サッカーロシアW杯のベスト4が揃い、準決勝の第1日目はフランス対ベルギーの一戦でスタートする。事実上の決勝戦と言っていいようなカードが準決勝で実現。フランスは20年ぶりの優勝を、ベルギーは初優勝をかけて激突する。両国の対戦成績はフランスが24勝19引き分け30敗で負け越している。しかしW杯に限れば2勝0敗だ。大舞台ではフランスに分がある。攻守において万全なフランスに対してベルギーは戦術面で対抗する。

 

 1998年以来の優勝を目指すフランスは、準々決勝のウルグアイ戦を2対0で勝利した。19歳の10番、FWキリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)にゴールはなかったが、エースのFWアントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリード)が今大会、流れの中での初得点を決めた。左足から放たれたブレ球ミドルだった。硬軟自在に操るレフティーが調子に乗ったら、ベルギーの守備陣も手を付けられないだろう。

 

 全体を見渡してもフランスは穴がなく非常に安定している。各ポジションにタレントが揃っている。その上、ディディエ・デシャン監督が規律を見事に浸透させた。エースのグリーズマン、FWオリビエ・ジルーらがきちっとチェイシングをすれば2列目の若手たちもボールを追う。パスコースを限定したところに中盤の底でMFエヌゴロ・カンテがボールを奪取する。攻守において盤石と言えるのは、カンテの存在も大きい。

 

 一方、ベルギーのキーマンはロベルト・マルティネス監督だろう。ベルギーを率いるスペイン人監督の緻密な采配がカギを握る。これまで、ベルギーのオーソドックスな形は3-4-2-1だった。ダブルボランチの一角に攻撃のタクトを振るうMFケビン・デ・ブルイネ(マンチェスター・シティ)を起用し、左のウイングバックにはアタッカーのMFヤニク・カラスコ(大連一方)を起用してきた。

 

 決勝トーナメント1回戦では日本と対戦。3対2で競り勝ったものの、攻撃に比重を置いたシステムに冷や汗をかく場面もあった。日本のFW原口元気(デュッセルドルフ)が決めた先制点はベルギーの左サイドをえぐってのものだった。

 

 準々決勝のブラジル戦ではここを見事に修正してきた。デ・ブルイネを一列上げて、左サイドにはカラスコに代えてMFナセル・シャドリ(WBA)をスタメンで起用した。さらに右ウイングバックのドマ・ムニエ(パリ・サンジェルマン)の位置取りを変えることにより3バックから4バックへと試合中に移行した。

 

 準決勝では可変システムを可能にするムニエが累積警告により出場停止だ。3バックから4バックに代わる際のキーマンには誰を指名するのか。そして司令塔のデ・ブルイネをどこで使うのか。自力ではフランスが勝るがゆえに、マルティネス監督の采配に注目だ。

 

(文/大木雄貴)