(写真:今年のマイヨ・ジョーヌは誰の手に渡るのか ©Yuzuru SUNADA)

 世界最大のサイクルロードレース「ツール・ド・フランス」の季節がやってきた。今年はサッカー・ロシアW杯の日程を考慮し、例年よりも1週間遅れの7月7日にスタートする。そこから3週間、21ステージを駆け抜け、7月29日に大会はフィナーレを迎える。

 21ステージのコース総距離3329km。スタート地点はフランス西部のペイ・ド・ラ・ロワール地方で、そこから時計回りにフランス各地を周回し、アルプス山脈、ピレネー山脈を攻める。期間中の休息日は、わずか2日間だ。

 

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 石畳コースが復活

 

 今年のツールは国際自転車競技連合(UCI)が採用した新ルールの下で行われる。参加選手の上限が176人になり参加22チームの1チーム選手数は9人から8人と1人少なくなった。ルール変更の目的は、これまでよりも小さな集団となることで障害物との接触のリスクが下がり、安全性が向上すること。そしてもうひとつ。1チームが突出した強さを発揮することを避け、よりスリリングな展開をファンに提供することにある。

 

 前哨戦のツール・ド・スイス(6月9日~17日)では、リッチー・ポート(BMCレーシングチーム)が総合優勝を飾り、総合2位にはヤコブ・フグルサング(アスタナ・プロチーム)が入った。ポートは昨年のツールは山岳コースの第9ステージで落車し、負傷リタイアを喫した。今年はその雪辱に燃える。フグルサングは課題だったタイムトライアル能力もアップし、こちらも昨年の落車リタイアから一転、上位進出を狙う。

 

 ツール4連覇を狙うクリス・フルーム(チーム・スカイ)にとって心強いのが、ゲラント・トーマス(同)の存在だ。トーマスはクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ(6月3日~10日)で総合優勝を飾り、タイムトライアルと山岳ステージの両方でスピードを見せつけた。オールマイティさに磨きがかかり、ツール本番ではチームのエースであるフルームのアシスト役を務める。

 

 今年のツールは21ステージ中、難関山岳コースが6ステージあり、そのうち3つが山頂フィニッシュとなる。スタートから2日間は平坦コースを進み、3日目にチームタイムトライアルが組み込まれた。ショレの町で行われる35kmのタイムトライアルは、総合優勝を狙う上でも落とせないステージとなる。

 

 その後、レースは第6ステージで中間山岳コースに入り、選手たちを3年ぶりに復活したミュール・ド・ブルターニュの登坂フィニッシュが待ち受ける。入り口の勾配約10%、フィニッシュ手前2kmの平均勾配は約7%。いわば"激坂"で各選手がもがくようなバトルは見逃せない。

 

 3年ぶりに復活といえば、第9ステージにはパヴェ(石畳)ステージが設定された。今年のパヴェ総距離は21.7km。14年は雨に見舞われ大荒れとなったが、今年は果たしてどんな展開となるのか。チームが擁するパヴェ巧者を追走し、より上位を目指すエースたちの忍耐強い走りにも注目したい。

 

 ここでツール一行は飛行機でアヌシーへ移動、最初の休息日を迎える。そして翌日からアルプスの本格的な山越えステージがスタートする。

 

 第10ステージには未舗装路があり、第11、第12ステージは2日連続して山頂フィニッシュとなる。特に第12ステージは2000m級の峠を2つ越えるステージ設定で、各チームともアグレッシブな走りで上位進出を期す。

 

 史上初登場の難所

 

 第13ステージは平坦コースだが、その後の第14、15ステージはフランス中央山塊を抜ける中級山岳ステージが用意されている。第14ステージの山頂フィニッシュは残り3kmから10%を超す勾配が選手の前に立ちはだかる。第15ステージは3つの峠を超え、最後はフィニッシュに向けてのダウンヒル。上りは根性、下りは勇気――。第15ステージのフィニッシュはサイクルロードレーサーたちの勇気とスピードに酔いしれたい。

 

 2回目の休息日を挟み、第16ステージは総距離218Kmの山岳ステージだ。最後の70kmで3つの峠を越えるコース設定で、フィニッシュ手前の約10kmはダウンヒルとなる。総合優勝を狙う選手とっては下りで一気に攻勢に転じるステージでもある。翌日の第17ステージは距離こそ65kmと短いものの、今ツール最大の難関と言われている。

 

 スタート直後から登り始めるコースはペイルスルド、ヴァル・ルーロン・アゼと2つの峠を越え、その後、平均勾配8.7%、登坂距離16kmという最大の難所ポルテを迎える。史上初登場の難所での上位争いは熾烈を極めるだろう。

 

 第18ステージでトリ・シュル・バイズからポーへ向かう172kmの平坦コースを戦った一行は、いよいよ最後の山岳ステージの第19ステージを迎える。ステージ中盤にトゥールマレー峠を越え、フィニッシュまでは約20kmのダウンヒルだ。得意の下りで一気に攻勢に出るダウンヒラーたちのアタックに注目したい。

 

 個人タイムトライアルの第20ステージは、31kmのアップダウンに富んだコース設定となる。激しい起伏に満ちたコースはタイムトライアル巧者のスプリンターにとっても一筋縄ではいかない設定で、クライマーも上位に顔を出す。最終ステージを前に最後のデッドヒートを繰り広げる。

 

 迎えた最終日、第21ステージは恒例のパリ・シャンゼリゼ大通りでの凱旋パレードランだ。大集団によるスプリントフィニッシュで3000km超のツールはクライマックスを迎える。

 

 フランス各地を巡る「ツール・ド・フランス」は、国中に夏の訪れを告げるイベントでもある。マイヨ・ジョーヌの行方とともに、新緑がまぶしい初夏のフランスの風景も目に焼きつけたい。

 

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ツール・ド・フランス 放送予定】(放送はすべてJ SPORTS4で生中継)

 

第1ステージ 7月7日(土) 17:35~翌0:15

第2ステージ 7月8日(日) 20:55~翌2:00

第3ステージ 7月9日(月) 21:45~翌2:00

第4ステージ 7月10日(火) 20:55~翌2:15

第5ステージ 7月11日(水) 20:55~翌2:00

第6ステージ 7月12日(木) 20:55~翌2:00

第7ステージ 7月13日(金) 20:55~翌2:00

第8ステージ 7月14日(土) 20:55~翌0:15

第9ステージ 7月15日(日) 20:55~翌0:45

第10ステージ 7月17日(火) 19:50~翌2:30

第11ステージ 7月18日(水) 20:35~翌1:45

第12ステージ 7月19日(木) 18:45~翌2:15

第13ステージ 7月20日(金) 20:55~翌2:00

第14ステージ 7月21日(土) 20:55~翌2:00

第15ステージ 7月22日(日) 20:55~翌2:15

第16ステージ 7月24日(火) 20:55~翌1:45

第17ステージ 7月25日(水) 21:40~翌2:00

第18ステージ 7月26日(木) 20:55~翌2:15

第19ステージ 7月27日(金) 20:55~翌2:15

第20ステージ 7月28日(土) 18:35~翌1:45

第21ステージ 7月29日(日) 22:50~翌4:30

 

※このコーナーではスカパー!の数多くのスポーツコンテンツの中から、二宮清純が定期的にオススメをナビゲート。ならではの“見方”で、スポーツをより楽しみたい皆さんの“味方”になります。


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