準々決勝第1日目は、ウルグアイとブラジルの南米勢が敗退。フランスとベルギーがベスト4進出を決めた。トーナメントの逆の山に目を移すとスウェーデン対イングランド、ロシア対クロアチアの2カード。地元のロシアがどこまで躍進できるかに注目だ。

 

スウェーデンvs.イングランド

 

 スウェーデンは今大会を盛り上げているチームの1つだ。攻め込まれる時間、ボールを保持される時間が長かろうとも平均身長185.2センチの大男たちには何ら関係がない。誰1人サボることなく守備を行う。この守備の仕方が実に効率的なのだ。

 

 前の2枚がパスコースを限定し、サイドへ追い込む。タッチラインもうまく利用し相手にスペースと選択肢を与えない。

 

 ボールを奪うと左サイドハーフのエミル・フォシュベリ(ライプツィヒ)に預けるのが攻撃パターンだ。彼がタクトを振るい、攻撃をリードする。フォシュベリはテクニカルでクレバータイプの10番。相手のプレッシャーのかける角度を計算しつつ、うまく自分の身体を入れてボールを隠す。彼が時間を作る間にツートップは態勢を整えて反撃に出るのだ。

 

 懸念はフォシュベリが抑えられた時と、蓄積疲労だ。ターンオーバーを使う余裕はここまでなく、フルメンバーがフルスロットル状態でここまできた。終盤にガス欠してしまうか、屈強なフィジカルには折れないメンタルが備わっているのか……。僅差でゲームが進んでいてかつ押し込まれている時のスウェーデンに注目だ。

 

 対するイングランドはエースFWのハリー・ケイン(トッテナム)がどこまでチームを引っ張れるかだ。スウェーデンの堅守を嫌がり、ペナルティーボックスから逃げないポジショニングを、取り続けられるか。

 

 不必要にサイドに流れたり中盤に落ちたりしてしまえばスウェーデンの思うツボになってしまう。万能型故に落ちても素晴らしいプレーはできるが、スウェーデンのラインを下げさせるためにも、前線で常に駆け引きをしていてほしい。

 

 逆に言えばイングランドはケインを前線での仕事に専念させることができれば勝機は上がるだろう。目下、得点王のゴールが28年ぶりのベスト4にチームを導いてくれるはずである。

 

ロシアvs.クロアチア

 

 スウェーデンとともに大躍進のロシア。地元の声援を背に受けてここまで勝ち上がってきた。

 

 攻撃のキーマンはMFアレクサンドル・ゴロビン(CSKAモスクワ)だ。ここまで1ゴール2アシストとチームを牽引している。グループリーグ初戦でチームの軸だったMFアラン・ジャゴエフ(CSKAモスクワ)が負傷離脱。彼の穴を埋めて余りある大活躍を見せている。今大会が生んだニュースターといってもいいだろう。

 

 対戦相手は当然、ゴロビンを抑えようとする。するとロシアは前線にロングボールを放り込む。すると196センチのFWアルテム・ジュバ(アルセルナトゥーラ)が頭や胸で2列目にボールを落とす。こうなるとゴロビンらが前を向いて楽にプレーができる。今大会でレギュラーの座を奪い、3ゴールを記録しているジュバにも注目だ。

 

 対するクロアチアは、豪華な中盤に目がいく。MFルカ・モドリッチ(レアル・マドリード)、イバン・ラキティッチ(バルセロナ)らが華麗なテクニックを披露し、中盤を支配できればクロアチアペースになる。

 

 だが、決勝トーナメント1回戦では後半の序盤あたりから足が止まってしまった。グループリーグ最終節ではある程度ターンオーバーができたのにもかかわらずである。勝って兜の緒を締めていれば、1998年に記録した最高成績の3位も見えてくる。

 

(文/大木雄貴)