前橋育英野球部監督・荒井直樹「横浜戦“9度目の正直”」
昨夏、全国高校野球選手権大会で初優勝を達成したのは、夏は初出場の前橋育英(群馬)だった。2年生エース高橋光成の好投に加え、堅実な守備が光った同校は6試合中、決勝戦を含む4試合を1点差で競り勝ち、全国の頂点にのぼりつめた。そこで今回はチームを初優勝に導いた荒井直樹監督にインタビュー。甲子園での戦いやチームづくりなどについて訊いた。二宮: 昨夏は初出場で初優勝、おめでとうございます。特に2年生エースとして活躍した高橋光成くんは、甲子園で素晴らしいピッチングをしましたね。
荒井: 確かに甲子園練習をした時に、「甲子園のマウンドはすごく投げやすい。ホームまでが近くに思えます」と言っていたのですが、いやぁ、あそこまでのピッチングをしてくれるとは、私も驚きました。というのも、県予選が始まった頃は、なかなか調子が上がらなくて、初戦はもうひとりのピッチャーでいったくらいだったんです。ただ、予選の途中から徐々に良くなっていきましたね。「あ、やっぱりこのチームの中心はこの子なんだな」とは感じていました。
二宮: 初戦の岩国商(山口)戦では、いきなり先発全員奪三振(13)を記録して完封勝ち。鮮烈な甲子園デビューとなりました。
荒井: 初戦はあれだけ三振を取るとは思いませんでした。見ていて、ボールがシュート回転していましたから、それほどいい状態ではなかったと思うんです。むしろ2回戦の樟南(鹿児島)戦や、6回からリリーフして延長戦を制した準々決勝の常総学院(茨城)戦の時の方が、ボール自体は良かったかなと思いますね。
二宮: チームとしては、3回戦の横浜に勝ったのが大きかったかなと。
荒井: そうなんです。実は私は選手時代も含めて、これまで横浜とは8度対戦しているのですが、1度も勝ったことがなかったんです。ですから、横浜戦の前日に選手にはその話をしまして、「明日は“9度目の正直”だ!」と。まぁ、選手たちは「監督、何を言ってるんだろう?」という顔をしていましたけどね(笑)。とにかく、厳しい試合になるだろうなと覚悟していました。まぁ、結果から見れば、7−1と点差は離れましたが、最終回の1イニングで7、8点取ってもおかしくない横浜の怖さを嫌というほど知っていますから、最後まで気を抜けませんでしたね。
二宮: 横浜の打線に対して、高橋くんはスローカーブをうまく使っていましたね。
荒井: はい。横浜の打線は全国屈指の強さを持っていますから、スピードボールに対しては打ち負けない力を持っている。普段から速いボールへの練習はよくしてきているというふうにも耳にしていましたから、「じゃあ、逆に緩いボールをうまく使おうか」と。その戦略が当たりましたね。
二宮: 意外にもレギュラーは全員、地元群馬県出身の選手だとか。
荒井: はい。うちではよその選手をスカウトすることはありません。チームで県外出身者は埼玉から来ている選手ただひとり。この選手も、自分から希望して来たんです。
二宮: 最近はみんな中学時代から硬式をやる選手が増えていますが、前橋育英の選手はほとんど軟式出身のようですね。
荒井: はい。今年4月に新しく入ってくる1年生も、半分は軟式出身者です。確かに、硬式出身の方がスタートの時点では巧いんですよ。ただ、軟式出身は一度追いつくと、そこからグンと伸びてくる選手が多いんです。
二宮: 軟式出身の方が伸びしろはあると?
荒井: そんな気がしますね。おそらく固定観念がないからなんでしょうね。硬式出身は「自分はこういうふうにやってきました」というものが既にあるのですが、軟式出身はゼロからスタートする分、素直に吸収していけると思うんです。ピッチャーの高橋も、軟式出身なんです。彼は群馬の中でも山奥の地域出身で、それこそ大自然の中で伸び伸びと育ってきたんだと思いますね。
<2014年1月20日発売の小学館『ビッグコミックオリジナル』(2月5日号)に荒井監督のインタビュー記事が掲載されています。こちらもぜひご覧ください>