンがブレ球のFKでGKマヌエル・ノイアーのファンブルを誘う。こぼれ球にFWソン・フンミンが詰めようとしたが、ここは間一髪、ノイアーがボールをかき出した。

 

 ドイツも39分にセットプレーからチャンスをつくる。右CKでクロースがクロス。ファーサイドに流れたボールをヴェルナーが中に折り返すと、DFマッツ・フンメルスがシュートを打った。今度は韓国のGKチョ・ヒョヌが身体を張って、セービング。両国の守護神の活躍で前半はスコアレスで終えた。

 

 前半を終えた時点で、同時刻にキックオフした同組のメキシコvs.スウェーデンも0対0の同点だった。このままのスコアで試合が終わると、メキシコが勝ち点7でトップを守る。ドイツはスウェーデンと勝ち点4で並ぶが、得失点差で2位。辛うじて決勝トーナメントには進める。

 

 後半に入っても、ポゼッションのドイツとカウンターの韓国という構図は変わらない。2分、ドイツはクロースが右サイドにボールを展開。右サイドバックのヨシュア・キミッヒのクロスにMFレオン・ゴレツカが頭で合わせたものの、チョ・ヒョヌが弾き出した。大会前は第3GKと見られていた男が、韓国ゴールを守り抜いた。

 

 ドイツはその後も攻勢を続けた。しかし、守りを固める韓国を崩し切れない。ドイツベンチは13分にFWマリオ・ゴメスを投入し、ヴェルナーのポジションをサイドに移した。18分にはMFトーマス・ミュラーをピッチに送り込み、打開を図った。ただ全体的にシュートの精度を欠いた。19分にCKからペナルティーエリア内でヴェルナーがシュートを放ったが、枠を外す。

 

 韓国のカウンターで冷や汗をかく場面もあった。ここはフンメルスらセンターバックが最後の最後で身体を張って止める。ノイアーもペナルティーエリアを敢然と飛び出してスイーパー的役割で守備陣をフォローした。

 

 後半30分までで他会場のスウェーデンが3点のリードを奪った。このままではスウェーデンが2位に浮上し、ドイツは3位に陥落する。そのためにはドイツは何としてでも、この試合で勝ちを収めなければならなくなった。それを選手たちが知っていたかは分からないが、シュートの精度は低く、焦り色がありありと見えた。

 

 42分には右サイドでボールを持ったエジルが、左足でゴールに迫るクロスを放り込んだ。それにフリーで合わせたフンメルスは首を振り過ぎて、ボールは肩に当たった。シュートはバーの上を越えていった。

 

 ドイツはシュートの雨を降らせるもゴールに実らない。すると土壇場で勝利の女神が微笑んだのは、韓国にだった。アディショナルタイム、左CKからのこぼれ球がクロースに当たる。これがオフサイドポジションにいたキム・ヨングォンの足元に渡り、ゴール右に決められた。一度はオフサイドの判定が下されたが、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)により、リプレー検証を行った。レフェリーはゴールを認めて、待望の先制点は韓国に入った。

 

 後がなくなったドイツはノイアーが敵陣まで上がるパワープレーを仕掛ける。しかし、ノイアーに預けたボールをMFチェ・セジョンに奪われる。チェ・セジョンは自陣から無人のゴールとなっている敵陣へロングパス。これをセンターサークル付近から猛ダッシュしたソン・フンミンが追いつき、ゴールに流し込んだ。ドイツにとって絶望的な2点目が入り、勝負は決した。

 

 韓国は最後に意地を見せた。勝ち点3を奪って、大番狂わせを演出した。負けたドイツは32カ国・地域が出場する現行方式になってから初のGL敗退。決定力不足に悩まされ、絶対的エースの不在を感じさせた。また前回王者が決勝トーナメント進出を逃したのは、南アフリカW杯のイタリア、ブラジルW杯のスペインに続き、3大会連続となった。

 

(文/杉浦泰介)