ポスティングシステムを利用して東北楽天からメジャーリーグ移籍を目指していた田中将大が23日、ニューヨーク・ヤンキースへの入団で合意した。ヤンキースの公式サイトによると、契約内容は7年で総額1億5500万ドル(約161億円)。4年目の2017年シーズン後には契約を破棄でき、トレードを拒否できる条項も含まれる見込みという。年俸総額は日本人選手はもちろん、メジャーリーグのピッチャーでも史上5番目の高額となる。
 昨季の日本一に貢献した大エースを巡る争奪戦は、世界一奪還を目指す名門球団に軍配が上がった。
 このオフから採用された新ポスティングシステムでは、NPB球団が入札金額を設定。その上限は2000万ドル(約20億円)で、設定金額で入札したすべての球団と1カ月間の交渉期間が与えられた。

 入札金が抑えられた分、MLB球団は田中を獲得しようと年俸などの条件面で競い合うかたちとなった。最終的にはヤンキースのほか、ロサンゼルス・ドジャース、シカゴ・カブス、アリゾナ・ダイヤモンドバックスなどが総額1億ドル(約104億円)超の契約を提示していたとみられる。

 交渉期限が日本時間の25日朝に迫る中、田中を射止めたのがヤンキースだ。1月上旬に田中がロサンゼルスに渡った際には、ランディ・レバイン球団社長、ブライアン・キャッシュマンGM、ジョー・ジラルディ監督に、元日本ハム監督で育成担当の特別補佐を務めるトレイ・ヒルマン氏らも加わって面会し、熱意を直接伝えた。さらには元ヤンキースの松井秀喜氏からのビデオメッセージも用意してヤンキースの魅力をプレゼンテーションするなど、あの手この手で田中にラブコールを送った模様だ。

 ヤンキースは昨季、ア・リーグ東地区3位に終わり、プレーオフ進出を逃した。補強の最重要課題はベテランのアンディ・ペティートが引退した先発投手陣。現状、計算できるのは昨季14勝のCCサバシア、11勝の黒田博樹、イバン・ノバくらいで、先発ローテーション入りできる即戦力を求めていた。主砲のアレックス・ロドリゲスが薬物規定違反で今季いっぱいの出場停止処分を受け、年俸2500万ドル(約26億円)の大部分を支払う必要がなくなった点も条件面での上積みを可能にした。

 総額161億円という契約は、クレイトン・カーショー(ドジャース)、ジャスティン・バーランダー(タイガース)、フェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ)に、チームメイトとなるサバシアに次ぐ破格の条件だ。いずれもサイ・ヤング賞を獲得したピッチャーたちと、メジャーのマウンドで1球も投げていない右腕がいきなり金銭面では肩を並べたかたちになる。これだけでもヤンキースの期待度の高さが分かる。

 またヤンキースには黒田やイチローといった日本人選手が在籍しており、田中にとっては移籍先を選ぶ上で大きなポイントとなったはずだ。常勝を義務付けられたチームゆえ、ニューヨーカーは結果を残せない選手には手厳しい。過去、日本人投手では伊良部秀輝、井川慶(現オリックス)もピンストライプのユニホームに袖を通したものの、思うような成績をあげられず、ファンからブーイングを浴びた。

 文字通りの超大物として日本はもちろん、全米から注目を集める中、金額に見合った働きを見せられるのか。まずは来月15日からフロリダでスタートするキャンプへ向けて急ピッチで準備を進めることになる。