皆様、お久しぶりです。白寿生科学研究所・松修康です。前回はアスリートが持っておくべき将来のビジョンについて書かせていただきました。2カ月ぶりのご無沙汰ですが、今回もお付き合いのほどよろしくお願いいたします。


 白寿生科学研究所はプロ野球だけでなく、さまざまな競技で頑張っていたアスリートを多く採用しています。彼らは現在、全国各地で頑張っており、私も各地を訪れた際、行く先々で彼らが活躍しているという話が聞こえてきてうれしく思っています。

 

 生まれ変わった元チームメイト

 ところで、なぜ元アスリートの彼らが新しい職場で活躍していると思われますか? 彼らの活躍には明確な理由があり、私自身もこの理由を明確に持つときと、持たないとき。どちらも経験してきました。明確な理由を持っていたときは、理不尽なことが起きても耐えられましたが、そうでないときは精神的にもろくなり、落ち込みやすく、イヤなことがあるとグチばかり言うダメ人間でした。これはアスリートに限らず、すべての人に共通することだと私は考えています。

 

 では、その理由とは何か? それは「想い」です。「こうなりたい」という強い想いを持っていると行動もそれに伴って頑張れるし、反対に想いが弱いと頑張れないし、そもそも頑張らないものです。

 

 大学時代、私は「何が何でもやりきる。周りの人に何を言われても関係ない。絶対にプロ野球選手になって親孝行する!」と強い想いを持ち続け、1年生のときは人一倍やらないと上手くなれないと考え、毎日1000球を投げ込んでいました。「投げ過ぎじゃないの?」と思われるかもしれませんが、当時の私はそうは思わず、反対にもっと投げないと目標に手が届かないと考えていました。それだけ想いが強かったんですよね。そして「想い」が通じて、念願のプロ野球選手になりました。しかし、プロ野球選手になったことでどこか満足してしまったのでしょう。それまでの強い想いがなくなってしまったのです。

 

 プロ野球時代の私は「活躍できたらいいな~」とか「いい暮らしできたらいいな~」と思うだけの人間になってしまいました。その結果、与えられた練習しかしない、自分で考えて練習しない選手になり、監督がどうとかコーチが悪いとか愚痴ばかり言っていました。そんな選手がプロ野球で成功するわけがないですよね。自業自得です。

 

 さて本題に戻りましょう。弊社で働く元アスリート社員たちは、これまで想いを持って頑張ってきたように、これからどんな想いを持って頑張るのかを明確にして、チャレンジしている集団だと思っています。一人ひとりの「想い」がお互いを刺激し合い、頑張ってるのを見るのがとても楽しく、頼もしくも思えます。同時に、私も負けられないという気持ちになります!

 

 私が入社する前に連れていかれた現場は、元ヤクルトの投手・西崎聡君が店長をしているお店でした。笑顔で楽しそうにお客様と会話をしていて、話すことが好きで人に慣れていると思っていました。ところが、入社後に彼と話すと思いがけない言葉が出てきました。

 

「自分は人見知りで、話すのが苦手でした。妻にも自分の思いを伝えられなかったほどです」と。お店で楽しそうにお客様と話している姿しか見たことがなかったので、その言葉はすぐには信じられませんでした。人見知りだった彼がなぜ変わったのか、と聞くと、「人の役に立つことがすごいというのが理解できて、そこで自分が変われた」「今までそういう想いがなかった」など、変われた理由を教えてくれました。想いを持つことで人は変われるんだと、私が知った瞬間です。今、自分が頑張れているのも彼の言葉があったからこそかもしれません。

 

 もう1人紹介したいのは、元横浜ベイスターズ森大輔君です。彼とはベイスターズ時代にチームメイトでしたが、当時の彼は悩んでいて暗い印象しかなく、話し難かった記憶がありました。

 

 数年後、私もこの会社に入り、本社で会ったときのことは今でも覚えています。遠い所からオーラを感じて、振り返るとそこには自信に満ちあふれた森君がいたのです。

 

 彼は「僕ができるんだから、松さんもできますよ。一緒に頑張りましょう!」「必ず人の役に立つのがそのうち分かりますよ。やればやるほどうれしくて幸せな気持ちになる仕事ですよ」と声をかけてくれました。その後も、私のために自分の経験談などを話してくれて、今の仕事は「天職です!」と力強く言い切ったのです。彼も「想い」を強く持っているからこそ、前向きになって仕事で輝けているんだろうなと今も思っています。

 

 さて今回は「想い」について書きましたが、これは自分で気付いたのではなく、ある方から教えられたことでした。

 

「想いと行動は比例するんだ。松、昔を思い出してみろ。絶対やると決めたときの気持ちと行動はどうだった? その気持ちがなくなったお前の行動はどうなっていった? 人はどんな想いを持つかで行動が変わるんだよ」

 

 この「想い」についての話が聞けなかったら、私は今もプロ野球時代のように誰かのせいにしたり、何かのせいにして人生を送っていたかもしれません。

 

 人との出会いの中で生きているんだなと改めて実感しています。たくさんの出会った人に恩返しするためにも、これからも「想い」を忘れずに仕事に取り組んでいきたいと考えています。では、また次回、よろしくお願いします。

 

<松修康(まつ・のぶやす)プロフィール>
1976年7月23日、神奈川県生まれ。中学時代まで地元・神奈川でプレー。高校は宇都宮学園高校(現・文星芸術大学附属高校)に進み、卒業後は東北福祉大学へ。99年、ドラフト2位で福岡ダイエー(現ソフトバンク)に入団した。00年10月、オリックス戦でプロ初登板。01年6月10日、オリックス戦で初先発し、6回1/3、1失点で初勝利。これがプロ唯一の勝ち星となった。04年、左の中継ぎとして自己最多の40試合に登板。05年、現役を引退。横浜DeNA、北海道日本ハムの打撃投手を経て白寿生科学研究所へ入社。現職は管理本部総務部人材開拓課所属。プロ野球選手をはじめ多くの元アスリートのセカンドキャリアを支援する。


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