福井ミラクルエレファンツは皆さんの応援のおかげもあり、前期優勝を果たすことができました。前半戦は攻撃陣がよく打ってくれ、そしてマークが厳しくなった後半はピッチャーが踏ん張り、そしてここぞという試合をものにしてくれました。優勝争いをする中で選手たち全員が成長してくれたことが何よりも嬉しいです。

 

 私生活から改善

 ウチの野球というのは連打を重ねて点をとるよりも、足を絡めていかに1点をとるかというものです。チーム打率は2割6分8厘(7月8日時点・以下同)とリーグ8位ですが、フォアボール(202)と盗塁数(67)はともにリーグ2位です。塁に出たら足で相手にプレッシャーをかけて攻める。チーム全体でその意識が徹底できたことが勝因だったのではないでしょうか。

 

 投手陣は先発の濵田俊之、そして抑えの岩本輝が軸になって頑張ってくれました。野手陣では何といっても4番としてポイントゲッターの役目を果たした清田亮一、そしてキャッチャーとしてチームをまとめた片山雄哉の存在が大きかったですね。

 

 昨年、バッテリーコーチになったときから片山は非常に素質があって、可能性を秘めた選手だと思っていました。ただ練習態度だったり、私生活など試合以外の部分に課題があった。少しチャランポランで、そういうのはやはりプレーに出ますから。監督になって、片山も含めて選手全員に「私生活から見直そう」と言いました。

 

 BCリーグに来て野球をなんのためにやっているのか、何を目標にしているのかを考えれば、おのずと私生活からちゃんとしてくるはずです。そして周囲への感謝を忘れないことなど、本当に社会人としての基本をうるさいほどに言いましたね。

 

 プロの選手として監督やコーチから「ああしろ、こうしろ」と言われて伸びるわけじゃない。練習も自分で考えて自主的に取り組むことで成長するんです。私生活、挨拶など社会人の基本をしっかりすれば、練習へ取り組む意識も高まっていく。その結果が前期優勝だったんじゃないでしょうか。

 

 本当に私生活というのは野球に直結しますよ。私も経験しましたけど(笑)。高校、大学、そしてプロに入ったばかりくらいまでは、よく怒られていました。「お前、ちゃんとしろよ」と。当時は「うるさいな」と煙たがっていましたが、やがてプロで長く生活していると、その言葉の意味がわかってきましたね。普段からちゃんとしていないと、やはりどこか野球が雑になる。ここ一番でミスをするのは、やはり"ちゃんとしてない選手"なんですよ。私が現役晩年で気がついたことを片山たちは、すぐに気付いてくれたようです。

 

 今は私生活も野球中心に考えてちゃんとしているし、練習態度も変わった。それによってスキルも上がっているし、グラウンドでも責任感をもってプレーしています。

 

 私はNPBでは高校の先輩である山中潔さんにキャッチャーとしてのスキルを教わりました。それを選手たちに伝える役目もありますし、またボビー・バレンタイン監督、真中満監督の下でプレーして、いかに選手が野球をしやすい環境を作るか、これが監督の一番の役目だと教わりました。言うなれば「選手優先、プレーヤーズファースト」です。これからも選手とともに自分自身も指導者としてスキルアップしていきたいと思っています。選手同様に私の目標もNPBですから。

 

 チームとして後期は完全優勝を狙うことと、選手個人は数字を残せるようにさらにスキルアップを目指してもらいたい。特に野手陣はもっと打率を残せると思っています。

 

 BCリーグ制覇とその先にある独立リーグ日本一を目指して頑張りますので、後期も福井ミラクルエレファンツの応援をよろしくお願いします。

 

<田中雅彦(たなか・まさひこ)プロフィール>福井ミラクルエレファンツ監督
1982年1月9日、大阪府出身。PL学園で捕手として甲子園に春2回、夏2回出場。卒業後は近畿大に進学、大学1年の関西学生野球連盟秋季リーグから正捕手として活躍し4年間でMVP1回、ベストナインを4回獲得した。2004年、ドラフト4位で千葉ロッテに入団。プロ入り後は捕手の他、内野手としても起用され、13年、川本良平とのトレードで東京ヤクルトへ移籍。正捕手・相川亮二のバックアップとして活躍した。16年、現役を引退。プロ通算220試合出場。17年、BCリーグ・福井のバッテリーコーチに就任。18年から監督を務め、チームを前期Vに導いた。


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