サッカーロシアW杯決勝トーナメントがスタートし、アルゼンチンとの熱戦を制したフランスとポルトガルを破ったウルグアイが一足先にベスト8進出を決めた。2日目はスペインvs.ロシア、クロアチアvs.デンマークのカード。2試合とも中盤に豊富な人材を有するスペインとクロアチアが優位と予想する。

 

スペイン(B組1位)vs.ロシア(A組1位)

 

 スペインは4年前のブラジルW杯には前回王者として臨みながらグループリーグ(GL)敗退の憂き目に遭った。雪辱に燃えてロシアに乗り込んだはずだが、大会直前に激震が走った。フレン・ロペテギ監督が電撃解任。後任は同国のスポーツディレクターを務めていたフェルナンド・イエロ氏が就いた。

 

 迎えたGLは無敗で首位通過。とはいえ、3試合はいずれも厳しい戦いだった。初戦のポルトガル戦は3得点を奪いながらも、追いつかれてのドロー。第2節はイランの超守備的サッカーに苦しみながら、1対0で勝ち切った。最終節はモロッコにアディショナルタイムでなんとか追いついての2対2の引き分けだ。楽な試合はひとつもなかった。

 

 持ち味のパスサッカーは存分に発揮されている。イスコ(レアル・マドリード)、アンドレス・イニエスタ(バルセロナ)、ダビド・シルバ(マンチェスター・シティ)らで構成される中盤は華麗なボールさばきで見る者を魅了した。3試合でワントップ起用のジエゴ・コスタ(アトレティコ・マドリード)が3得点とフィニッシャーも機能している。攻撃面で不安はない。

 

 3試合で5失点の守備面は一抹の不安を覚える。5失点の内訳はPKを含むセットプレーが3点、残りはGKダビド・デ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)のキャッチミスと連係ミスからカウンターをくっての失点だ。試合を通してみても完璧に崩されたことは少ないにしても、DFセルヒオ・ラモス(レアル・マドリード)、DFジェラール・ピケ(バルセロナ)らタレントを揃えながら、ディフェンスは盤石とはいえない。

 

 ロシアは組み合わせに恵まれたグループAで2位通過。開催国の面子はなんとか保った。開幕戦で大量5得点、次節は3得点。司令塔のアレクサンドル・ゴロビン(CSKAモスクワ)が攻撃陣をリードし、好パスを何度も供給した。1試合を残してGL突破を決めたため、ウルグアイ戦では休ませることができた。彼が自由に動き回れれば、3試合3得点のMFデニス・チェリシェフ(ビジャレアル)と共にスペインの守備陣を十分苦しめることができるはずだ。

 

 ホームの大声援を背に戦えるメリットもあるが、タレント豊富なスペインと比べると力不足は否めない。GL最大の強敵ウルグアイに、ベストメンバーではなかったとはいえ0対3で完敗を喫した。旧ソ連時代の1970年メキシコW杯以来のベスト8進出は厳しいか。

 

クロアチア(D組1位)vs.デンマーク(C組2位)

 

 クロアチアはアルゼンチン、ナイジェリア、アイスランドという厳しいグループDを3連勝で突破した。ナイジェリアに2対0、アルゼンチンに3対0、アイスランドに2対1。その順調な勝ち上がりに優勝候補の一角に食い込んできたと言ってもいいだろう。

 

 基本フォーメーションは4-2-3-1。ルカ・モドリッチ(レアル・マドリード)、イバン・ラキティッチ(バルセロナ)、イバン・ペリシッチ(インテル)、アンテ・レビッチ(フランクフルト)などで構成される中盤は攻守にハードワークを厭わないのが武器だ。ワントップのマリオ・マンジュキッチ(ユベントス)も前線からチェイシングを怠らない。

 

 中でもモドリッチの存在感は際立つ。キャプテンマークを巻く背番号10の司令塔はパス、ドリブル、シュートはどれもが高水準。彼がゲームをつくりながら、両翼のペリシッチとレビッチの攻撃力を生かす。ペリシッチとレビッチはポジションを積極的に入れ替え敵に的を絞らせない。守りの堅いデンマークもクロアチア攻撃陣に手を焼くはずだ。

 

 GKダニエル・スバシッチ(モナコ)を中心に守りも堅い。3試合で1失点。デヤン・ロヴレン(リバプール)、ドマゴイ・ヴィダ(ベシクタシュ)ら対人に強いタイプのディフェンダーを揃える。身体能力の高いナイジェリアの攻撃陣、FWリオネル・メッシ(バルセロナ)を擁するアルゼンチンを完封した。

 

 攻守にバランス良く、大きな穴は見当たらない。初出場の98年フランスW杯以来の8強入りは現実味を帯びてきている。

 

 対するデンマークは1勝2分けの無敗でグループCを突破してきた。武器は3試合で1失点と安定感を見せた守備だ。守護神キャスパー・シュマイケル(レスター)、守備の要シモン・ケア(セビージャ)を中心に堅守を披露した。1失点はPKのみ。そのPKも守りを崩されてのファウルではなく、不運なハンドによるものだった。

 

 攻撃面で、このチームの心臓と言えるのがMFクリスティアン・エリクセン(トッテナム)だ。11得点を挙げたW杯ヨーロッパ予選同様、デンマークを生かすも殺すも彼次第。GL3試合での2得点はいずれもエリクセンが絡んでいる。デンマークは190cm以上の長身選手を多く揃える。それだけに、セットプレーがクロアチアを破るカギになるかもしれない。

 

(文/杉浦泰介)