プロ野球は7月31日に補強期限を迎えます。開幕からここまでの戦いで露呈した弱点を埋めるため、例年、この時期に駆け込みトレードや緊急補強を実施するチームも少なくありません。今季は中日が積極的な補強に動きました。20日、「中日、ジョエリー・ロドリゲス投手を獲得へ」と多くのスポーツ紙が伝えています。

 

 「数年前から調査」

 ロドリゲス投手はドミニカ共和国出身のサウスポー。185センチの長身からサイドに近いスリークオーターで最速95マイル(約152キロ)のストレートを投げ込みます。メジャー通算38試合で1勝2敗。今季はオリオールズ傘下の3Aノーフォークに所属し、33試合、49回1/3を投げて5勝3敗、防御率4.56、52奪三振をマークしています。

 

 ところで、この補強には伏線がありました。18日、中日・森繁和監督が白井文吾オーナーに前半戦終了報告を実施。森監督との会談を終えた白井オーナーが会見でこう"ネタバレ"したのです。

 

「いい選手をドミニカから連れてくる準備をしている。私は聞いたことも見たこともない選手だが、年は20代と若く、専門家の森監督が見て"これはいけるぞ"と言ってたんだから、期待できるでしょう」

 

 中日は現在、最下位ながら3位東京ヤクルトに3ゲーム差と迫っています。左の中継ぎはベテラン岩瀬仁紀投手、岡田俊哉投手と手薄なことは否めません。19日には育成の福敬登投手を支配下登録しましたが、クライマックスシリーズ進出に向けてサウスポーのロドリゲス投手は貴重なワンピースです。

 

 さて、オーナーに"専門家"と言われた森監督は、ドミニカを含めて中南米プレーヤーのスカウティングに定評があります。過去には09年にホームランと打点の二冠王に輝いたトニ・ブランコ選手や、11年に10勝をあげてリーグ優勝に貢献したマキシモ・ネルソン投手らを日本に連れてきました。

 

 森監督が最初にドミニカを訪れたのは落合博満さんが監督に就任した、04年オフのことでした。当時、コーチだった森監督がなぜ選手獲得に? 以前、SC編集長・二宮清純のインタビューにこう答えています。

 

「僕が中日に来たときに海外の編成担当がいなかったんですよ。監督に"なんで、こんなの連れてきたんだ"と言われたくなかったのか、なぜだか理由は分かりませんが……(苦笑)。それで、監督に"お前が外国人を見つけてこい"と言われて、思いついたのがドミニカでした。でもツテも何もあったわけじゃない。球団は年俸1億までは用意すると言っていたので、5000万円を2人より1000万円を10人の方が確率が高いだろう。それでダイヤの原石が多そうなドミニカを選んだんです」

 

----現地での人脈構築は?
「ドミニカに到着して球場周辺をブラブラしているときに出会った日系人の方がきっかけでした。その人は各方面に顔が利いて"何かあったら電話しろ"といろいろと助けてもらった。それで、徐々に知り合いが増えていったんです。あと、僕が西武のコーチ時代に日本でプレーしていたマルちゃんことドミンゴ・マルチネスの存在も大きかった。マルちゃんとコンタクトを取って球場にも入れるようになり、ドミニカの球団オーナーや社長、GMという偉い方々も紹介してもらった。06年からはマルちゃんにスカウトも担当してもらいましたよ。それで、獲得したのがブランコやネルソンというわけです」

 

 白井オーナーの"ネタバレ"を受け、中日の西山和夫球団代表は、「交渉は事実です。数年前から森監督が調査してきた選手です」と答えました。森監督が以前から目をつけていたとなれば、日本球界での活躍も期待できるというものです。

 

 森竜、6年ぶりAクラスに向けて反撃開始です。

 

<文・SC編集部:西崎ノブユキ>


◎バックナンバーはこちらから